独房・党生活者 (岩波文庫) (岩波文庫 緑 88-4)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003108840

作品紹介・あらすじ

監獄より愛をこめて!俺は南房No.19共犯番号セ‐63、囚人いかに生くべきか。笑い満載のオムニバス「独房」と伏字に削除で満身創痍の遺作「党生活者」。共産党大弾圧時代の党員は工場へ隠処へ街頭へ-その苛烈な日々。闘う多喜二の東京小説。

感想・レビュー・書評

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  • 小林多喜二の遺作である党生活者収録。
    独房は小林多喜二の実体験かな。
    党生活者では党と国の対比である物として扱う、人として扱うという概念が大小いろんな形で表現されてて興味深い。
    なかなか面白かった。

  • ≪党生活者≫

    郷愁や家族への未練を断ち切って、いつ叶うやもしれぬ
    『想い』のために戦う主人公たち。
    ハラハラドキドキしながら一気に読み終えた
    アツいなぁ・・・スポ根ものに近い印象をうけた
    蟹工船より後に書いたやつだからか、それよりも
    ずっと洗練されてて読みやすい。
    擬音すくないしw

    『目的を持って生きる』

    「自分」にではなく、「世の中」に対して目標・目的を
    持ってる人なんて少ないよね。(理想くらいはあるケド)
    そういうのを持つ人が政治家になるのかねー、
    ま、そんな人も21世紀には「熱血」で片づけられて
    しまうんだろうけど。。。

    しかし、目的を持って生きることこそが、生命を輝かせる
    エネルギーなのかもしれんね!
    ってこの本を読むと、すっごく感じた

    垣間見える伊藤の恋心(?)も切なかったわ
    あ、終わり方は、いつもの多喜二的な良い感じで☆

  • 2008年の『蟹工船』ブーム時、新潮文庫が発行した『蟹工船』のB面的に収録されていた作品ということで、『党生活者』はある程度有名だろう。

    題名の通り、労働運動・反戦運動の地下党員として、巨大軍需工場で潜入生活を送る者たちの姿を描いた作品である。著者の小林多喜二自身が戦前、非合法扱いだった日本共産党の党員だったこともあり、本作の描写はどれも実生活・実体験に基づいたもので、非常にリアリティに満ちている。

    一方注目すべきは『独房』である。単純明快で、何について書いた作品か、一目瞭然な題名である。

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  • 『党生活者』
     小林多喜二の描く共産党員の非合法な生活。共産主義自体が禁止されていない現代ではなかなか想像しがたい当時の空気感のようなものがひしひしと伝わってきた。小説とはいえ彼の実体験に基づいた話であり、リアリティのある描写が印象的だ。1930年代の日本で共産党員として活動するということがどういうことか、これを読めばよく分かる。地下に潜る自分を心配してくれる母親の様子を気にかけつつも、自身の思い描く理想のために犠牲を顧みない主人公。彼の想いに触れ、100年ほど前にはこのような考えを持っていた人がこの日本にいたのか、と考えさせられた。共産主義という思想が古びて聞こえる今だからこそ、そこから少し離れたところから当時の活動を見てみると学ぶことも多いのではないか。

    『独房』
     この作品では『党生活者』に比べて当時の政治思想はあまり表現されず、代わりに独房での生活を皮肉を込めてユーモラスに描かれている。一見するとプロレタリア文学らしくない作品だったが、この点については共産主義者のあいだでも批判があったようだ(後に付されている蔵原による「解説」を参照)。プロレタリア文学らしい作品を求めていた私には少し物足りない作品だった。

    「解説」
     蔵原惟人による解説は小林の作品に対する評価について学ぶことも多く有益なもので、とりわけ小林の作品には前近代的な要素も含まれているとする論争(「ハウス・キイパア」論争)に関しては個人的に非常に興味をそそられた。2つの作品を読み終えたあと、この解説にも是非目を通してほしい。
     小森陽一による解説は、この改版が出された2010年に付け加えられたものだが、私にはあまり面白いものではなかった。この解説に18ページも割かれているものの、その大半は『独房』や『党生活者』からの引用で占められ、解説というよりは要約に近い印象を受けた(これだけ長いと要約とも呼べない気もするが)。まるで、小学生が読書感想文で文字数を埋めただけのような解説、といった印象しか残らなかった。

  • 「党生活者」は、「蟹工船」と並ぶ著者の代表作であることは間違いない。
    「闘う多喜二の東京小説」という表紙の宣伝文が気に入りました。

  • 「独房」のみ。最初の「また履いている」女性の話からいい掴みになっている。いつの時代もパンチラはある種のロマンですね……(遠い目
    すごく明るい文章が続くかと思いきや、刑務所に行く間にちょっと感傷的な気持ちが見え隠れしたり。この主人公もまた鉄面皮なのかもしれない。
    「党生活者」は読み切れなかったので、また機会を見て再挑戦したい。

