人間失格、グッド・バイ 他一篇 (岩波文庫)

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レビュー : 84
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003109045

感想・レビュー・書評

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  • 最低な男である。いつも人の顔色を伺っているくせに、自分に好意的な人の気持ちは踏みにじる。他人が自分を受け入れてくれないと傷つくのに、自分は他人を受け入れようとはしない。自分から社会に背を向けておいて、社会から拒否されたと言って嘆く。自分の感情にばかり気をとられて、他人の感情を思いやるゆとりがない。自分のことしか考えられない、情死の相手の名前すら覚えていない、そんな男。

    そんな男の告白を、他人事だと切り捨てることができないのは何故だろう。実在したらとても付き合いきれないはずのこの男に、惹かれてしまうのは何故だろう。一人の弱い男が転落していくだけの話なのに、そこに祈りを見てしまうのは何故だろう。

    私の中にも、彼の持つ「非合法」な何かがあるからだろうか? それとも、私は所詮「合法」の人間で、彼――というより、作者・太宰の、血を吐くようなお道化のサーヴィスを、憐れむふりをして楽しんでいるだけなのだろうか? 安全地帯から彼を見下ろして、こんな駄目人間でなくて良かったと、胸をなでおろしているにすぎないのだろうか? そもそも、この告白はどれが事実でどれが創作なのか、どこまでが本心でどこからが演技なのか?

    とにかく無数の「?」が頭に浮かび上がる。ある場面では主人公の駄目っぷりにイライラさせられながら、別の場面では「その通りだ!」と一緒に叫びたくなってしまう。読んでいて、こんなに心を掻き乱される小説は、そう多くない。しかも、どうしようもなく泥沼な心理状態を描いているのに、文章としては圧倒的に美しいのだから不思議だ。

    さらに、肝要な点が語られていないのも不思議だ。なぜ主人公がかくも執拗な対人恐怖に苛まれることになったのか、父との確執や幼少時の性的虐待に鍵がありそうなのだが、それらについては不自然なほど僅かにしか語られていない。書かなかったのか、書けなかったのか。赤裸々に告白しているようでいて、核心に触れることは決して許さない、そんなミステリアスな所にも惹かれてしまう理由があるのかもしれない。

    物語の終盤に主人公が達した、「ただ、一さいは過ぎて行きます」という心境は、絶望なのか、それとも救済なのか。それは読者が自分で判断するしかない。この作品は太宰の事実上の遺稿だというが、ここまで人生を捧げなければ人々の心を震わせる傑作は書けないのだとしたら、文学とはなんと激しく凄まじいものなんだろうと改めて思う。それはともかくこの作品は、極めて技巧的な優れた小説でありながら、小説という枠を超えた特殊な代物であるように、私には感じられた。

  • 『人間失格』
    文体も展開も分かっているのに、この人間臭さに惹かれるようにふと手に取ってしまう。もはや喜劇。

    『グッドバイ』
    未完の絶筆。主人公・田島は妻子を持ちながらも酒と女に溺れ、愛人を10人近く持つ。ある日気持ちに変化が生じ、愛人一人一人と縁を切り、真面目に生きる決心する。『人間失格』が陰ならば、こちらは完全に陽。田島のダメ男っぷりが光ります。舞台にしたくなるほどのテンポの良さ。絶筆が悔やまれる。

  • 伊坂幸太郎のバイバイ・ブラックバードは、太宰のグッド・バイを読んでから読んだようが良かった。
    人間失格は虚しくて、妙に優しい余韻が残る。怖い…という気持ちは、なんとなく分かる。

  • 私は太宰さんタイプの人間にはならない!と願いたい。読んでよかった。

  • 太宰より芥川が好きです。

    初めて太宰作品を読んだが、
    一作読んで結論を下すのは
    どうなのかとも思うが
    個人的に太宰の人間性は嫌いです。

    まず女癖。
    そして、所々共感も覚えるが
    自身の在りどころの朧げさ。

    幼少期の女中などから受けた
    性的な虐待も育ちに
    影響しているのかもしれないが
    被害妄想にも近い女々しさが不快。

    ゲスが極む世騒がせバンドに似た
    腹立ちを覚えた。

  • 著者:太宰治
    通し番号:緑90-4
    刊行日:1988/05/16
    ISBN:9784003109045
    文庫 在庫あり

    「恥の多い生涯を送って来ました.自分には,人間の生活というものが,見当つかないのです」――世の中の営みの不可解さに絶えず戸惑いと恐怖を抱き,生きる能力を喪失した主人公の告白する生涯.太宰が最後の力をふりしぼった長篇『人間失格』に,絶筆『グッド・バイ』,晩年の評論『如是我聞』を併せ収める. (解説 三好行雄)
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b249344.html

    【目次】
    目次 [003]

    人間失格 005
      はしがき 006
      第一の手記 010
      第二の手記 024
      第三の手記 069
      あとがき 131
    グッド・バイ 135
    如是我聞 169

    解説(三好行雄) [207-216]
    編集付記 [217]
    岩波文庫(緑帯)の表記について [218]

  • やっと読んでみた。共感。

  • 他人の視線に怯えて生きている主人公。
    怯えるあまりに、人生の歯車を狂わせて行く・・・。

    ・・・この文章を書いていても、どんどん気持ちが落ち込んでいく↓
    気持ちが上がり気味の時にまたじっくり読もうと思います。

  • この本を読んだ後、非常に戸惑いました。
    私はこの本から一体何を感じ取ったのか、頭の中で整理しようとしても、何故かうまくできません。この物語の主人公はただ、「人間」という到底理解できるものではない存在に対して、怯え、暮らしていただけなんです。それだけなのに、得体のしれないモヤモヤが胸に引っかかります。きっとこれも「人間」の仕業なのでしょう。

  • 今まで太宰といえば『人間失格』で、暗いというイメージだったしあまり読みたいと思わなかったけれど、試しに読んでみようと思って手に取りました。思った以上に読みやすい。でも内容はずっしりきた。太宰もこういう気持ちで人生を過ごしていたのかと衝撃をうけました。そしてまったく異なるグッド・バイ。未完なのが残念、続きはどうなる予定だったんでしょう。書かれているところはとても面白いし太宰にしてはさくさく読めるなあという感じでした。如是我聞、かなりざくざくと書いていてすごい面白い。こちらも未完なんだ…

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著者プロフィール

1909年(明治42年)、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東大仏文科在学中に非合法運動に従事し、やがて本格的な執筆活動へ。35年、「逆行」で第1回芥川賞の次席となり、翌年には処女作品集『晩年』を刊行。以後「走れメロス」「斜陽」など多数。

「2018年 『津軽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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