蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 570
感想 : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003108819

作品紹介・あらすじ

おい地獄さえぐんだで-函館を出港する漁夫の方言に始まる「蟹工船」。小樽署壁に"日本共産党万歳!"と落書きで終わる「三・一五」。小林多喜二のこれら二作品は、地方性と党派性にもかかわらず思想評価をこえ、プロレタリア文学の古典となった。搾取と労働、組織と個人…歴史は未だ答えず。

感想・レビュー・書評

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  • 今の労働環境にも通じるところがある。本作中にでてくる台詞で、慣れこそが一番の弱点。既成概念を捨てろ!このフレーズが心の底まで鋭い矢になって突き刺さっている。

  • 「蟹工船」を再読。「一九二八・三・一五」初読。
    再読してもやはり面白い「蟹工船」である。絵づらが力強く、引き込まれる。
    冒頭の函館港の描写からしてしびれる。臨場感あふれる活写、煙の匂い、港の臭いも漂ってくる、イキのいい書き出しだ。
    そして、凍てつく最果ての北の海。オホーツク海。カムサツカ(カムチャツカ)の陸地がうっすらと遠望される沖合いでの操業。「兎が飛ぶ」、とされる時化の前触れ。「虐使」される男たちの、疲労、絶望。 
    だが、読後、少々の違和感を抱いてもいる。
    労働者達の悲惨な境遇を描く点で、ルポルタージュを読むような読み応えがある。
    だが、闘争のありようを描く場面に至っては、「労働者達よ、かく斗うべし」という労働運動の教科書の如きもの、情宣読物らしき印象を抱いた。舞台背景のリアリズムの一方で、物語の展開は、一種の“ファンタジー”に飛躍しているように感じられてならなかった。
    後世、ルポルタージュ、という手法が確立した。ルポルタージュに徹して「蟹工船」の労働を描く…、という型式で読みたかった、という我儘な読後感もある。

    「一九二八・三・一五」は、小樽と思われる北の街が舞台。件の日付、その深更。大勢の組合活動家らが、一網打尽に警察に連行される。検挙でなく、任意同行の形をとっているが、有無を言わせぬものである。
    凄惨な拷問の描写で知られるらしいが、私は、連行された活動家たちそれぞれの、様々な人物像が印象に残った。息子の活動におびえて日々涙する老母の姿に動揺する会社員。労働条件と生活改善を願って組合に合流しただけで、命を賭す程の覚悟は持っていなかった男の怯え、戸惑い。 
    信念を強く鍛えた者のみならず、そうした、弱き者の姿も描かれているのであった。
    それにしても、労働組合の成員に対して、かくも無法、無茶な暴力がなされていたことに、改めて驚かされる。

    「蟹工船」は、1929年の作。過日再読した「伊豆の踊子」とほぼ同時代に書かれたものである。一高生の甘酸っぱい青春と、表裏に重ねて受け止めると、感慨深い。 

  • 出勤前に読了。
    「一九二八・三・一五」が読みたくて岩波文庫で購入。
    買って良かった。

    「蟹工船」は2度目。1度目よりもどうにも身につまされる気がするのはきっと最近のわりと酷目な仕事の状況のせい。
    方言ゴリゴリの台詞を読むのに全く苦労がないのは私も北の方の出身だから。多喜二を読むようになってそっちの出身で良かったなって思った。違和感なく頭に入ってくるのは有難い。
    実は角川文庫版も持ってるので少し時間を置いて3度目にいこうと思う。

    肝心の「一九二八・三・一五」。わざわざ岩波で買った甲斐はあった。好き。
    拷問がまあ酷い。語彙力が貧相だからそれくらいしか言えないけれど本当に酷い。こんなことがまかり通るような時代が今とそれ程隔てなくあったという事実に戦慄する。
    時代がそうさせた、という感じがしなくもないけれどよくもまあこんな公権力と闘おうだなんて思えたな、と。そして闘えたな、と。

    やっぱり感想は得意じゃない。

  • 不当に検束され、歩くと目まいがするほど拷問をされて帰ってくると、渡は自分でも分るほど新鮮な階級的憎悪がムチムチと湧くのを意識した。その感情こそは、殊に渡たちの場合、マルクスやレーニンの理論を知って正義的な気持から運動に入ってきたインテルゲンチヤや学生などの夢にも持てないものだ、と思った。「理想から本当の憎悪が虱のように湧くかい!」


    作者が望みをかけた日本共産党も本意か不本意か政策もろくに出せない烏合の衆のような体たらく。世界的にみても共産主義自体が資本主義の前に鳴りを潜めざるを得ない状態で、共産主義という理想論の破綻もいまでは常識。結局、人間みんな自分が一番。みんな横並びでハッピーな世界なんて土台無理。

  • 「蟹工船」と「1928・3・15」が収録されています。
    「蟹工船」は船の「蟹工場」という意味らしいです。雑夫や漁夫たちは考えられないほど凄惨な生活を送ります。もはや人間的な生活などといえない「過酷」以上のもの。人間の命さえなんとも思わないで、搾るだけ搾ろうとする現場監督。お金をもった資本家と「プロレタリア」との対置。頭でただ理解していたのとは違った生々しい再現を感じました。

    同時収録は、共産党一斉検挙事件を著した「1928・3・15」。
    こちらを読んで事件について知りたかったので、あえて岩波文庫版をチョイス。国家権力がいかにして共産主義者を叩いてきたか。それは体制側が「共産主義」を恐れていた証拠。警察署でのすさまじい拷問をとおしてなされる話の展開が印象的です。
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    ただ、いまの時代背景とこの作品がなぜ安易に結びつけられて語られるのか?わかるんだけどわからなかった。共感を得ることはできても、そこには比べものにならない大きな大きな壁が立ちはだかっているような。でも、こういったことを知り、教訓にしていくことは大切だと思います。
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  • 歴史の教科書に登場する本ですので、気になってました。
    弱い者達達が夕暮れ、更に弱い者達を叩くような劣悪な労働環境の描写を通して、名もない労働者たちの団結を焚き付けるかのような印象でした。
    短く、方言そのままで、臭そうな表現は、共産主義への共感と資本主義への反感を高めるための計算的思惑だったのかなとも思えて、当時はそういったところが言論弾圧される口実になったのでしょうか。


  • メモ
    ・独特な言い回しに苦戦
    ・資本主義と帝国主義の関係
    ・赤化が歴史で習ったようなマクロなレベルでなく、一人一人の労働者から見たミクロなレベルで描かれている(教科書で学ぶのとはやっぱりちがう)

    ・はじめは、皆同じように不満を抱いているのに、資本家に対して何も行動を起こせず、過酷な労働環境を受け入れ、病を抱えていく労働者たちに対してもどかしさを感じた。しかし、そのように思うのは私自身が「資本主義」と「社会主義」という枠組みを当然あり得るものとして認識、学習しているから。当時の労働者たちにはその知識が欠けていた。学びの大切さはここにあるなと。(→選択決定のプロセスに大きな影響)
     また、不満を抱く労働者のなかでもヒエラルキーが存在し、その異なる階層のうち複数が強調して動くときに集団は大きく動くことをストライキが示していた。同時に、社会運動の匿名性の重要度を労働者たちが身をもって経験する点に情報の流入を統制する政府の大きな力を実感した。

  • やるせなくなった
    辛い
    そんなに辛い労働環境があったなんて

  • 蟹工船、こんなに短い作品なんですね!
    でも普段使わない言い回しや言葉に悪戦苦闘…

    とにかく泥臭く暗ーい…
    こんな底辺の働き方が、日本にもあったんだ…

    帝国/軍国主義に洗脳され、日本国万歳という気持ちから、反抗など考えても見なかった彼ら。
    それでも劣悪な環境下、”ちくしょう”という気持ちがどんどんつのる。労働者達が起こした行動とは。


    一九二八…は蟹工船より登場人物が明確で読みやすかった。ただ拷問の描写はキツかった…
    小樽であった赤狩りの事実をもとに書かれた作品。

  • かなり政治的なところがあるので今まで遠ざけていたが。思い切って読んでみることにしました。かつて日本にあった理不尽かつ残酷な労働環境の実態がありありと伝わってきました。こういったプロレタリアートの考え方は100%賛成は出来ませんが、そうでなくとも楽しめる(?)作品です。

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著者プロフィール

1903年秋田県生まれ。小樽高商を卒業後、拓銀に勤務。志賀直哉に傾倒してリアリズムの手法を学び、28年『一九二八年三月一五日』を、29年『蟹工船』を発表してプロレタリア文学の旗手として注目される。1933年2月20日、特高警察に逮捕され、築地警察署内で拷問により獄中死。

「2008年 『蟹工船・党生活者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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