あめりか物語 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 153
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003104262

作品紹介・あらすじ

明治四一年、自然主義の文壇を一撃、魅了した短篇集。シアトル着からNY出帆まで、文明の落差を突く洋行者の眼光と邦人の運命が点滅する「酔美人」「夜半の酒場」「支那街の記」-近代人の感性に胚胎した都市の散文が花開く。『ふらんす物語』姉妹篇。

感想・レビュー・書評

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  • 永井荷風のあめりか遊学随筆。
    日本での放蕩の末でのアメリカへの遊学。
    この人の持つ本来の趣味嗜好からこういった方面に目が行くのだろう。
    アメリカでも日本でも遣ることは同じこと。
    前半は日本人のアメリカでの噂話。放蕩話。
    後半は日本人及び日本の歴史、文化の否定。
    アメリカ文化への妄信。
    内容的に左程面白みが有るとは思えない。

    「暁」以降が文学らしくなってくる。

  • 若き日の荷風が米国への航路、そして米国で過ごした4年間。日露戦争前後の米国大陸の雰囲気を感じ取れる。出会った多くの日本人たちとの交流の中で語られる彼らの人生は、西洋文化の中に生きる日本人たちの姿が若々しく、甘酸っぱく、清々しい。荷風の40年後東京の下町で放蕩生活を繰り返した「墨東奇譚」のイメージが強いが。女性に関する記載が多く、それは萌芽が見えるということだろうか。荷風がNYでの生活を楽しみ、将来美しい女性と結婚して近郊に住むことを夢見る一文も。(P216)「自分の一生涯、この時ほど幸福な事はなかった」と書いていることが、20歳代であると考えると、面白い!

  • 展示中 2014.9~

  • 過度な人物描写が目立つ。今まで読んだ物は、日本舞台だったから面白かったのかもしれない。変な文化の違いが分かりにくい。

  • いくつか気に入った話もあったけど、堕落していく留学生や娼婦の話などは苦手やね。私はふらんす物語のほうが好きや。

  • 荷風の暁

     明治時代にアメリカ暮らしを経験しちゃった“スゴイ20代”の経験を、永井荷風は面白くふくらませて書いた。
     現代とは違って情報も少ない時代に異国へ、出稼ぎや留学で渡った日本人たちの暮らしかたが、時代を薫らせる古めかしい洋風和文で綴られている。前々から楽しみにしてきた本だ。

     でも、率直に言えば好印象とは言えない。どのような理由であれ、女遊びをする男性の話ってのは私はあんまり……楽しめないのだ。
     いくら有名な本でも自分が面白くないと思ったなら、無理して完読しなくても。と、前半で投げ出す準備に入ったのだが、そこで『暁』が始まってしまった。

     みなが夜の街にくり出す中で、居残った日本人労働者に話しかけてきた一人の男。彼もまた、刹那的な快楽に自分を預けるようになってしまった一員なのだけれど、先行きの不安を忘れるために一層遊ぶのさ、だなんて屁理屈付きで身の上話を披露する。 
     そこで終わっていたら、前までの収録作品とさして変わりないところだけど、ここに来て変化が。
     主役は、ただ黙って聞き役に回るのだ。刹那的な生き方に反対を唱えるでもなく、自らの境遇を悲観するでもなく、労苦を忘れるため自分も遊びに興じる必要があるのだろうかと迷うでもなく。やってきた暁の空を、ただ見上げる……。
     他の作品で小賢しく感じられた心理描写は影を潜め、夜明けの色や遣る瀬無い空気感が描きだされたラスト。それは、評者にとっても暁を告げられる情景だった。

    『暁』以降は、広い公園で自然を満喫したり、出勤する友と別れて街へ出たり外で食事をしたりといった、日々のレポートみたいなのが続く。
     題材のわりに読んでいるほうが恥ずかしくなるほど大仰な表現が噴出。たとえ外国暮らしであろうと、日常は日常なのに、何につけても感じやすすぎる著者。ついていくのが結構疲れる。

     だが、『暁』より前の「肌に合わないからやめよう」という気持ちは不思議に薄れていた。書きながら磨かれていく何かがあるような。それが何なのかはまだ分からない。荷風を楽しめるかも、依然として分からない。でも、まだ投げ出さずにおきたくなってしまった。
     荷風を、もうちょっと追ってみる。

    http://booklog.jp/users/kiyarico/archives/1/4106021420

  • 明治時代の若き青年作家がアメリカに渡り、現地での体験、交流を記した手記形式の小説。(自らの渡航経験を基にしている)
    明治も後期になると政府高官のみならず、一般庶民でも成功を夢見て海を渡るものが多かったようだ。しかし、成功するのはごく一部で、多くその日暮らしで生き抜いてゆく。そのような日本人労働者、学生の姿を描きつつ、大国アメリカへの憧れを隠さない。アメリカの自由な空気に触れ、白人女性と恋をし、ヨーロッパ文学さながらの世界に彼は溺れているようだ。彼はアメリカの貧民街や黒人差別など、アメリカの負の部分についても鋭く観察している。それでもやはり、アメリカというのは明治青年にとって、心の底から沸きあがる好奇心を満たす未知の世界だったように思える。

