日本唱歌集 (岩波文庫)

制作 : 堀内 敬三  井上 武士 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 83
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003109212

作品紹介・あらすじ

明治以来、敗戦に至る80年間に歌い継がれてきた多くの唱歌の中から、150余篇を選んでここに収める。「蛍の光」「ふるさと」「鳩ぽっぽ」「春がきた」など世に広く親しまれてきた文部省唱歌をはじめ、「荒城の月」「鉄道唱歌」「美しき天然」「浜辺のうた」「ああ玉杯に花うけて」など、明治・大正・昭和の名歌すべてを集めた。

感想・レビュー・書評

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  • 明治・大正・昭和(戦前まで)の唱歌のうち、約150篇を収録。ここでいう「唱歌」とは、「楽器に合わせて歌曲を正しく歌い、徳性の涵養情操の陶冶を目的とする教科目」および「その教科において用いられる楽曲」のこと。ひらたく言うと、明治維新に伴って新しい学校制度が導入されたとき、「これからの日本に必要なのは世界的競争力、グローバルな人材だ。そのためには、早期から西洋の学問や文化に触れて、これを身につけなければならない」という空気の中、子供に洋楽の素養を身につけさせるために、学校で用いられた歌曲のことを指す。

    だから、平成の私たちの感覚からすると少し意外だが、少数の日本民謡やわらべうたを除いて、日本唱歌とは基本的に洋楽なのである。例を挙げると、「蛍の光」「あおげば尊し」「故郷の空」はスコットランド民謡、「蝶々」はスペイン民謡、「庭の千草」はアイルランド民謡、「旅愁」はアメリカのオードウェイ作曲の歌を、それぞれ原曲としている。時代を経ると、洋楽を学んだ邦人による作曲が主流になってきて、滝廉太郎の「花」「荒城の月」「箱根八里」「お正月」などは特に有名である。

    もちろん歌詞は日本語だが、「和魂洋才」のスローガンを掲げて創作されただけあって、特に明治時代の作詞者には、今となっては信じがたいほどのビッグネームが多い。佐佐木信綱(歌人・国文学者。代表作「夏は来ぬ」)、武島羽衣(詩人・国文学者。代表作「花」)、土井晩翠(詩人・英文学者。代表作「荒城の月」)、等々。いわゆる文部省唱歌として創られるようになってからは作者名は公表されなくなったが、「朧月夜」「故郷」「冬景色」など、メロディなしでも一篇の詩として成立しうる美しい歌詞が多いのは、明治時代から変わらない。

    現在、音楽の教科書から「唱歌」は消えつつあるという噂を聞く。その真偽のほどは知らないが、「古臭い」「子供ウケが悪い」という理由で忘れ去ってしまうには、あまりに惜しい近代日本の遺産である。かくいう私も、本書に掲載されている曲の中で歌えるものは少ししかないのだが、わずかなりともこの美しい水脈を、後の世代に伝えてゆきたいものだと思う。

  • 今日,お茶屋さんの前を通ったら「今日は八十八夜です.おいしいお茶を飲みましょう」という張り紙がしてあった.家に帰って,その話をして「茶摘」を歌うと,「そんな歌知らない」と子供たちが言う.いつの間にか唱歌の伝統は断絶していたのであった.久しぶりにこの本を開いてみると,「茶摘」は明治45年に初出.それから100年たって,私の中にまだ生きている.

  • 久しぶりに再読。最初に読んだときは多分「青葉の笛」の歌詞が知りたかったのだったと思う。今はネットで検索すればなんでも出てくるけど、当時は、記憶に引っかかってるけど詳細不明なアレ、たまに思い出すと気になる~~みたいな案件は他の人との会話もしくは本の中から探すしかなかったから。

    「青葉の笛」は同年代の友人の中でも知ってる子が一人しかいなくて、自分でも母親が歌ってた以外にどこで聞いたか記憶になく。平家物語の敦盛を歌った曲だとわかったときの目からウロコ感!ていうかそもそも幼児に歌をせがまれて「いちのたにのいくさやぶれ~うたれしへいけのきんだちあわれ~」って聞かせる母のセンスって(笑)

    それはさておいてもこの本は眺めるだけで楽しい。歌詞だけじゃなく楽譜もついてるし。私の年齢で歌える曲が三分の一くらい。明治大正昭和初期まで網羅されてるので、なにげなく口ずさんでた歌が明治時代からあるとか実は凄いことな気がする。すっかり忘れたと思っていても歌詞を見れば懐かしく思い出せます。

    内容も、昔話系、歴史逸話系、国家称揚系、風景描写系、生き物系など(※勝手な分類)バラエティに富んでいて、鉄道唱歌66番まであるのとか驚愕。全部覚えたら東海道線網羅できる仕組み(笑)鉄オタの人に教えてあげたい。

  • 言葉のうつくしさに、思わず口ずさんでみたくなるものばかりでした。

  • 明治から昭和初期までの唱歌をまとめた一冊。明治の唱歌とはsongの翻訳として主に「徳性の涵養」を目的としたものなのだそうだ。ざっと一覧できちょっとした資料として便利なのと、解説の日本唱歌史が勉強になる。
    今日まで歌いつがれている歌も少なくなく……と言いたいところだが、最近では唱歌や童謡を耳にする機会はあまりないかもしれない。歌は歴史・風俗史的価値のある史料とも言え、これから重要度が増して来るだろう。

    かくいう私は、男女関係に関する風俗の参考にならないかとこの本に目を通したのだが、明治政府のプロパガンダと小ブルジョワの皇国意識のもと作られていた格調高い唱歌のこと、恋を思わせるような歌はひとつもあらず。「ねこはこたつで丸くなる」まであるのにナァ。まぁ明治の唱歌は教育という機能を内包して導入されたものだそうだから仕方あるまい。
    「なお、童謡については……『日本童謡集』を参照されたい」とあるから、そのうちそっちを読むとするかナ。

  • http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/400310921X
    ── 堀内 敬三&井上 武士・編《日本唱歌集 19581220-19831110 岩波文庫》

  • 明治14年(1881年)から昭和20年(1945年)まで小学校の教科書等に記載された所謂唱歌150編あまりを集めた本。
    ある程度の年齢の方は、歌ったはずなのに忘れかけていた歌もある。
    この本を眺めながら脳内で歌うなり、現実として歌っても面白い。
    歌いだし検索もある。

    いつからかは知らないが、小学校の音楽の教科書からこの「唱歌」といわれる歌が軽視され記載されなくなった。
    幼い時代から「唱歌」に親しむと、「政府の思惑としての、愛国心」ではなく「祖国日本を愛する感情としての愛国心」が生まれ続けたのではないだろうか?
    時代的な時期は知らないが、「ひらがな」より「カタカナ」を優先して教えた時代があった。
    それが、この本でもところどころに見られるのが面白い。

  • 緑92-1

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