歯車―他二篇 (岩波文庫 緑 70-6)

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  • / ISBN・EAN: 9784003107065

感想・レビュー・書評

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  • とりあえず「歯車」の感想。

    自伝的小説ってやつでしょうか。度々作者の人生年表を見ながら読みました。 

    前半の『オオル・ライト』が繰り返されるところで、脳内に「作者は病気」タグがつきました。読み進めていくうちに「病院が来い」とか「だめだ早くこいつなんとかしないと」っていう言葉がポコポコ出てきました。俗っぽい感想ですみません。でも今っぽい言い回しを使うと、まさにそんな感じです。

    兎に角もうなんといいますか、何を見ても聞いても「もう駄目だ」なんですよ。
    お店に入ろうとしたら営業してない「もう駄目だ」
    インク買おうとしたらセピア色しかない「もう駄目だ」
    モグラの死体あった「もう駄目だ」
    それがいろいろな事象で延々と続くわけです。
    もう何を見ても聞いても話しても絶望しか感じないっていう作者の狂気。おそろしや。
     
    解説か何かに「死の追体験」という言葉がありましたが、まさにそうで、作者が狂気で死に向かっていく様にシンクロできてしまう。だからすごくすごく怖い。自分がこんなんなっちゃったら…って思うと、それはそれは恐ろしい。
     
    でも、狂った人が狂気のままに書いた文章とは徹底的に違っていて、それはここまで狂って書いていても、ちゃんと「小説」の体を成しているんですね。それが芥川の芥川たるところ。こんなに狂気に苛まれてるのに、ちゃんと一線引いて、冷静に自己が観察できている凄みがね、さすがなんですよ。逆にそれが怖い。なんでそんなことできるのよ、と。見方を変えると、本当に頭の良い人だったんだなあ、と思います。
     
    最後の最後、主人公が自室で横たわってたら、奥さんが血相変えてやってきて「お父さん(主人公)が死んでしまいそうな気がしたので…」っていうくだりが、なんか、こう、作品的でいいなあと思いました。
    あと、義母と弟と話しているシーンも好きですねえ。狂気ばっかりの文の中で、ちょっとだけ優しい文になっていて。そこに出てくる飛行機が、すごく象徴的です。いったいこの飛行機は何を表わしているのか…。そしてこの後の狂気に拍車がかかってく感じがまた凄い。
     
    芥川の後期の作品は本当に「ああ、もうだいぶきてるなあ…」っていうのが見てとれます。けど、決して自己を暴走させずに、「作品」に仕上げてるところに芥川の実力が見てとれます。
    ただ読むだけでもだいぶ怖いですが、それを書いた芥川の心理を想像すると、さらに背筋がゾゾゾゾ……。

  • 中学生の頃に読んで衝撃を受けた。芥川の傑作だと思う。村上春樹の小説が好きな人にもこの小説の意味はわかるんじゃないかとも思う。

  • 面白くはない。暗い。陰鬱。主人公が長生きしない感満載に見えるのはその後を知っているからなのか、劇中夫人が問うた通り、滲み出るものだからなのか。。

  • 「歯車」
    晩年の作品で、初期とは違って重苦しい印象。
    周りの死と火事、そして瞼を閉じても幻覚が見える。

  • 今まで読んできた芥川とはかなり違う文体。だが頭を使わないと読めない所は変わらない。三篇とも面白かったが特に題名にもなっている「歯車」は秀逸だ。人間の奥底の黒い部分を的確に表しているのではないか。やはり短編は素晴らしい。

  • 瞼を閉じると死の匂(ひかり)。
    光のない暗もある。

    出尽くす才能。
    そこまで行かなきゃ見えない匂があると知る。

  • 龍之介の遺稿集。亡くなる約半年前頃に書かれた作品集で、死臭漂う「玄鶴山房」、ジャンキーの夢を描いたような「歯車」、日記形式で支離滅裂な「或阿呆の一生」を収録。来るところまで来た時期の話だが、暗さや重さはそれほどなく清々しささえ感じる。

  • 芥川の晩年期の作品。 
    前期に見られたような滑稽さや技巧的な作品よりも自叙伝の要素を多く含み、人生や自分自身への眼差しの深さを感じさせる。

    神経衰弱、被害妄想などと言えば簡単だが、ある種の鋭さを持ちすぎたのかもしれない。

  • 芥川の遺稿とされた表題作。
    自死する前の心の不安さや病気の症状が、本人の視点から苦しいほどに描かれている。
    周りの何気ない出来事をすべて自分を付け狙う何者かであると結び付けてしまっている。
    歯車が少し噛み合わなくなってしまっただけなのに、人間は脆いなと感じた。
    (S.D)

  • これは辛い。
    或る阿呆の一生は発表しない方がよかったのではないでしょうか。プライベートの独白か、それに近い虚構。小説の体をなしてない。これだと芥川のプライベートを探る後世の批評家の餌でしかない。

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