- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003104514
作品紹介・あらすじ
舞台は明治末から大正の頃の東京。主人公は身寄りのない娘おくみ。ことさらに劇的な展開があるわけではない。おくみは恋をする。しかし恋ともいえぬ淡いものである。ここに登場する人々の暮しぶり、立居振舞、会話、すべて時はゆるやかに優しく流れる。のち童話作家に転換する小説家鈴木三重吉(1882‐1936)の代表作。
感想・レビュー・書評
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作者自身も「ただ感じのみで興味をつなぐ」といっているくらい何も起こらない小説。でもこの「感じ」がはまると主人公のおくみさん始め、登場人物や作品自体が愛おしくいじらしくなる。日常のディテールが細かく生活感がある小説が好きな人におすすめ。
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鈴木三重吉が児童文学に移行する前の小説。
全体に淡い哀愁が感ぜられる。
おくみと青木さんの如何ともしがたい関係性から、伊藤左千夫の「野菊の墓」が思い出された。
解説は中島国彦。 -
上村松園が描く普通の女の人の美しさを思い出した。ゆったりしてさっぱり。
ku:nel系きちんとした生活に憧れる人もうっとりするかも。 -
8/31
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読み終わった余韻が半端なかった。無いものへの無い物ねだりなのは分かってるけれどさ・・どうしてこうなった。としか言えない。
女として生まれているなら、こういう女性になれるものならなってみたいと本当に思うの。
あぁなんで、日本はこんなににも変わってしまったんだろう。
ただ、ただ、羨ましくて仕方がない。其れほどまでに美しいと完成されてるって思った小説は久しぶり。 -
こんなにも起伏のないのにダラダラとも違うというのは、不思議。
清潔でつつましい生活をただ描いて、
そこにほのかにおくみの想いと寂しさを描く。
みんないい人なのに、強い絆で結びついている人は誰もいないというのが本当にさびしい。
優しくて穏やかなのに寂しさばかりが漂う。 -
ほんのりと寂しい頼りないトーンが始終漂っていた。ここまで起伏のないお話というのもすごい。縁に薄いまま過ごし、この先もそのように思われるおくみが画家の青木の家で二ヶ月余りを過ごす。おくみはうっすらとこのまま青木さんのそばにいれたらいいのに、と思うが頑とした意思表示もせず、たまにふと寂しさに涙ぐむ。ささやかに生活そのままに描かれたおくみの純な感じが清々しいながらもあまりにはかなく寂しい。この物語ではどの人もしっかりとした縁で他人とつながっていない。どの人物もつつましくちゃんと生きているが、強い他人との情愛による結びつきは持てず、問題のない生活に微笑んでいるのに寂しげだ。清潔な家に清潔な空気が充ちているようなさっぱりした読書が出来る。「青木さん」という名前や青い木陰にぽつぽつと赤い色彩が、おくみのちょっとの喜びや抜けない寂しさを点す。なめらかな日本語と情景が素晴らしい。しかし寂しい。ああ寂しい。
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ながれるように進む。