山椒魚・遙拝隊長 他7編 (岩波文庫 緑 77-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003107713

感想・レビュー・書評

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  • 山椒魚にひきこもりの本気を見せられた感じ。人間もひきここりになったらこんなんになっちゃうのかな。

  • 特にオチのない短編ばかりだけど、特に「『槌ツァ』と『九郎治ツァン』はけんかして私は用語について煩悶すること」と「へんろう宿」が好きかな。

  • 『休憩時間』
    昔の学生の文学的雰囲気が伝わってくる。

    『遙拝隊長』
    戦争時に事故により、精神に異常を来した遙拝隊長こと岡崎悠一(32歳)。
    戦争が終わった事も知らず、戦争時の軍人のように振る舞う。
    その姿はドン・キホーテのようである。
    近所の人達らは、そんな悠一に時に付き合い、温かく見守る。

    戦後直後には、こういう人もいたかのように思わせる。
    『軍国主義の亡霊』という観点から、黒澤明の『夢』を思い出した。

    このアイデアを元に、戦後に軍国主義を訴える人間の哀しさや軍国精神の非情さを訴えるような長編が書けそうだと。
    そして、そんな長編を読んでみたいと思った。

    『槌ツァ』と『九郎治ツァン』
    昔の村では、階層により両親の呼び方、人の呼び方が違っていた。
    『オトウサン』『トトサン』など。
    この小説は、それをめぐる面白い愉快な話。

  • さらっと読んじゃったので童話的な何でもない話にしか見えないけども、行間を読むのが面白いんじゃないかと。そういう意味で教科書に載せるのに適した作品なのかも。
    ゴーゴリ感。

  • 初、井伏鱒二。山椒魚を読みたくて、読み始めたのだが、個人的に良かったのは、「休憩時間」と「『槌ツァ』と『九郎治ツァン』(以下略」。
    前者は青春のキラキラ少し尖った感じを切り取っている。
    後者は言語学の視点から見るとすごいおもしろい。人をどう呼ぶか。ママパパがいつの間にかお母さんお父さんや、ババアジジイになったりするのはよくあることだけど、暮らし向きの良さで呼び方が変わっていくのは最早見栄。まあ、ママパパって呼んでたのがお母さんお父さんになるっていうのも思春期の見栄かも知れないが。

  • 人生や自然という本質的なものに対して、氏の深い洞察がうかがえる作品群。
    芸術、童話、ユーモア、笑い、哀しみ、ゆるし、別れ、・・・井伏文学のエッセンス満載です。何度読み返したかわかりません。

  • あっと驚くオチが用意されている訳では無い。一言で言えるんなら、文学なんかやってないよ、って感じ。

  • はじめて井伏鱒二を読んだ
    つげ義春と似ていると思った
    つげは影響を受けている?

    山椒魚, 地方, というモチーフ
    生活の機微, みたいなものの情緒を捉える感じ
    ともすれば「ナンセンス」と言われかねないような「軽薄さ」, 苦悩を描く場合でも, 生きられる切実な苦悩として描かれるというよりは, どこか戯画化されて描かれるかんじ

    memo
    ●井伏鱒二(1898-1993, 広島生まれ)
    ・地主の子, 5歳で父が他界, おじいちゃんっこ
    ・早稲田大学, 教授と衝突して中退
    ・1924, 佐藤春夫に師事
    ・1929, 山椒魚 発表 (31歳)

    ・明治維新の子・孫世代
     ・おくれて近代化する地方
      ・井伏が上京したときのショックは, 現代よりすごかったはず, 前近代から近代へのタイムスリップのよう?
     ・民主主義, 俺たちでも国を変えられる, という熱がまだ残っていた?? 熱くなりすぎて焼き切れる直前の時代??

    ・1920s-1930s プロレタリア文学(小林多喜二『蟹工船』, 徳永直『太陽のない街』など)の興隆が終わって, 台頭してきた「芸術派」
     ・1912-1926: 大正時代
     ・左翼文学の衰退の原因は, 日本の右傾化に伴う弾圧の結果というひともいれば, 単に読者の需要が変わっただけというひともいる
     ・フォーク音楽も同じ流れ?? 1960s労働者の歌から, 1970s四畳半フォークへ

  • 休息時間 が、伊坂幸太郎エッセイで紹介されていた。

    「少しだけという気持ちで読みはじめてみたら、これが本当に僕好みのお話で、(図書館で)結局立ったまま、最後まで読み切ってしまった。-十代の頃、友人の発言を受け、「それよりも面白いことを言えないだろうか」「気の利いたことを言ってやれないだろうか」と頭を絞った経験は僕にもあって、それはこの小説の状況の真剣さや馬鹿馬鹿しさと似ているようにも感じた。」

    (『3652』伊坂幸太郎エッセイ集 2003年筆 p.101
    より)

  • 自分もそうなのに気付かずに言っているところが面白かったですね。

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著者プロフィール

井伏鱒二 (1898‐1993)
広島県深安郡加茂村(現、福山市加茂町)出身。小説家。本名は井伏満寿二(いぶしますじ)。中学時代より画家を志すが、大学入学時より文学に転向する。『山椒魚』『ジョン万次郎漂流記』(直木賞受賞)『本日休診』『黒い雨』(野間文芸賞)『荻窪風土記』などの小説・随筆で有名。

「2023年 『対訳 厄除け詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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