ふらんす物語 (岩波文庫 緑 42-9)

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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003104293

作品紹介・あらすじ

明治四〇年七月、二七歳の荷風は四年間滞在したアメリカから憧れの地フランスに渡った。彼が生涯愛したフランスでの恋、夢、そして近代日本への絶望-屈指の青春文学の「風俗を壊乱するもの」として発禁となった初版本(明治四二年刊)を再現。

感想・レビュー・書評

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  • 実は一度読んで挫折してしまったこの本。2度目の今回は作者荷風のことも、少し勉強してから読みました。

    熱烈なフランスへの憧れは、まるでふらんすそのものに恋しているよう。前回途中で投げ出してしまったことを後悔しました。耽美的な文章で、帰朝後有名な人気作家になっていく荷風の文学的な成功の萌芽は既にあったのですね。なんともロマンティックで端正な文章の中に鋭い文明批判が仄見えます。

    実業や権力だけが宝ではない。芸術にも同様の価値があるのに、日本人は生活の中の詩情に、まだ価値を見出していない―。富国強兵策に沸き返る日本を省みて、荷風の胸にはどんな感情が生まれたのでしょう。

    かりそめのうたかたのような恋の中に自分で演じて自分で酔いしれたロマンス。どんなに溺れていても、夢だからこそ酔えただけ。心の隅にはいつも、冷静に祖国や自分を批判する怜悧な荷風がいたのだとしたら。その内心は、なんて悲しく、孤独なものだったでしょう。美しい夢と過去。優しい女の心遣り―。優美な夢を見て、現実生活では孤独を生きることに生涯を賭ける。

    若い時期の渡仏で、その人生の姿勢は固まったのでしょうか。日本にこんな美しい文学があること
    私たちはもっと味わって良いと思います。

  • 「あめりか物語」より断然いい。ちゃんと「文学」になっているし、ひとつの青春文学としても、当時のフランス文化を伝えるレポートとしても、興味深かった。
    荷風がど素人からいきなり「文学者」になったのは、やはりボードレールの薫陶によるものだろうか。「あめりか物語」と「ふらんす物語」のあいだには歴然とした格差があり、この断絶を決定づけている要素、つまり、「文学」を成立させているものとはなんだろうか。
    ポエジー? 文体? 構成?
    ブンガクを勉強したい人は、この2冊を比較検討してみるといいかもしれない。
    巻末の「付録」として音楽評論が載っているが、当時(R.シュトラウスもドビュッシーも、壮年のバリバリ現役だったころらしい)のヨーロッパの音楽状況を伝えてくれておもしろい。音楽の素人にしては、かなり的確な評論になっている。好きだったんだなあ。

  • 作者永井荷風が、5年間にわたるアメリカ・フランス滞在ののちに書いたと短編小説。

    最新の所在はOPACを確認してください。
    TEA-OPACはこちら→
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00186607

  • 『あめりか物語』の一応続編。むしろ日本への帰途での不平・愚痴が面白かった。

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  • 一時発禁本だったというので、逆に興味を持って読んだが、今のおじさん世代ではイマイチその理由がわからない。。。。もちろんここら辺だろうな〜と想像は付くが、驚くような表現ではない。

    今の海外旅行・出張とは大違いで、お金たくさん使ってます!って感じだったんですね。。。。それにしても米国が嫌でしょうがなくて、フランスは手放しでの礼賛とはどういう理由だったんでしょうか?それを理解するためには「あめりか物語」を読まないといけないのでしょうか?優れたマーケティング力ですね永井さん!

    CDなどない中で、どれだけ沢山のコンサートに通ったのだろうか?それとも楽譜が読めたのだろうか?特にオペラなどは時間も長いので、そう簡単に聴き覚えられるものではないのだけれど。。。。。確かに音楽能力の高い人は語学力も優れているのだけれども、それにしてもあの時代において今でも通ずる音楽批評。

    面白いのが、サンサーンスやドビュッシーが同時代とされている事。当時の現代音楽作曲家という位置付けですね。。。。。不思議な感じです。

  • Amazon、¥480.

  • これも図書館本。
    このくらいふらんすにのめりこむのはかえって痛快!

  • あめりか物語の続編。荷風が恋焦がれたフランスでの生活が描かれています。
    当時の風俗やフランスでの日本人の生活が垣間見れます。
    吾は吾の影を愛す!砂漠の影を思い浮かべると頭がぼーっとします。

  • 著者のフランスへの強い思いがさまざまに表現されている。おそらく、荷風だけでなく当時の日本の芸術家にとってもフランスという国は格別な存在だったのだと思う。今の日本人の多くにとってもそうなのだから。また、巻末のオペラ評論は意外に非常に有為である。

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著者プロフィール

東京生れ。高商付属外国語学校清語科中退。広津柳浪・福地源一郎に弟子入りし、ゾラに心酔して『地獄の花』などを著す。1903年より08年まで外遊。帰国して『あめりか物語』『ふらんす物語』(発禁)を発表し、文名を高める。1910年、慶應義塾文学科教授となり「三田文学」を創刊。その一方、花柳界に通いつめ、『腕くらべ』『つゆのあとさき』『濹東綺譚』などを著す。1952年、文化勲章受章。1917年から没年までの日記『断腸亭日乗』がある。

「2020年 『美しい日本語 荷風 Ⅲ 心の自由をまもる言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

永井荷風の作品

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