  • 前半は全くおもしろくなかった。はっきり言って、ど素人が書いたクズのようなものであり、何の価値もない。大きく失望し、読み続けるのが苦痛になってしまった。
    せっかくアメリカに渡ったのに、日本人同士ばかりが寄り集まり交流している。日本人ってやっぱりそうなのか?という感じで。
    国際的なテーマも何もなく、単に日本人の、さして面白くもない身の上話を並べていくようで本当に退屈だ。「これが『あめりか物語』である必然性はあるのか?」といったエピソードも少なくない。
    なまじフィクションをつらねているだけに、「明治後期の渡米した日本人の体験談」という史料的価値もまるでない。

    が、最後の方で急に「文学」らしくなる。
    無価値など素人が、いきなり「文学者」に変身するのだ。
    どうやら荷風はモーパッサン、ボードレールにはまり、その影響圏から急激に自分の文学スタイルを発見したらしい。

    というわけで、この本の前半は、つまらないと感じたら飛ばしちゃって、終わり近くの数編を読んだほうがいいかもしれない。
    「ふらんす物語」の方はもっと文学的に有意義であるようだ。

  • 8/10

  • アメリカの風物を描写した箇処もあるが、かの地での人間の恋愛話などを書いている。
    数ページの掌編がたくさん収められているので、読みやすい。

    なるほど、文学ってのは人間を書くものなのね。でも荷風が「セーヌ川と書かれた部分をすべて隅田川に変えても通じる」と皮肉を言われたのもわかる。舞台ではなく、人間は何処へ行っても変わらないものだなあという行動。そして、夏彦さんのおっしゃるとおり、美しい文だ。

    「長髪」という作品を読んで、「あ、これは元を読んでみたかった話だ!」と、結びついた。
    久世さんあたりだろうか、紹介していたのを読んで、エロティックさにうっとりした。
    国雄とは、放埓な生活を好み、女の半纏を引っ掛けて朝の晩くに朝風呂に行くのを楽しむような男。親が困って海外へやったのに、そこでも美しい魔の捕虜になっている。

    抜書き
    「一体女と云うものは(中略)云わば長く逆境に在ると神経が過敏になって、理由もないのに腹立って、日頃は非常に大切にして居る器物や宝石を壊して見たり、或いは非常に愛して居る自分の恋人を打擲したりする事がある。
     然し国雄は何事をも忍びます。或日夫人は例の如く国雄を散々に苛んだばかりか、遂には自分の美しく結んだ頭髪までを滅茶々々に毟って、挿した宝石入りの櫛を足で踏砕いた。其の時の心地は何とも例えられぬ位、丁度夏の日に冷水を浴びたようであった……
    (中略)
     国雄は光沢ある黒い髪を房々と肩近くまで延し其の先をば美しく巻縮らした。
     貴君は車上の彼が姿を御覧になって、あの長髪をば定めし極端なハイカラ好みとでも思われたかも知れぬが、其の実は夫人が癇癪を起した時、彼はその長い髪を引き毟らせ、そして狂乱の女に一種痛刻な快味を与える為めなのです。」


    「毟」には「手偏」がつくのだが、文字コードが違うので文字化けせぬようこのままで。


    このエロティックさは、谷崎の『刺青』を思い出させる。

    美しい肌を持った女に己の魂を込めて刺青を彫りたいと願う清吉。
    初心な、美しい肌の娘を見つけ、それを説いて、本当は凄まじい女の性があるのだと、刺青を刺させ……

    娘を眠らせて、女郎蜘蛛の刺青を背中に彫り上げる。
    朝日の中に立った娘は、刺青を彫る前と後では性格が変わり、魔性の女となっている。
    清吉に向かって「お前さんは真先に私の肥料(こやし)になったんだねえ」と言い放つ。



    ……目に浮かぶのは、着物を羽織り、その背中をはだけて背の刺青を男に見せる娘。
    丸い肩からの真珠のような肌の輝き。背中に巣食う女郎蜘蛛の妖しさ。そして、男を食らって生まれ変わった娘。
    なんという艶美。

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著者プロフィール

一八七九(明治一二)年東京生まれ。高商付属外国語学校清語科中退。一九〇三年より〇八年まで外遊。帰国して『あめりか物語』『ふらんす物語』(発禁)を発表。一〇年、慶應義塾大学教授となり『三田文学』を創刊。五二年、文化勲章受章。五九(昭和三四)年没。主な作品に『腕くらべ』『つゆのあとさき』のほか、一九一七年から没年までの日記『断腸亭日乗』がある。

「2018年 『麻布襍記 附・自選荷風百句』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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