北原白秋歌集 (岩波文庫 緑 48-4)

著者 :
制作 : 高野 公彦 
  • 岩波書店
3.82
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本棚登録 : 201
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003104842

作品紹介・あらすじ

詩集『邪宗門』『思ひ出』で鮮烈に世に出た青年詩人は、1913年、第一歌集『桐の花』を刊行する。詩、童謡、民謡など韻文のあらゆるジャンルで数多くの優れた作品を生んだ北原白秋は、短歌の世界でも大きな足跡を残した。晩年の『黒檜』『牡丹の木』まで全歌集12冊から精選。

感想・レビュー・書評

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  • 白秋は青年期から晩年にいたるまで、一貫して歌を詠み続けていたようだ。それらの成果は多くの歌集として残されたが、やはり『桐の花』にこそ白秋の真髄があると思う。短歌でありながら、あたかも象徴詩を思わせる表現がそこには見られる。例えば「…雪よ林檎の香のごとくふれ」の歌は、雪だけが降りしきる白一色のモノトーンの世界だ。しかし、林檎という言葉はそこに一瞬のあざやかな紅の残影を帯びさせる。まさに新古今三夕の歌の定家だ。しかも、「林檎の香」には、甘くそして切ない、匂い立つばかりの憂愁と哀しみの香りが揺曳するではないか。

  • かくまでも黒くかなしき色やあるわが思ふひとの春のまなざし
    夏浅き月夜に野良の家いくつ洋燈(ランプ)つけたり馬鈴薯の花
    観音の金鼓ひびけり湯に居りてのどかよと思ふ耳あらひつつ
    みすずかる信濃の駒は鈴蘭の花咲く牧に放たれにけり
    ラヂオ研究所灯を消しにけりうしろ立つ照明迅く鉄塔は見ゆ

  • Y先生から借りた。北原白秋を好きとこれから言おう。自然を写実的に描いた短歌、そのなかで興味をそそられる植物や動物が出てきたときにとてもこころが動いた。ゆっくりと、ひとつずつ味わった。
    解説に、本編の歌が引用されており、そうするともう一度読み直したくなった。ぱらぱらとめくっていき、前半の「桐の花」の何首かを読む。すると最初読んだときよりもとても感じ入って読めた。
    白秋の一六四三首をめぐっていくうちに、短歌への思いや味わい方が自然と変わっていったのだとおもった。

  • 「草わかば色鉛筆の赤き粉のちるがいとしく寝て削るなり」
    が中学の国語便覧に載っていて、緑と赤のコントラストが何て鮮やかで綺麗なんだろうと思い、ずっと心に残っていました。

    短歌の本を色々読んでいくなかで「君かへす朝の敷石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」に出会い、この歌集を読んでみようと思いました。

    五感に訴えかける美しい歌がたくさんありました。

  • 白秋の短歌は繊細な金細工のよう、美しい織物のようだ。短歌に象徴をもたらした。
    「春の鳥な鳴きそ鳴きそあかかと外の面の草に日の入る夕」「君返す朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」「大きなる手があらわれて昼深し上から卵つかみけるかも」「ニコライ堂この夜揺りかへり鳴る鐘の大きあり小さきあり小さきあり大きあり」

  • 浪漫・象徴というのは、反面、描写を伴わぬか。形容詞のところを体言に置き換えるだけでもっと普遍性が出てくるのではと思うところが多い。その延長として叙景が弱い?

  • 北原白秋というと、真っ先に 「草わかば〜」「君かへす〜」の短歌を思い出します。

    「君かへす〜」、何度読み返しても酔いしれてしまいます。あまりに好きなので冷静に分析することが出来ません。妄想をつらつらと…


    雪を静かに踏む音にも、林檎を優しく咀嚼する音にも重なる、さくさくという言葉。一見軽やかで平和的な響きのように聞こえるのに。
    林檎は爽やかなイメージと退廃的なイメージを持ち合わせる果実だと思います。ぱっと広がる香り、滴る透き通った果汁、けれども奥に潜む芳醇な蜜。成熟しきって腐り始めるころの、強烈に匂い立つこってりとした甘さ。若いころの甘酸っぱさをそっと潜ませながら。アダムとイブが誘惑に負け手を付けた果実であることから、禁断の象徴でもあるんでしょうね(無花果であったかもしれないけど)。二人の姿に重なります。
    雪のあたたかなやわらかさ、容赦のない冷たさ、天使の羽のような高潔な白さ。
    自然現象という原始的な部分は二人の犯した罪を優しく包み込んでくれ、または覆い隠してくれる。けれど厳しく眩い白はその罪を浮きだたせ冷ややかに非難しているようです。
    敷石は彼女を居るべき場所へ連れ戻す道標ですね。二人を平和な場所へ戻してくれる。しかし二人を引き裂く。

    耽美、退廃を何処までも追える歌だと思います。

  • パンクだなぁと思います。

  • 冬薔薇。

  • 白秋さんは、たまにはっとするような文句が出てきてびっくりする。

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著者プロフィール

1885年(明治18年)、九州・柳川生まれ。童謡を含む幅広い作品で、日本の近代文学に偉大な足跡を残した詩聖。処女詩集『邪宗門』でエキゾチック感覚の象徴詩人として知られる。

「2020年 『美の魔睡 邪宗門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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