葉山嘉樹短篇集 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 道籏 泰三 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 70
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003107232

作品紹介・あらすじ

葉山嘉樹(1894-1945)は,短篇小説でその本領を発揮した.葉山は虐げられた弱者,庶民,労働者を丹念に描き続けた.しかし,当時のプロレタリア文学が掬い切れなかった人間の破滅への衝動,思索的な内面性,文体・表現の斬新さ…, そこには,独自の世界がある. 全短編から,新編集により精選.葉山文学の真面目が初めて立ち上がる.

感想・レビュー・書評

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  •  独特な、というよりはグロテスクな比喩表現が印象的でした。極端に過酷な生活環境に置かれている赤貧労働者に焦点を当てた作品が多いです。作者の主義主張を全面に押し出したり背後にこっそり潜ませたりするのではなく、作者自身が労働者の視点に立ってリアルな生を描写することによって、下手に脚色するよりもリアリティを感じることができ、作品中の底辺労働者の存在自体を作者の主張とすることに成功しています。
     ですので、「万国の労働者よ、団結せよ!」的な露骨な赤の雰囲気を感じずに読む事ができると思います。

  • 多くの短編が掲載されているが、共通しているのはとてもごみごみして暑苦しくて小汚くて異臭がする話であるというところ。臭いがきつい話は苦手です。

  • プロレタリア文学としては小林多喜二が著名だがこの方も同じジャンルに属している。しかし読んでいるとミステリー的な要素や労働者という枠を超えた生きていく上での連帯(其々どの様な作品かは読んでご確認いただきたい次第)を描いたりしており、そう単純なジャンル分けしては良く無い気がする。
    個人的には収録作品の前半の方が印象的だった。

  • 小樽商科大学附属図書館蔵書検索OPAC
    https://webopac.ih.otaru-uc.ac.jp/opac/opac_link/bibid/BB10301131

    学費未納から除籍となった著者は、貨物船やセメント会社で働く中、労災死の見舞金増額要求など労働運動に携わった後、同様に苦しむ労働者たちに目を向けた作品を発表し注目されました。抜け出せない貧困、労働による障害、命をも失う労働環境の直接的な描写は、あまりにもグロテスク。しかし感嘆符と共に描かれる人間の叫びは、決してただの空想ではありません。「人間の値段」とは何でしょうか。

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著者プロフィール

1894年福岡県生まれ。早大高等予科除籍。海員生活を経て、労働争議を指導。1923年名古屋共産党事件で検挙され、刑務所内で「海に生くる人々」「淫売婦」を執筆。小林多喜二と共に日本プロレタリア文学の双璧と評されたが、体制支持へ傾き満州開拓に関わる。45年、中国で死去。

「2008年 『セメント樽の中の手紙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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