犬―他一篇 (岩波文庫)

著者 : 中勘助
  • 岩波書店 (1985年2月18日発売)
3.90
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  • Amazon.co.jp ・本 (133ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003105146

作品紹介・あらすじ

回教徒軍の若い隊長に思いをよせる女の告白をきき、嫉妬と欲望に狂い悶えるバラモン僧は、呪法の力で女と己れを犬に化身させ、肉欲妄執の世界におぼれこむ。ユニークな設定を通し、人間の愛欲のもつ醜悪さを痛烈にえぐり出した異色作「犬」に、随筆「島守」を併収。著者入朱本に拠り伏字を埋めた。

犬―他一篇 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ★★★
    修行僧は、異教徒に体を許した少女に欲情した。異教徒を呪い殺した修行僧は、我が身と少女を犬に変える。
    修行僧の身のため、人としては少女と交われない。そのため畜生に落ちて欲情のままに殺し、姦淫する僧の執念と、人としての意識を保とうとしながらも畜生の本性に逆らえない少女。人としての欲を否定するのではなく、どうしても人が持つものとして認めてさらにそれを畜生として表現する中勘助の凄み。匂い立つような濃厚な色香の漂う文章です。
    ★★★

    ★★★
    他1編 は「島守」。病気養生で小島に来た作者が目に触れる自然を瑞々しく表現した短編。「犬」とはなんと違う息苦しい程の純粋さ。まるで作者自身が人里離れた池に住むカワセミのよう。
    ★★★

  • 『犬』
    言葉づかいとその文章が、とてもねちっこく感じて、作者の中勘助さんは、ねちっこい性格の人なのかなぁと思った。
    話としては憐れむような、でも結局のところどうしようもない。
    本当に、どうしようもない…。
    中勘助の独自の恋愛論というものがあとがきに書かれていたが、『犬』読了後、「恋ってなんだろうな…」なんて、ぐるぐると考えてみたりもしたが、そんな問いに答えなど出ないものか、でも何度もぼんやり考えた。

    『島守』
    綺麗で、優しい言葉だなぁと思いました。
    読書中、なんとなく、自分の故郷での幼い時分のこと、懐かしさとかセンチメンタルなどの言葉で言うこともできるのかもしれない昔の感覚を、久しぶりに、たくさん思い出しました。
    私は普段、小説には物語を求めるところが大きい気がするのですが、このお話は、読んでいて、物語としてしっかり頭の中に残っているようなものではなく、一語一語のみこむのと同時に物語としてはいつの間にか頭の中からは消えてゆき、後には恥ずかしながらノスタルジイとでも言うのでしょうか?、なんとも忘れ難い"なにか"が、心の中に残っているような…そんな小説でした。
    また、一般的に質素というのかもしれない食事が、その描写で、本当においしそうに思えました。
    最後に、読み終わった後、日付を見直しましたら、これはたった一カ月にも満たない日記なのか…と、その短さを初めて知り、思いました。
    ただゆっくりと浸っていられる、心地よい、幸せな読書時間でした。

    個人的な話になるのですが、今ちょうど学校の課題で中々帰宅できない日々が続いていまして、なので、毎日の短い電車の待ち時間などで少しずつ読み進めた『犬』『島守』は、読み終わるのが心惜しいような、寂しい心持ちになりました。
    特に『島守』には、本当に癒されていました。
    また、故郷が長野なのですが、元のイメージとしては野尻湖ということで、より懐かしい気持ちになったのだと思います…。

    「解説」
    解説を読むと、どうしても中勘助その人自身に、ぼんやりとですが思いを馳せます…。
    人間の性について…快楽としての性、生殖としての性、私は中勘助ではないので彼の思想を明確に理解することまでは出来なかったですが、改めて色々なこと、今まで考えたことのないようなことも、考えることが出来ました。そして中々の衝撃はありました。
    元々中勘助に興味が沸いたのは、彼の著名な作品『銀の匙』の、そのタイトルの綺麗さに惹かれたのですが、実は『銀の匙』は未読でして、なのでまた今度、ゆっくり読みたいと思います。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そのタイトルの綺麗さに惹かれた」
      「銀の匙」はタイトル通り美しい話です。。。「犬」のような作品も書くんだと驚いた記憶があります。
      2012/12/18
  • 新聞の読書欄に書評があって興味を持ち図書館で借りて読んだ。想像以上に凄い内容。この時代、川端康成、谷崎潤一郎、江戸川乱歩などもかなりエロティックな小説をかいているが、この小説は、それ以上に人間の奥底にある性的な感情を鷲掴みされるような思いがした。気が弱い人は避けた方が良さそう。

  • 島守の話は銀の匙の延長線上だけど
    犬は仏教と肉欲をめぐる奇譚

  • 57歳での結婚式の朝に、廃人となっていたお兄さんに
    自殺されたそうで、その経緯が書かれた、菊野美恵子の「中勘助と兄金一」を探してますが、なかなか。

    http://ci.nii.ac.jp/naid/40001924183

    昔の「新潮」を古本屋で探すしかないのか・・・

    皆さんが仰っていますが、「銀の匙」とは違います、
    と私も言っておこっと ^^;

    穏やかな気候のこの季節に敢えてこういうものを読まなくても・・・とは我ながら思いましたです。

  • バラモンの醜い老僧侶の嫉妬と性欲。それは、侵略してくる回教徒の若くたくましい男に陵辱され子を孕みつつも恋いこがれる若い女へとその情欲は向かう。自分と女を犬に変身させることで成し遂げようとする。全ては鮮やかに対比され、対比されるところに嫉妬と情欲が生まれるのが人間の本質であり性であるということか。
    小品ながら緊密な文体と観念的物語設定には重厚感がある。

    実は、著者の代表作「銀の匙」を未だ未読だったりする。

  • 肉欲と嫉妬に狂った醜僧のダークファンタジー。獣のほうが性に淡白から余計に人間の精神にある性が執拗にして醜悪に感じられます。
    衝撃的な結末も含めて古びない傑作。

  • 中勘助『犬』。
    いや~。『銀の匙』が昔好きだったので読んでみたけど、えげつない。(性的な意味で)

  • 『犬』のほうは内容的にものすごい作品なのですが、一緒におさめられている『島守』が読みたくて、購入。
    『島守』で一番感じたのは、擬態語のとても巧みな使い方。一つの段落だけでいくつもの擬態語が使われ、それがとても心地よくイメージと結びつく。或る意味ストイックといえる、自然のなかの、簡素な生活の淡々とした描写の裏に、その生活を愛し、慈しむような感情を感じました。

  • 大正時代に発表された小説で、昔のインドの話。

    シヴァ神に使える醜い苦行僧が、若い娘に恋をする。

    だが、その娘は敵国の若い武人の子を宿し、別れてなお、その武人を恋い慕っているという・・・

    嫉妬に狂う苦行僧は、得意の呪術で娘もろとも犬の身体に変身して・・・

    ってな内容なんですが、甘っちょろさナシの見事な内容。文もうまいし、ムダがなくてグングン読み進みます。

    舞台は昔のインドですけど、今も変わらぬ人の悩みを描いてますねぇ。

    個人的な“脳内挿絵”は手塚治虫でピッタリ。ブッダとか、桐人賛歌とかあるしね。

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