雪国 (岩波文庫 緑81-3)

著者 :
  • 岩波書店
3.42
  • (30)
  • (47)
  • (105)
  • (11)
  • (6)
本棚登録 : 612
感想 : 76
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003108130

作品紹介・あらすじ

頑なに無為徒食に生きて来た主人公島村は、半年ぶりに雪深い温泉町を訪ね、芸者になった駒子と再会し、「悲しいほど美しい声」の葉子と出会う。人の世の哀しさと美しさを描いて日本近代小説屈指の名作に数えられる、川端康成の代表作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著作権の期間を抜けると出版ラッシュだった 川端文学、中国で商機 「雪国」だけでも十数社から | 毎日新聞(有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20230221/dde/001/040/033000c

    「雪国」舞台に思いはせ、ゆかりの地巡る 川端康成没後50年、新潟・湯沢 | 新潟日報デジタルプラス(2022/6/10 会員記事)
    https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/72705

    川端康成の「雪国」異なる展開も構想か 残されていた創作メモ | NHK(2022年4月1日)
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220401/k10013562811000.html

    雪国 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b249317.html

  • 初めて「雪国」を読んだのは高校生の頃。
    当時は芸者と高等遊民とのだらだらしたやり取りや、しょせん芸者遊びを描いただけの哲学的慧眼も起きない薄っぺらい内容だろ、とも考え嫌悪感を感じた。こんなものが日本の代表作として海外等で取り上げられていいのか、と。

    その後年月を経て、私も少しは人生経験を積み、川端がこの作品を書いていた年齢(30代後半)になって、改めて再読した。
    正直に言うと、印象はかなり変わった。
    特に私が引き込まれたのは、島村が初秋に温泉街を再々訪して以降の展開。紅葉の頃を迎えて木々が色づき、虫の声が高まって次第に小さくなり、やがて山の上から雪化粧が始まり、初雪を迎え、冬の冷たさが広がっていく… それらの風景の変化に呼応するように、島村や芸者の駒子の心象や距離感も微妙に変化していく…
    初読時はだらだらした描写にしか思えなかったのが、一文一文の深い“あや”が一つの織物を織り上げるように場面を構成しているのに(今さらながら)気づき始めた。
    一つの織り目だけを凝視していては、布としてもつ“やわらかい感覚”は見えてこない。言葉を追うだけではダメで、言葉のもつ“まわり”の感覚を汲む、ということだろうか。したがって、言葉の字面の意味しか教わっていない高校生では完全読解は難しく、その語彙の“周囲”を読み解く力(人間的成長とも言おうか)が求められるのだろう。

    それにしても私の高校時代の第一印象、今読むと青臭いですねー。
    この作品は何回も読むことで印象が深まる小説。だから初読時の印象が悪かった人も、しばらく置いてからの再読をお勧めします。
    私も新たな発見を求めて、さらに十年くらい置いてから再々読しようと考えています。
    (2008/1/18)

  • ノーベル賞作家の作品をとやかく言う資格はないけど、各々のシーンの景色や心情の描写は流石素晴らしい。全体の構成がちょっとちぐはぐな感じがするのは、この作品の成り立ちから言って仕方がないのだろうか。

  • 主語、目的語、時間経過、場所の変化、などいろんなものが省略されているので、ちょくちょく戻らないと筋が追えんかった。。
    最後の方の、『いい女だ』と、言われて駒子が怒る場面がよく分からず、ネットで調べていろんな説があることを知った。自分の想像が定説のようではあった。

    P32
    しいんと静けさが鳴っていた。

    シーン、という擬音語は手塚治虫の発明と昔テレビでやってたけどウソだったんやな。。

  •  作者あとがきにある「日本の国の外で日本人に読まれた時に懐郷の情を一入(ひとしお)そそるらしい」というのは、まさにこの作品が支持される理由の筆頭なんだと思う。
     私は東京生まれ東京育ちだけど、『雪国』の情景に何故かノスタルジーを掻き立てられて、懐かしいような切ないような悲しいような、そんな気分にさせられた。そういう、田舎育ちの人も都会育ちの人も、老いも若きも、日本人が心のどこかに持っている「ふるさと」という概念を美しく描き出し、懐郷の思いを揺さぶる作品であるからこそ、多くの人々の心を強く打ってきたんだと思う。

     他の川端作品と同じようにストーリーは特になく、ただ、一瞬一瞬の情景の美しさ、感情の美しさを切り出して、絵画のように描き出してる。
     ストーリーを追おうとするとそっち方面の情報量が少なすぎて大変なので、話の状況把握に労力を割くよりも、そのページのそのシーンをそのまま映画のワンシーンを見るように楽しむのが一番良いのかな、と思う。

  • 本を美しいと感じたのは初めて、
    風景描写が美しい。
    このような感受性に鳥肌が立つ
    絵の世界のようであり、現実感も漂わせる。

    景色に心動かされ悠々自適に暮らす島村、
    めいいっぱいに雪国に生きる駒子、

    二人のギャップとしんしんと流れる雪国の時間が物語を形作る。

  • 駒子も島村も水面下ギリギリのところで何かを堪えているようなところが歯痒かった。
    20代のころに読んだ『伊豆の踊り子』はよくわからなかったが、今作は感じるところがいろいろとあった。歳をとったからなのかも。『伊豆の踊り子』読み直そうかしらん。

  • 列車の窓に映る葉子や、窓の外を流れていく風景、鏡に映る駒子、火事場の炎など、目に浮かぶような視覚的な描写が印象的。会話は、噛みあっていないようで実はつながっているらしい。

  • 初めは古臭い物語と思って読み進めていたが、何気ない出来事の連続に引き込まれていき最後の火事で大団円になり、物語は終わった。やはり日本文学としての傑作だと思う。

  • なんと寂しい話だろうかと思った。
    この物語に登場する人物は皆どこか空虚でそして、それをどこか受け入れていて、諦めている。すべては「徒労」で、秋に死んでいく虫たちのような心境で生きているように感じた。
    豊かで美しい情景の描写が、人物の寂寞とした心象を浮き彫りにして、ゾクゾクと迫ってくるものがある。

    巻末に川端康成の略年譜が載っていた。
    彼は幼くして家族を次々となくして孤独な子ども時代を送っている、そして72歳になって自殺。
    ノーベル賞をとった偉人として知られているが、つらい人生だったのかもしれない。

  • 人間は薄く滑らかな皮膚を愛し合っているのだ

  • 有名な本なので読めてよかった。雪国の舞台は湯沢温泉だそう。行ってみたいな。
    表現がやっぱりすごいきれいでノーベル賞をとってるくらいだからすごいなと思った。話も最後の急展開が、それまでののんびりな雰囲気とギャップがあって引き込まれた。

  • 川端康成の代表的な長編小説です。
    川端康成といえば当時先進的な芸術活動を行っていた「新感覚派」の代表的作家であり、本作も新感覚派的な表現が多数使われています。

    基本的に川端康成は、知名度がありますが、読みやすい作家ではないと思っています。
    それというのも氏の魅力である多彩な表現技法によるもので、一つの場面を描写するために詩的な、比喩的な表現が多数用いられています。
    それはある種のクイズのようであり、文章に没頭することができなければ、読んでも頭に入ってこずに挫折する可能性があります。
    川端康成の表現がはまれば、目下広がるのは雪国の温泉宿と、そこで出会った芸者との物語ですが、基本的に脳を回転させながら読まないと筋すらもわからなくなるため、脳を休ませるためとか、静かな時間を持つため読書でも、という方ではなく、趣味が読書というくらい読書に気合を入れられる方向けの作品だと思います。

    とはいえ、川端康成の作品は100%理解して読んでいる方は、研究者でも無い限りほとんどいないと思うので、わからない表現はわからないとして、わかった気になりながら読むのが正しい楽しみ方なんじゃないかなと思います。
    訳書を読んだことが無いのではっきりと言えないですが、川端康成の文章は日本語でないと書けないと思っています。
    また、いくらうまく訳せたとして、その内容を読んで、情景を思い描くことができるのもまた、日本で育った日本人だけしかできないと思います。
    "雪国"は、川端康成作品の中では、比較的読みやすい方なので、是非手にとって、日本語の多彩さ、美しさを読んでみてほしいと感じました。

    主人公は「島村」という男性です。
    彼が、汽車で雪国に向かうシーンから物語が始まります。
    有名な「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」の書き出しの場面ですね。
    彼は雪国に来て温泉宿に滞在するのですが、その間は基本的に顔見知りの芸者「駒子」と、一緒に過ごします。
    なお、島村は妻子持ちで、駒子も芸者であり、彼女の面倒をみる存在が示唆される場面があります。
    また、直接的な肉体関係の描写はないものの、二人は幾度も同じ夜を過ごしています。
    駒子には「行男」という幼馴染がおり、彼の治療費のために芸者になったという描写がありますが、一方で、二人の間に特別な関係があったかについては、そういう噂を耳にするものの、駒子は否定します。
    基本的にはそういう直接関係や、目的、感情を書かず、ただ、情景描写、行動の機微で表現されています。
    突然、爆発したように行動するシーンがあるのですが、これまでの二人の間を読んでいながらも、読み溶けていない場合、その行動の意味がわからないと感じると思います。
    そういった不可解さも含めて楽しみ、2度、3度読むことで理解が深まっていく作品だと思いました。
    読めばきっと糧になる作品です。

  • 小説というより詩の印象。全編に散りばめられた"雪国"の抒情に旅愁を感じるだけでも一読の価値があるが、登場人物の内面を探るとなるとさっぱりで(台詞も敢えてファジーになっている)、どう味わうかは読み手次第。今日この古典小説を手に取るのは、世界的評価の高さゆえ。読後ピンとこなかった人は、三島由紀夫など著名人によるレビューを読む方が面白いかもしれない。

  • 冒頭、トンネルを越えてから汽車から降りるまでの風景や感情の描写はほんとうに綺麗だと思った。

    けれども、読み進めていくうちに、「徒労」を負って生きること、清らかなものを手に入れることに執着しながら変化と呵責に苦しむことがなかなかずっしり重苦しくて疲れる。

    終盤の方の解釈は私には少し難しかった。

    「雪国」を題材にした論文は数多ある。それらを片手に、あまり感情移入せずに読むともう少し作品を味わえたかもしれない。

  • 女の心の機微が態度に現れているようで、そうでないような、裏返しなようで、真に現れているような部分が描かれているように感じた。

  • 文芸懇話会賞

  • 雪の冷たさや輝きが自分の目で見るよりも美しく感じられる。
    やっぱりすごい。

  • 私がいまいち理解のセンスに欠けているのか、名作と言われる所以がわからん。

  • とても綺麗、な一作。

  • ★3.8くらい

    一度は読んでおくかと初川端康成
    凄く読みやすい
    話の設定などはあまり好きじゃないのに
    最後まで読んでしまった
    読ませる力がある

    短い文でとても印象的な表現をする
    夜の底が白くなった

    天の川の描写が美しい
    他の作品も読みたくなった

  • 冒頭の文章が有名な雪国

    とりあえずよんでみたが
    純文学らしさ的なものはとりあえず感じられた

    現代的な小説をよんでいては
    であうことはないであろう描写がたくさんある
    みたいなことはわかったけど

    やっぱりよくわからん

  • 風景描写と芸者とのやりとりが多い。まだこれが書かれた時代は江戸時代の本を読む週間が残っていたのか、と思った。

  • 風景と女性の描写一つ一つが美しい。

  • 風景描写が素晴らしいです

  • H27.6.26~

  • 普段,文学に触れない自分であるが,読んでみて「なるほどこれが文学か」と感じた.美しい.文章は芸術たるものであるのだ.

  • 自然の美しさの表現がすばらしくてうっとりなのだけれど、弱い立場の人が恋に苦しんでいるのを相手がぼさっと見ているような筋立てはどうしても苦手なのだった。本当はボンクラじゃないのかもしれないけれど、そんなの知るか、である。川端康成の文章をもっと読みたいのだけれど、何を読むべきか...

  • 雪国の中でのしぃんとした風景佇む中での男女関係の話。当時の越後湯沢の情景と、温泉産業に携わる女性の姿が鮮やかに記載されていたかと思う。登場人物の心模様は淡白に記載されているが、後半にいくにつれ、駒子と葉子の間柄や、それを見つめながら、妻帯者として何もできずにいる島村の様子がもどかしく表現されているように感じた。今と昔とは違うとは思うが、この物語の情景を見に、越後の温泉にふらりと行ってみたい気持ちに駆られている。

  • 正直、文章がうまくない。内容もストリー性に乏しい。島村はごく普通の中年だし、駒子の背景もそんなに薄幸というほどでもなく、同情も湧かない。読んでいて終始退屈だった。終わり方もなぜ?という感じ。駒子をたとえば壇蜜のような色気のある女性でイメージしないと最後まで読み切るのは苦しい。

全76件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川端康成の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×