暗夜行路〈後篇〉 (岩波文庫)

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  • 岩波書店
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レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003104651

作品紹介・あらすじ

京都での結婚、妻の過失、子どもの死などを経て、舞台は日本海を見おろす大山に-作者が人生と仕事の上で求めてきたものすべてが投入され、描き尽くされた、近代日本文学に圧倒的な影響を及ぼした代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 謙作の京都での生活と旅。旅とお寺巡りをしたくなった。前篇とテイストが違う気がすのは、この作品が長い時間をかけて書かれたものだからだろう。作者あとがきも興味深い。「暗夜行路」は夏目漱石の「心」の後に連載予定だった作品とのこと。夏目漱石の作品も改めて読みたい。明治・大正・昭和を生きた文豪の作品は、当時の日本の様子が分かって面白い。

  • 意外だった。
    と言うのが一番明確な答えだろう。



    今年2つめの課題図書、志賀直哉の『暗夜行路』。
    超がつくほどに有名な本だが、読んだことがある人間は今では少ないだろうと思う。
    正直、私も経験的に読んでおかねばなるまいと思っての一冊だった。
    予測としてはまぁ進まなくて2ヶ月ぐらい潰すかもしれやんと気構えていたが、意外とあっさりと読めてしまった。むしろ早いぐらいだ。
    まずそれが意外。いやむしろ驚きの域に達する。


    志賀直哉の作品は何冊か読んだことがある。
    ひとの言うところの”小説の神様”。横光利一のことをそう表現する人もいるがこちらの場合は代表作である『小僧の神様』に引っかけてそういわれている。とはいえ、推敲の鬼ともいえるほどに簡素な文を書く美文家で、好きな人は本当に神ともあがめる賞賛を送る。
    確かにおこがましいながらも、私には絶対かけないような端的な文章を書く人だなとは思う。しかし、この人の文章は私情はあるが、どこか人情がないのであまり私の好みではない。
    その素っ気なさがこの人の文章の特色で、フィクションらしいドラマチックを排除した現実感が、近代文学に一石を投じた志賀直哉たる証拠なのだ。
    だが、そんな風に起伏を持たないものは正直読んでいて退屈だ。他人の日記はその人のことを知っていてようやく多少のおもしろさを感じられるのだ。
    こういってしまうと私小説しか描けぬ作家と決めつけてしまっているように見えるが、志賀直哉はそうではない。フィクションだってちゃんと書く人だ。ただ現実の枠組みから出るようなことをしないし、心理に大げさな脚色をしないのだ。
    結局のところミシマニアといえる私のような派手好きは、物足りなさを感じるのだろう。
    志賀直哉は逆にミシマの小説を、
    「平岡(三島の本名)の小説は夢だ。現実がない。あれは駄目だ」と一蹴している。
    なるほどね。



    はてさて、くさしまくっての話ばかりしたが、こういう前提があったからこそ私は読むのは大変だろうなと覚悟していた。
    ところがどっこい読んでみたらこれが読みやすい。
    物語は謙作という出自の複雑な青年の因果ともとれる精神的な苦悩を淡々と描いている。
    簡単に書いてしまうと、他人が翻弄された結果を被り不幸を背負わされた男の精神の解放だ。うむ、これでは全く簡単に書かれていないが、少しこういうわかりづらい表現を用いず、話だけ要約すると、母の不義により生まれた青年が妻にまで裏切られ悩んじゃう話。つまり上下400ページあまりの本としてはあまり読みたくない感じになってしまう。
    あくまでこの小説は精神的な苦悩というか葛藤がメインなのだ。それは文学らしい定型を守っているが、先ほども言ったようにこの人の文章には情緒がない。感情を”怒りを感じた”なんて、表現してくる。描写や言葉、もしくは動作に組み込むことはしない。
    味気ないんだよな。もちろん趣向の問題だろうけれども。
    それに加えて感じたのがこの人の文章って、なんというかこちらとの距離を感じると言うことだ。現実に忠実であることは、読み取りやすく結果としてはネームバリューと厚さを裏切って早く片付いてくれたが、結局それではただ眺めている節が強く、感情もないので私には共感性が生まれずづらい。
    あっという間に過ぎた感じの小説だった。
    なんだかな。
    そういえばもう一つ不思議だったのが、時々やけに細かいところだ。それが後に何か意味を持つ伏線なのかとも考えたが、この人は現実に起こる日常を切り取るので、それはそのままなのだ。
    いや、むしろ志賀直哉はこの小説を仕上げるのに15年ほどの時間を費やしている。
    うまくいかず、何度も立ち止まり、書いてはまた止まり、悩みの難産を続けての作品だ。
    これを聞いて、眺めてみてば伏線は成立させるのは難しいだろうし、むしろよくまとまったと見える。
    でもこれを日本の文学史上でかなり重要な位置を占める、と言われると思わず首が傾く。
    しかし誰かが言ったように最高の恋愛小説なんて表現するのはもっと変な話だと思う。では教養小説か、否。
    精神の変遷と言えばかっこつくか。はてさて。



    いろいろ考えたのだが内容については細かく書くことはやめておく。引用もだ。
    正直、書くことがそんなにないのだ。
    しかし微妙に切り取られた場面の印象が残る。そうなのよ、ラストは非常によかったと思う。私は結構好きだな。

  • 子供の死、妻の不貞を赦そうと思っても心の底では引っ掛かりが取れない主人公があがく。けれどいまいち主人公に肉薄できない。自己中すぎる気がして…。

    洗練された文章は業物。大山に向かう道のり、大山での夜明けのシーンが映像で見えた。流石志賀直哉。
    最後謙作が熱にうなされて、足だけが暗闇を歩き回る想像の所が個人的に一番「暗夜行路」している。終わり方があっさりしているけれど、クライマックスまでの鬼気迫る描写は、まるで本が生きているような錯覚を受ける。
    寝る前の夜読書に是非。

  • 性の問題、友情の問題、夫婦の問題、自分自身との折り合い、悲劇か喜劇か、すぐそばにある不幸とどう対峙し、どう捉えるか

  • 名前だけ知っていた作品の全貌を知ることが出来たときのこの充足感…なるほど暗夜行路。
    風景と心情の描写がていねいで、特別面白い話がある訳ではなくても色々な景色を見られたのでよかった。

  • 大山、尾道などを舞台とした作品です。

  • これが私小説ってやつか。なんかすごい設定とか展開とか求めちゃダメなんですね。檸檬みたいなもんなんですね。理解していませんでした。ごめんなさい。後書きと解説で色々理解しました。ゆとり乙。女性の一度の罪が他者を傷つけ続ける‥‥変なテーマですが、書きたいことは分かります。なんといっても心理描写は素晴らしいです。
    でも教科書で紹介される本なのかは結局よくわかりませんでした。

  • 読みやすかった。

    府に堕ちないのが直子との結婚。あっさりし過ぎてるような気がする。昔の結婚自体がそんなもんだったのかな。

    後編もやはり謙作の心の動きが書かれていた。妻に責任はないとわかっていても、妻の不貞行為が心の底では許せない。そして一人こころを落ち着けるため、出家するつもりで家を出る。

    最後もあっさり病気になって、終わる。

    知りたいとこがあっさりのような。

  • 虚飾を排し人間の存在をそのまま鏤刻した作品。。。

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著者プロフィール

志賀 直哉(しが なおや)
1883年2月20日 - 1971年10月21日
宮城県石巻生まれ、東京府育ち。白樺派を代表する小説家。「小説の神様」と称されて、多くの日本人作家に影響を与えた。代表作に「暗夜行路」「和解」「小僧の神様」「城の崎にて」など。

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