  • 解説:蔵原惟人・小森陽一
    独房◆党生活者

  • 「党生活者」は再読。共産党員である私(佐々木)は、非合法活動を続けている。軍需工場の労働者をオルグしたり、ビラ原稿を書いたり日夜盛んに活動している。「連絡」も大変な仕事だ。なにしろ、携帯電話もメールもなかった時代である。仲間との「連絡」は直接会ったり、メモを手交するなどしている。しかも、警察に後をつけられないよう注意せねばならない。また自宅を急襲されないように、帰路回り道をしたり、神経をすり減らすような日々だ。そうした地下活動のピリピリした緊張感が全編に漲っている。エスピオナージ小説のようだ。
    さて、かような地べたを這うような活動を、ストイックに描いているため、「蟹工船」のような“虚構性”(ファンタジーな趣)が希薄であり、その点は好感がもてた。
    終盤、「私」らは、工場の臨時工を組織してストライキを打つべく画策。しかし、その直前、経営側はストライキの計画より1日早く動き、労働者たちの機先を制するのであった。

     「独房」は、云ってみれば党生活者たち版の「塀の中の懲りない面々」のような趣。留置場すぐ近くの家の娘さんが洗濯物を干す。その際独房から見上げると、ズロースの有無が大問題であるという話など、下世話なトピックも多い。息詰るような戦闘的生活というものでなく、その対極にある、日常のやわらかい息遣い、情感がテーマである。「こりゃ、怒られただろうな」と思いつつ読んだ。案の定、解説によると、当時、左翼陣営の一部からこっぴどくお叱り、批判を受けたという。
    「党生活者」と「独房」、併せ読むと、そのふれ幅の大きさに苦笑する。

    余談「…私この前ドストイエフスキーの『死の家の記録』を読んでから、そんな所で長い長い暗い獄舎の生活をしている兄さんが色々に想像され、眠ることも出来ず、本当に読まなければよかったと思っています。」という一節がある。(終章・60p) 「蟹工船」にも、『死の家の記録』への言及があり苦笑した。

  • 登録をし忘れ、今日登録して今日読み終わったような格好になってしまいましたがもう少し日数かけてます。
    電車での移動中と職場での空き時間を活用。

    表題の『独房』が読みたくて新宿紀伊國屋書店にて購入。
    期待通り面白かった。やっぱり文章が好みだと内容がすんなり頭に入って読みやすい。
    なんだか獄中にいる方が呑気に暮らしているように見えてしまう主人公に思わず笑ってしまう。実際、捕まることを心配せずに寝起き出来るのだから自由の身であるよりかは気楽なのだろうな、と。

    一緒に収録されている『党生活者』。読むのは2度目。やっぱり面白い。現時点では小林多喜二の作品で1番好きかもしれない。
    主人公佐々木と同志の須山、伊藤の3人の関係性が好き。
    困難を乗り越え、1つずつ段階を踏み、目的の達成の為に様々な行動をしていく。ストーリーとしても分かりやすくて読みやすい。
    解説の中で引用されていたようなあれやこれやの批評のような小難しいことは考えず、私は単純に物語を楽しみたい。
    シリアス一辺倒かと思いきや、ちょこちょこ笑いを挟んできたり、佐々木と母親との話でちょっと泣かせにきたりと退屈せずに最後まで読める。2度目でも充分楽しめる。それどころかまた違った部分に目がいったりして1度目とは違う形で楽しめる。また少し間を開けて再読したい。
    1度目も思ったが、続編が書かれることがなかったのが本当に残念でならない。

    解説も2本立てでボリュームたっぷり。こちらも読み応えは充分。解説の感想は特に書きませんが、引用された批評の中に唐突に登場した『縮図』、『濹東綺譚』が読みたくなり、手元にある『縮図』を次の移動のお供に決めたことだけ一応書いておきます。

    相変わらず「感想」というやつは苦手。感想というよりかは自分の為の覚書に近いものになってしまった。

  • 『独房』もっと暗い、重苦しい話だと思っていた。明るく朗らかで、自分の信念に負けずに生きる強さを感じる。多喜二はきっと男にも女にもモテたろう。
    『党生活者』社会の戦争への傾倒や、生活の貧困度が増していく具合と共に、佐々木の生きることへの偏りと窮屈さが顕著になってくる。貧困と労働者への戦いと言い乍ら、笠原への経済的・物質的依存が高まっている。折しも、今日の折々の言葉は金子光春の「自身の業の重み」についての話だった。労働組合やストライキの行使など、彼らの社会闘争の上に、今の生活があることも事実なのだ。
    それにしたって、サービス残業とか、長時間労働とか、非正規雇用の突然の解雇とか、経済発展の為に国家事業(本作では戦争、現代では五輪)をやるから寄付金を出せとか、そうしたものへの反対意見の取り締まりとか、90年前に書かれた小説と現在と何が違うのか。

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著者プロフィール

1903年秋田県生まれ。小樽高商を卒業後、拓銀に勤務。志賀直哉に傾倒してリアリズムの手法を学び、28年『一九二八年三月一五日』を、29年『蟹工船』を発表してプロレタリア文学の旗手として注目される。1933年2月20日、特高警察に逮捕され、築地警察署内で拷問により獄中死。

「2008年 『蟹工船・党生活者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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