子午線の祀り・沖縄 他一篇: 木下順二戯曲選 4 (岩波文庫 緑 100-4 木下順二戯曲選 4)
- 岩波書店 (1999年1月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003110041
感想・レビュー・書評
-
『子午線の祀り』(1978) は、『平家物語』中の一の谷から壇ノ浦の戦いまでを戯曲化した木下順二 (1914-2006) の最高傑作である。。dramaticな『平家物語』を更にdramaticな作品に完成している。一の谷の戦いに敗れた平家の大将軍平知盛は、海に愛馬を泳がせて船に乗り移る。しかし、船には人が多く混み乗り、馬を乗せることができない。泣く泣く、愛馬を源氏の兵の群がる汀へと追いやる。この場面を、「馬は主の別れを慕いつつ、暫しは船をも離れやらず、沖のかたへ泳ぎけるが、船次第に遠くなりければ、主なき汀へ泳ぎ帰る。足立つほどにもなりしかば、なお船の方をかえりみて、二、三度までこそいななきけれ」と描写する。屋島の戦いの前の有名な逆櫓論争の場面も興味深い。戦奉行の梶原景時が船の方向を自由に変えることのできる逆櫓の使用を持ち掛ける。それに対して義経は、「およそ戦さは、一退きも退かじと思うてさえ、形勢悪しきとなれば退くのが常の習い。事の初めから逃げ支度して何のよいことがあろうぞ。------戦さはひたすら攻めに攻めて攻め勝った時こそ日本晴れだ。しかもこのたび、義経ことに存念あり。第一陣に立って命を棄てる!」と言い放つ。このように、戦の天才義経の真骨頂を巧みに表現している。更に、壇ノ浦の戦いにおいて、義経は平家方の水主を斬り伏ろと命じる。「それはなりません判官殿! 戦さの法にそむきます!」と諫められたのに対して、「天と地を覆えそうこの期に及んで法も掟もあるものか! いいや、これこそが義経の戦法だ!」と言い返す。日本文学を愛するひとには自信を持ってお薦めできる作品である。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
源平の戦いを描く『子午線の祀り』
これは名作! -
『花よりも花の如く』13巻から、子午線の話つながりで。
-
木下順二というと「夕鶴」があまりにも有名すぎて他の作品を知らなかったりしますが、これはたまたま舞台で観て、原作も読んだパターン。源平合戦ものです。舞台はたぶん99年で、平知盛が狂言の野村萬斎さん、義経が歌舞伎の市川右近さんでした。