富嶽百景・走れメロス 他八篇 (岩波文庫)

著者 : 太宰治
  • 岩波書店 (1957年5月6日発売)
3.89
  • (68)
  • (58)
  • (86)
  • (1)
  • (1)
  • 本棚登録 :507
  • レビュー :94
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003109014

作品紹介

太宰治が短篇の名手であることはひろく知られているが、ここに収めた作品は、いずれも様々な題材を、それぞれ素材にふさわしい手法で描いていて、その手腕の確かさを今さらのように思い起こさせる。命を賭した友情と信頼の美しさを力強いタッチで描いた「走れメロス」をはじめ、戦前の作品10篇を集めた。

富嶽百景・走れメロス 他八篇 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 表題作の他、女生徒、ロマネスク、東京八景など10作の短編集。
    太宰の短編はどれも好きだけど、特に印象的なものをメモ。
    『富嶽百景』…最初は富士の一辺倒な姿を横目で見るような様子だった主人公は、茶屋の人々や彼を訪ねてきた人々との交流を通して少しづつ富士の様々な表情に触れ、心を許し始める。富士はそこにあるだけでいい。
    『走れメロス』…学生の時に初めてこの作品を読んだ時はメロス身勝手、という身も蓋もない感想だったけれど、年を重ねてこの直球の友情ストーリーが沁みるようになった。
    『女生徒』…思春期特有の揺れを表現する秀逸さ。この危なっかしい様がまた魅力。
    井伏鱒二のあとがき…太宰とのエピソード。不思議と愛を感じる。

    読む度に違う印象や感想を持たせてくれる作品。何度も読み返したい。

  • 二十年以上前に読んでいたのだが、なんだか無性にもういちど「富嶽百景」を読みたくなって本書を手にとった。ふと再読の思いが募る作品というのは、私には稀である。自分にとって「富嶽百景」がfavoriteであることに気づいた。
    再読。ユーモアがあり、爽やかな明るさに包まれていて、読んでいてハッピーな心持になった。

    この文庫は全10編を収めている。「女生徒」や「きりぎりす」などもあり(いずれも女性の告白体小説)、初めて太宰に触れる人には、親しみやすいセレクションのはず。

    あとがきは、井伏鱒二氏の筆。心憎い。(ご承知のように『富嶽百景』には井伏氏との師弟関係も描かれている。)ここで井伏氏は、初めて太宰青年と出会った頃の思い出を書いている。太宰なる青年から手紙が届くのだが、返事を出さずに居たところ、強硬な内容の手紙が届いたという。
    「会ってくれなければ自殺するという意味のものであった。私は驚いて返事を出した。」とある。
    面白い。

  • 昭和13年の初秋、御坂峠の天下茶屋に赴き、以降、冬の訪れまでの2ヶ月間逗留する。その間宿の娘さんとの交流、太宰のファンと名乗る青年との会話、先輩作家 井伏鱒二との登山に、お見合いなど、いろんなシーンで富士山と関わり、その都度富士山は姿・表情を変える。遊女の一行を見かけた太宰は哀惜の情を抱く。その時の富士は敢然と見守ってくれる大親分のようだと例える。

    僕が最もグッときた一節は次である。
     
    十国峠から見た富士だけは、高かった。あれは、よかった。はじめ、雲のために、いただきが見えず、私は、その裾の勾配から判断して、たぶん、あそこあたりが、いただきであろうと、雲の一点にしるしをつけて、そのうちに、雲が切れて、見ると、ちがった。私が、あらかじめ印をつけておいたところより、その倍も高いところに、青い頂が、すっと見えた。

    富士山を擬人化し、富士にしてやられたと高らかに笑う。ネタ振りからサゲまでを実に闊達な筆致で綴る。何度も読み返してしまう。本書には10編の短編が収録されており、富士山よろしくいろんな貌の太宰が見られる。

  • 富嶽百景・走れメロス 他八篇 (岩波文庫)

    著者:太宰 治

    なんとなく話しは知ってるけどじっくりと読んだ事がなかった為、試しに読んでみました。
    まず「走れメロス」と書いてあったが、一冊丸ごと走れメロスではなく、短編集の一つに走れメロスが
    あったというのが発見でした(苦笑)

