三好達治詩集 (岩波文庫 緑 82-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003108215

感想・レビュー・書評

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  •  岩波の三好達治詩集が、やっぱりベストなのである。

     ずーーーーーーと大事にしてたのに、ダーリンが部屋を片付けた時にどっかにやってしまった。
     仕方ないので、某出版社のを買ってみたんだが、これがなぁ…。
     したら、某の中古で出てて、ゲット。
     
     心の平安もゲットしたよww

     と、やたらもう盲目的に思い入れのある三好達治詩集なのだ。

     韻を踏み、文語調で、耽美と言われている三好達治なんだけど、実際の切り口はすごくクールだと感じる。
     不倫の末一緒なってというすったもんだの頃の「花筐」にしたって、恋におぼれているようでそれを客観的に見ている冷めた目が常にある。まぁ、だから結局彼女とも別れることになっちゃたんだろうなと推察したりするのである。
     つか、どういう状況だろうが溺れきれない、酔いきれない、その強さと弱さが、魅力なんだろうなと。

     

  • 湖水

    この湖水で人が死んだのだ
    それであんなにたくさん舟が出ているのだ

    葦と藻草の どこに死骸はかくれてしまったのか
    それを見出した合図の笛はまだ鳴らない

    風が吹いて 水を切る艪の音階の音
    風が吹いて 草の根や蟹の匂ひがする

    ああ誰かがそれを知つてゐるのか
    この湖水で夜明けに人が死んだのだと

    誰かがほんとに知ってゐるのか
    もうこんなに夜が来てしまつたのに





    鹿は角に麻縄をしばられて、暗い物置小屋にいれられてゐた。何も見えないところで、その青い眼はすみ、きちんと風雅に坐ってゐた。芋が一つころがつてゐた。

    そとでは桜の花が散り、山の方から、ひとすぢそれを自転車がしいていつた。背中を見せて、少女は薮を眺めてゐた。羽織の肩に、黒いリボンをとめて


    裾野

    その生涯をもて 小鳥らは
    一つの歌をうたひ暮らす 単調に 美しく
    疑う勿れ 黙す勿れ
    ひと日とて 与えられたこの命を


    家庭

    息子が学校へ上るので
    親父は毎日詩を書いた
    詩は帽子やランドセルや
    教科書やクレイヨンや
    小さな蝙蝠傘になつた
    四月一日
    桜の花の咲く町を
    息子は母親につれられて
    古いお城の中にある
    国民学校第一年の
    入学式に出かけていつた
    静かになつた家の中で
    親父は年とつた女中と二人
    久しぶりできくやうに
    鵯どりのなくのをきいてゐた
    海の鳴るのを聞いてゐた


    灰色の鸚

    彼らいづこより来しやを知らず
    彼らまたいづこへ去るやを知らない

    かの

  • 太郎の屋根に雪が降った詩で有名な人だけれど、「昨日はどこにもありません」とうたった詩がとても味わい深かった。

  • 風格があるのに非常にわかりやすい。

  • 私は日本近代の文語詩が好きなのですが、三好達治の詩は別格で大好きです。

  • サウンド文学館・パルナス「三好達治詩集」 朗読・岡本富士太

  • 甃(いし)のうへ がとても好きだ。
    大学生になったときに,母から送られた本。
    母の大学は京都の東山近くにあったそう。
    古刹の甃に桜の花びらがそっと落ちる中,
    「ひとりなる  わが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ 」
    という風情だっただろう,学生時代の母を想う。

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