- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003107232
作品紹介・あらすじ
葉山嘉樹(1894-1945)は,短篇小説でその本領を発揮した.葉山は虐げられた弱者,庶民,労働者を丹念に描き続けた.しかし,当時のプロレタリア文学が掬い切れなかった人間の破滅への衝動,思索的な内面性,文体・表現の斬新さ…, そこには,独自の世界がある. 全短編から,新編集により精選.葉山文学の真面目が初めて立ち上がる.
感想・レビュー・書評
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独特な、というよりはグロテスクな比喩表現が印象的でした。極端に過酷な生活環境に置かれている赤貧労働者に焦点を当てた作品が多いです。作者の主義主張を全面に押し出したり背後にこっそり潜ませたりするのではなく、作者自身が労働者の視点に立ってリアルな生を描写することによって、下手に脚色するよりもリアリティを感じることができ、作品中の底辺労働者の存在自体を作者の主張とすることに成功しています。
ですので、「万国の労働者よ、団結せよ!」的な露骨な赤の雰囲気を感じずに読む事ができると思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
多くの短編が掲載されているが、共通しているのはとてもごみごみして暑苦しくて小汚くて異臭がする話であるというところ。臭いがきつい話は苦手です。
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プロレタリア文学としては小林多喜二が著名だがこの方も同じジャンルに属している。しかし読んでいるとミステリー的な要素や労働者という枠を超えた生きていく上での連帯(其々どの様な作品かは読んでご確認いただきたい次第)を描いたりしており、そう単純なジャンル分けしては良く無い気がする。
個人的には収録作品の前半の方が印象的だった。 -
小樽商科大学附属図書館蔵書検索OPAC
https://webopac.ih.otaru-uc.ac.jp/opac/opac_link/bibid/BB10301131
学費未納から除籍となった著者は、貨物船やセメント会社で働く中、労災死の見舞金増額要求など労働運動に携わった後、同様に苦しむ労働者たちに目を向けた作品を発表し注目されました。抜け出せない貧困、労働による障害、命をも失う労働環境の直接的な描写は、あまりにもグロテスク。しかし感嘆符と共に描かれる人間の叫びは、決してただの空想ではありません。「人間の値段」とは何でしょうか。