晩年 (岩波文庫 緑90-8)

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  • 岩波書店 (2024年6月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (446ページ) / ISBN・EAN: 9784003109083

作品紹介・あらすじ

「私はこの本一冊を創るためにのみ生まれた」――〈太宰治〉という作家の誕生を告げる小説集であると同時に、その最高傑作とも言われる『晩年』。まるで散文詩のような冒頭の「葉」、〈自意識過剰の饒舌体〉の嚆矢たる「道化の華」他、日本近代文学の一つの到達点を、丁寧な注と共に深く読み、味わう。(注・解説=安藤宏)

感想・レビュー・書評

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  • 岩波文庫から『晩年』が出版されたので読んでみました。岩波文庫は注釈が付いているので読みやすかったです。注釈なしの他の文庫で挫折して途中で放り投げた人は、再チャレンジにいいと思います。

    さて『晩年』ですが、太宰治の最初の創作集で15作品を収録。巻末の解説には、名だたる文人たちと解説者が、『晩年』が最も優れている作品集としてあげています。自分は、新潮文庫の『きりぎりす』の方が面白い短篇がよくまとまっていて好きなのですが、これ如何に?とはいえ何作か良かったものもありました。

    『思い出』
    主に幼少期から少年時代にかけて、自らの人生を振り返る自伝的小説。『津軽』で鍵となるタケが登場します。それにしても、自然派と言えば聞こえはいいですが、壮大な暴露大会と化しているのは、当時の親族はどう思ったのか気になるところ。

    『地球図』
    キリスト教布教に信念を抱くローマからの使徒を、新井白石らが審問する歴史小説。当人の心情を考えると、とても悲しく思いましたが、当時のキリスト教の背景にある、闇の部分を考えると、これも仕方ないことだと思いました。

    『道化の華』
    太宰治の心中事件を、後に『人間失格』の主人公である大庭葉蔵と、僕という人物が客観的に外から評しながら語りかける様は、ロシア文学やフランス文学の作者から読書へのツッコミのようで面白い。あと、なぜ自分は小説を書くのだろうと自問するところが好き。

    『猿面冠者』
    小説を生み出す苦しみを、ギャグを織り交ぜながら書き連ねる様が面白い。別に書かなくても牛乳配達でもいいじゃないかと自虐的に語っているところが面白い。

    『彼は昔の彼ならず』
    貸家に入居してきた住人が、仕事もせずに家賃滞納したまま居座るダメ人間に翻弄される話し。この男、嘘ばかり言っていて、森鷗外『青年』のモデルは自分だと言ったところが面白かったです。

    あと、『魚服記』『猿ヶ島』『ロマネスク』も秀作です。『雀こ』は津軽弁が、さっぱりわからなかったです。

    追記:
    岩波文庫で長年放置されていた太宰治ですが、ここにきて刊行ラッシュになる模様。

    (予定)
    『富嶽百景 女生徒 他六篇』(2024年9月)
    『走れメロス 東京八景 他五篇』
    『十二月ハ日 苦悩の年鑑 他十二篇』
    『惜別 パンドラの匣』
    『ヴィヨンの妻 桜桃 他九篇』
    (既刊)
    『右大臣実朝 他一篇』
    『津軽』
    『お伽草紙 新釈諸国噺』
    『斜陽 他一篇』
    『人間失格 グッド・バイ 他一篇』
    『晩年』

    つまり、既刊の中でも書体の古い『富嶽百景 走れメロス 他ハ篇』の収録作を分けるみたいです。ワイド版も、そのうち分けるのでしょうね。

  • 1番印象に残ってるのは、道化の華。
    まさか、小説の途中途中で、太宰自身の考えが入ってくるなんて夢にも思わなかった。
    今まで小説を読んできた中で初めてのことだった。

