- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003104415
作品紹介・あらすじ
万葉以来の日本的伝統と西欧近代の精神と、作者その人の生との完全な融合を示して、茂吉および『アララギ』の歌壇での位置を決定した歌集。強烈な人間感情の表出は一般文芸界にも衝撃を与えた。作者みずから定本とした改選版に、発表当時大きな反響を呼んだ初版本(大正2年刊)を付載。初句索引を付す。
感想・レビュー・書評
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「死にたまふ母」の歌人として有名な齋藤茂吉は精神科医でもありました
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赤く、ただ赤く詩は道を作る。
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259夜
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ふだん歌集を全く読まないので、この作品集が優れているのかどうかは正直よくわからない。
けれど、「死にたまふ母」の章を読んですごく新鮮に感じた。
これまで短歌は一首単位で楽しむものだと思っていたが、この章の短歌はそれ自体だけでなく、全体を通して読むと、故郷の病気の母のもとへと向かった著者の心情が臨場感をもって読者に伝わってくる。
短歌でこのような表現方法が可能だと知って驚きを覚えた。 -
緑44-1
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僕に短歌というものの目を開かせてくれたのは斎藤茂吉である。
きっかけは「どくとるマンボウ青春期」という書物であることは以前記した。
その本をきっかけにして購入したのが,岩波文庫版「赤光」。
読めば読むほど,短歌というものが,しちめんどくさいものでもなく,難しいものでもなく,人の心の内や,風景などをこんなにもゆらゆらと自由に歌えるものか,こういうふうに書きあらわすこともできるのかと,つくづく思ったものだ。
以来,この文庫をいつもポケットにつっこんで,大学の講義の合間や,講義の最中にもずっと繰り返し読んだものだった。
はたして,当時,「赤光」のどのような歌が気に入っていたか,メモが残っているので数首抜き出しみようと思う。
数学のつもりになりて考えしに五目ならべに勝ちにけるかも
秋の夜の灯ししづかに揺るる時しみじみわれは耳かきにけり
現身は悲しけれどもあはれあはれ命いきなむとつひにおもへり
細みづにながるる砂の片寄りに静まるほどのうれひなりけり
をさなごの独り遊ぶを見守りつつ心よろしくなりてくるかも
猫の舌のうすらに紅き手ざはりのこの悲しさを知りそめにけり
ひとり来て蚕のへやに立ちたれば我が寂しさは極まりにけり
さびしさびしいま西方にゆらゆらと紅く入る日もこよなく寂し
蚊帳のなかに蚊が二三疋ゐるらしきこの寂しさを告げやらましを