宮沢賢治詩集 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 谷川 徹三 
  • 岩波書店
3.87
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本棚登録 : 413
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003107614

作品紹介・あらすじ

野や山を友とする自然体験、法華経に傾倒した宗教体験、貧しい東北農民を眼前にみる社会体験の三位一体の上に発想・表現される宮沢賢治(1896‐1933)独得の魅力に満ちた詩群から146篇を収録。一瞬一瞬心に映るものの中に万象の永遠の姿をみるという賢治の世界は、今日ますますその不思議な輝きを増し、読者をとらえてはなさない。

感想・レビュー・書評

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  •  心象のはひいろはがねから
     あけびのつるはくもにからまり
     のばらのやぶや腐植の湿地
     いちめんのいちめんの諂曲(てんごく)模様
     (正午の管楽よりもしげく
      琥珀のかけらがそそぐとき)

    宮沢賢治の小説は苦手だが、詩は好きだ。「雨ニモマケズ」や「永訣の朝」もいいが、「春と修羅」が一番好きだ。何を言っているのかはわからないのに、何が言いたいのかはなんとなくわかる、この不思議な言葉の連なりが好きだ。

     いかりのにがさまた青さ
     四月の気層のひかりの底を
     唾(つばき)し はぎしりゆききする
     おれはひとりの修羅なのだ
     (風景はなみだにゆすれ)

    『銀河鉄道の夜』から連想される、聖人君子みたいな賢治はここにはいない。ここにいるのは、潔癖さゆえのフラストレーションに悶える、ひとりの孤独な青年だ。遠くに聞こえる雷鳴のような、青白い炎のゆらめきのような、何かひとつでもバランスが崩れれば今にも荒れ狂いそうな、破滅的なエネルギーの予兆。

     ああかがやきの四月の底を
     はぎしり燃えてゆききする
     おれはひとりの修羅なのだ
     (玉髄の雲がながれて
      どこで啼くその春の鳥)

    荒ぶる魂は、ときに文法や文脈をも破壊する。しかしその逸脱に、私はほとんど本能的な悦楽を覚える。形式上は破綻しているそれらの言葉は、交響曲のように重なりあい、響きあって、ひとつの世界を形成しているのだ。これが計算に基づくものなのか、感性によるものなのかは、私にはわからない。しかし賢治のように、既存の言葉を破壊してなお、言葉によって人に感銘を与える者がいるとすれば、それは「詩人」と呼ぶよりほかないではないか。

     まばゆい気圏の海の底に
     (悲しみは青々ふかく)
     ZYPRESSEN しづかにゆすれ
     鳥はまた青ぞらを截(き)る
     (まことのことばはここになく
      修羅のなみだはつちにふる)
     ………
     ………

  • まことのことばはうしなはれ
    雲はちぎれてそらをとぶ
    ああかがやきの四月の底を
    はぎしり燃えてゆききする
    おれはひとりの修羅なのだ


    青もとい靑の印象が強い詩集。ふと泣ける。言葉の断片が詩集を閉じても浮かんで来てしまう。明るい雨の中のみたされない唇、とか。抒情的な透明感が物凄いと思う。岩波文庫の書体も古めかしくて色っぽくて好い。

  • とあるきっかけがあり再読。とにかく『春と修羅』が半端ではない。賢治は誰かに何かを一生に伝え続けないといけないという強い思いがあったのだと思う。その中でも特に「蠕虫舞手」「腹体剣舞連」が好き。この二つはどちらも「舞」という点でつながっている。ダイナミックな踊りの中に潜んでいる刹那的な美しさを映し出すには、賢治の心象スケッチという即興性の高い創作方法がよくマッチしていたのだろう。

  • 本を開くと、イーハトーヴを流れる風の透明さと、土の匂いと、生い茂る草と、光る花々が見える。詩のことばで書かれた科学のことばは、木の芽のようにやはらかく、時には金剛石のように硬く光る。賢治の「ほんたう」を求めるこころのひたむきさに打たれ、泣きたいような気持ちになります。いつでも傍に置きたい本です。あまりに深く囚われているのでうまくレビューが書けません。

  • 今でもあえて旧字体、旧かなづかいの編集を貫くのは、その方が作者の意図がより伝わると考えてのことかもしれないなあ。改行、字下げも含めて、まるで絵のようなのだ。やっぱり一番感動したのは「永訣の朝」。高校の時にも読んだが、今読むとまた違った印象を受ける。この詩に「松の針」という続編があるのは初めて知った。

  • 意味をとろうとするとかなり難解。しかし自然、宗教、社会生活とが一体になった世界はわかる。地質、気象、農学の用語があちこちにちりばめられているのが印象的だった。

  • 賢治というフィルターを通っていろいろと濾過された結果のこの純度って言う。純粋性がマジこわい。

  • 春と修羅 序
    これが入り口でいい

  • 資料ID:C0030615
    請求記号:
    配架場所:本館2F文庫・新書書架1(千葉)

  • この本ではないのですが…岩波書店の創刊何十周年記念で発刊された詩集だったのですがここにはなかったので似たような本にしました。闘病中の妹さんへの思いや教え子との別れなど、心暖まる詩がよかったです。

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プロフィール

大正・昭和時代の詩人・童話作家。岩手県出身。農学校の教師をしながら,詩や童話を書いた。『銀河鉄道の夜』『どんぐりと山猫』等の童話や、詩『雨ニモマケズ』など名作を多数創作。

「2018年 『注文の多い料理店/野ばら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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