志賀直哉随筆集 (岩波文庫 緑 46-6)

著者 :
制作 : 高橋 英夫 
  • 岩波書店
4.17
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本棚登録 : 201
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003104668

感想・レビュー・書評

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  • 好きな志賀直哉の随筆集
    志賀直哉の作品は小説なのか随筆なのか、曖昧な感じがするのだけれど
    この随筆集が読み物として面白いということが、そんなことどうでもいいと思わせてくれる

    美術についての章が
    結構何言ってるのかわからないところも多かったけど、

    師友回想の章では
    芥川龍之介、谷崎潤一郎、太宰治など同時代の文豪たちとの交流が興味深いし
    文学についての章では
    作品裏話的な、どんな気持ちで書いたかがわかって面白かった

    他、随筆とはいうものの、短編の小説として読んでも面白いものも多数ありました

    1番最後「ナイルの水の一滴」はたった5行の文章ですが、すごく好きです

  • 客観・主観ともに正確なところを突いてくる文章が気持ちよい。白黒つけないと収まらない、扱いが難しいおじいさんだけれど、やりすぎたと思えばうなだれる素直なところもあって、嫌な人ではない。こういう人と直接交流するのは大変疲れそうだけれど、文章で接することができてよかった。

  • とてもとても面白かった。
    志賀直哉の文章はとても正直で飾り気が無く、何度となく共感する部分もあり、すごく身近な人に感じた。
    それとこの随筆集を読んでこれほど文章が書ける人が羨ましいと思った事は無い。
    自分の周りの人や事についてこんなに瑞々しく書けてそれを後世に残せるってすごく素晴らしい事でしょう?

  •  動物についての随筆が印象的。小説を読んだ時の何とも言えない間隔を思い出すような、作者の価値観が反映されている文章に時々ひやりとする。虚無的、ではないかもしれないが、暗く真面目な乾いた視線というのか。
     「素人玄人」という随筆の中で、クマという犬について触れたものがある。可愛がっていた犬だが、最後は病気で死んでしまった。その犬について書いた最後の文が、「間もなく、食糧難が来た。人間さえ食えず、犬など到底買うことはできなくなった。どこの飼い犬も注射で殺された。私はいい時にクマは死んでくれたと思った」。最後にぞくりとした。気持ちとしては、なるほどと納得できるが、それをそういう言い方で書くのか、と思ったのだ。
     最後の随筆、「ナイルの水の一滴」は好きだ。私はたった一人しかいない特別であり、どこにでもいる平凡なありふれている人間で、それでいいのだと許された気持ちで。

  •  とにかく、奈良は美しい所だ。自然が美しく、残っている建築も美しい。そして二つが互に溶けあっている点は他に比を見ないといって差し支えない。今の奈良は昔の都の一部分に過ぎないが、名画の残欠が美しいように美しい。
     御蓋山の紅葉は霜の降りようで毎年同じきは行かないが、よく紅葉した年は非常に美しい。五月の藤。それから夏の雨後春日山ほ樹々の愛だから湧く雲。これらはいつまでも、奈良を憶う種となるだろう。
    p329「奈良」

  •  小説の神様と言われつつも、教科書で邂逅することなく終わった。気になってはいたものの手に取るだけの衝動はなく過ごしてきたが、先日、この随筆集の一番最後に収録されている文章を目にした。短いながら、スウと妙なものに遮られず流れる感じに好感を持ったので購入した。そして、その日一日ですべて読み切ってしまったので驚きながらも、名文と呼ばれる所以が何となくわかったような気になった。
     その場にジッと佇んで何かを見詰めているような雰囲気もあって、静かで寂しい感じが本に絶え間なく流れている。おそらくこれから数度は読み返すだろう。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/701409

  • 愛し方は変化して行っても互いに愛し合う気持ちは代わらない。ろうそくは変わっても、その火は常燈妙のように続いて行く。志賀直哉『暗夜行路』1921

    自己嫌悪がなければ、自己を熱愛することもない。自己に冷淡であるからだ。志賀直哉『青草帖』

    求めて得られるのは快楽であり幸福ではない。志賀直哉 

    前途は遠い。そして暗い。しかし恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。行け。勇んで。小さき者よ。有島武郎『小さき者へ』1918

    愛は自己への獲得である。愛は惜しみなく奪うものだ。愛せられるものは奪われてはいるが不思議なことには何物も奪われてはいない。しかし愛するものは必ず奪っている。▼愛を優しい力と見くびった所から生活の誤謬は始まる。▼愛せざる所に愛する真似をしてはならぬ。憎まざる所に憎む真似をしてはならぬ。▼愛の反対は憎しみではない。愛の反対は愛さないことだ。有島武郎たけお『惜しみなく愛は奪う』1920

    若い者は女を欲求することと恋とを一つに見ている。女の運命を第一に気にするのが恋で、自分の欲望を満たそうとばかりするのは肉欲である。▼ある人に恋される資格のある女は唯一でないかもしれない。だが恋してしまったら、その人にとってその女は唯一になるだろう。武者小路実篤『友情』1920

    人生から愛をひけば何が残る。土地から水分をとれば砂漠になるようなものだ。▼生きるとは、自分の自由意志で、自分の理性に従い、正しいと信じる生き方をすること。武者小路実篤

    ※大正。白樺。人道、理想、個性。

  • 半分ほど読んで挫折。
    山口瞳の「旦那の意見」のほうが読み易かった。

  • 初の志賀直哉です。
    小説なのか日記なのか評論なのか、普段の出来事まで小説かの如きです。
    私の印象は現実に生き現実を視て生活し、現実を考え文章を書いた方と感じました。
    交流した方々の話も興味深かったです。

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著者プロフィール

志賀直哉

一八八三(明治一六)- 一九七一(昭和四六)年。学習院高等科卒業、東京帝国大学国文科中退。白樺派を代表する作家。「小説の神様」と称され多くの作家に影響を与えた。四九(昭和二四)年、文化勲章受章。主な作品に『暗夜行路』『城の崎にて』『和解』ほか。

「2021年 『日曜日/蜻蛉 生きものと子どもの小品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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