  • 魚服記、雀こ、道化の華、彼は昔の彼ならず、ロマネスクが好きだった。
    魚服記は晩年の中で一番好きだった。考察の余地を与えてくれる文章でありながら無駄な部分が一切ない。日本神話のような幻想的で格調高い雰囲気は完成されきっており、色々な考察をしなくても作中の雰囲気を感じるだけで好ましく思える小説。父とスワの関係性やスワの行末などは本当に微かに匂わせるだけの表現になっていて、物語の幻想性を高めている。そこの塩梅がとても良かった。
    道化の華の始まりは何ともない文章で普通に読んでいたのだが、途中で登場人物達が険悪な雰囲気になり、読むのに少し嫌気がさしてきた時に筆者の『僕』が出てきてつらつらと散々言い訳を並べてくる。これがめちゃくちゃ面白い。筆者が介入してくるタイミングも丁度良く、だれてきた瞬間に梃入れがなされるので手段は斬新なのに安定している。思い出、魚服記、猿ヶ島など道化の華までの短編はスタイリッシュで完成度が高かったのに、急に道化の華でグダグダしてくるのがとても面白い。
    太宰治らしさを詰め込んだような作品集だと思った。

  • 初の太宰治として、処女作である「晩年」を読了。

    想像していた太宰治に対するイメージは、もっと弱々しくて執拗に嫉妬深く、すぐ自殺しようとする、くらいにしか思っていませんでした。

    この作品を読んでみて、全体に漂う土着的な独特の妖しさと、二重三重に俯瞰して自身を見ているペシミスティックな思考回路が複雑で、理解を拒むような文体が素晴らしかったです。

    生と死と諦めと希望と、ユーモアが入り混じった、全体を通してヒリヒリとした緊張感が素晴らしい。

  • 解説でかなり褒められているが、自分は退屈に感じて、面白さがわからなかった。

  • “「ほんとうに、言葉は短いほどよい。それだけで、信じさせることができるならば。」”(p.11『葉』)

  • 「葉」がとくにすき

  • 太宰治の20代前半迄の短・中編の傑作集である。
    なぜ『晩年』としたのかわからない。
    彼は若い剥き出しの自尊心と優越意識、稀有な才気で心底を晒す。
    地方の大地主に生まれ才能に恵まれて育つが、青年期の過剰な自意識を持て余す。
    最初に登場する和服姿の肖像写真には稲荷狐の前で
    野望を憂鬱で包む心が映る。
    構成する各作品はそれぞれ人生への猜疑と鬱屈に満ちている。

    入水自殺で溺れる女の手を振り払う、女は別人の名を呼んで死ぬ。
    彼は心を許せる友も恋人もなく孤独であった。

    各編のどの話にも特別なものは感じない。
    表現が殊更優れているとも思わない。
    才能迸る迫力よりも絞り出す苦しさを感じてしまう。
    同調できるところもあるがギラついた至高欲求に気圧される。
    全うを拒む人生は若者の共感を呼ぶが、過敏な感性や生き様はともに隔たりが大き過ぎて、自分とは照準が合わない。

    気分転換に読んだが、そうはならなかった。

  • 初めての太宰治、岩波文庫でした。
    正直な感想は言葉遣いや言葉そのものも難しく、ひとまず読み切ることを目標にしておりました。
    注釈も多くついているので、じっくり1章を読むことが必要だと感じました。
    ただ、昨今のスラーっと読める本も素晴らしいですが、後世に残っている本や語り継がれる本はこういった文学なのだと感じました。

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/716698

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著者プロフィール

太宰 治(だざい・おさむ):1909年、青森県北津軽郡金木村生まれ。中学の頃より同人誌に習作を発表。旧制弘前高校から東京帝国大学仏文科へ進学、中退。1933年、太宰治の筆名で「列車」を発表。「二十世紀旗手」「女生徒」「富嶽百景」「お伽草子」「ヴィヨンの妻」「斜陽」ほか代表作多数。1948年、筑摩書房の雑誌「展望」にて「人間失格」連載。同年6月、同作最終回の掲載をみることなく、玉川上水に投身。

「2025年 『人間失格』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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