    無知ぶりが露呈しました。


    読む前は漠然と誠実かつ友情を描いた作品なんだろうなと思って読みましたが、全然違う印象を受けました。
    簡単に言うとメロスが暴走して王の怒りを買い、妹の結婚を見届けたいが為に友人を身代わりにとの条件で三日間の猶予を。
    本来はまだ先の結婚式であるにも関わらず、メロスの自己中心的な振る舞いのおかげで勝手に前倒し。
    式を挙げ酒も入り満足したのか就寝。

    挙句の果てには寝坊し約束の時刻に遅刻しそうになり一時諦めるという暴挙。
    身勝手極まりない。

    なんとか間に合い、友人も救われ「信じる事」を王にしてやったり。
    しかもすっぽんぽん。

    という自己中の救えない話し。


    私にはこのようにしか感じなかった。
    が、ちゃんと読む事で認識が変わったのでやはり自分自身で読まないとわからないという良い教訓を頂いた作品でもある。


    他、数作の短編があり感想としては凄いネガティブな作風で好きにはなれなかった。
    http://blog.livedoor.jp/book_dokushonikki/

  • 学校の国語の試験で、作家の意図は?という問題がよくありました。
    採点結果を見ると、どうしても納得できないことがよくありました。
    本当に、作家は、それを意図したのでしょうか?
    作家の意図は単純ではないのではないでしょうか?
    走れメロスは、分かりやすいかもしれないし、太宰らしくないかもしれない。
    作品ごとに別々に読むか、作家ごとまとめて読むかは、その人の好みです。
    ただ、複数作品まとめて搭載している本を買うかどうかは、迷うかもしれません。
    富嶽百景だけでも価値はあるし、走れメロスだけでも価値はあると思います。
    両方好きになる必要はないと思いますがいかがでしょうか。

  • 2005.6.21

    第1刷 1957.5.6
    第14刷改 68.5.16

  • 「魚服記」「ロマネスク」「満願」「富嶽百景」「女生徒」「八十八夜」「駆け込み訴え」「走れメロス」「きりぎりす」「東京八景」全十篇。あとがき(井伏鱒二)

  • 太宰の語り口が好きだ。

  • 高校生くらいの頃に何を思ってか古本屋で買ったやつ。確か。
    太宰治はメロスと人間失格が苦手であまり読んでなくて、その他は『御伽草子』とか「桜桃」くらいしか読んでないきがするんだけども、積んどくのももったいないし読みました。

    普通に面白かったわ。「魚服記」なんかは、つげ義春とか萩尾望都らへんが漫画にしてても違和感なさそうなし、「ロマネスク」は強烈に面白かったよ。太宰治は本人の性格もあるんやろうけど、へたれな男性主人公を描いたのが面白いわ。
    しかし「女生徒」はだめやった。あれだけで何日読むのにかかったか。無性に不快になってしょうがなかった。文体がだめ。中身もむり。まじむり。思春期の女の子の心の機微は伝わってくるものの、むり。ダザイはどういう目を少女に向けておったの?
    女性一人称でも「きりぎりす」は面白かったんやけども。

    そんなわけで星の数悩む。魚服記とかロマネスクとか、八十八夜はごこ。女生徒いっこ。富嶽百景、駆け込み訴え、きりぎりすはよんこ。東京八景はさんこ。くらい。メロスは読み返してない。

  • 富嶽百景ー 絶望の淵からの希望の描き方が
    とても素敵で、太宰に目覚めるきっかけとなったお話。太宰っていうと堕落していく様な暗くて湿っぽいイメージを持たれがちだけどこれは
    前に進んでいくお話。太宰食わず嫌いの人に勧めたいな。あ、読まず嫌いか(笑)

全94件中 1 - 10件を表示

太宰治の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヘミングウェイ
有効な右矢印 無効な右矢印

富嶽百景・走れメロス 他八篇 (岩波文庫)に関連する談話室の質問

富嶽百景・走れメロス 他八篇 (岩波文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする