- Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003110126
作品紹介・あらすじ
作家であると同時にまた、西鶴語彙研究・江戸地誌研究の第一人者であった真山青果(1878‐1948)は、『元禄忠臣蔵』連作の構想にあたり、とりわけ徹底した資料調査を行なったという。その周到綿密な史実考証・言語考証が全篇に独特の風格を漂わせ、そのなかで血のかよった人間のドラマが展開される。
感想・レビュー・書評
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上巻の感想で、当時、浪士たちに同情的であり、かつ仇討ちをしなければ武士にあらずといった世論が、恐ろしいものだと書いたが、誤解を恐れずに言えば、これはまさに、第二次大戦における例えば特攻隊に向かわせる(志願させる)圧力のようなものではないか。確かに、主君の恨みを晴らすべく立ち回る様は、望ましい、男らしい行いのように思われる。しかし、堀部安兵衛の討ち入り後の台詞にあったように、実はそれは本来守るべき家族や、自分の命を捨てる行為であって、「本来の人間の姿」ではない。
一方で、そういった集団とか、国というものに対しての忠誠心、自分を捨てて他者の為に行動するという姿勢を、どうしてもどこか美しいと感じてしまう自分がいるし、日本人がどんなに欧米化し、合理精神を身につけても、やはりどこか共通の認識として持ち続けている感覚なのではないかとも思う(完全に私見だが)。
それが証拠に、例えば少年ジャンプで人気の漫画を考えても、「仲間」なるものを守るため、命を顧みずに戦うではないか。もし、現代人が義士たちを笑うなら、少年漫画の主人公たちも、仲間という曖昧なものの為に戦ってはいけないはずである。もちろん、現代では崇拝の対象が「守るに値するか」というところまできちんと描いているのかもしれないが。
そして、仇討ちをしたらしたで、世間は手放しで褒めそやし、浪士たちも、ともすればどこか得意そうに和気あいあいとしている者もいる。そんな中、大石だけは淡々としており、浮かれるまいと水を差している。最後の場面で、疲れた、といっていたのは、心からの本心でないかと思った。
上巻で、大石のいう「冷熱二人」、役人としての心構えを述べているのも印象に残った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
赤穂などを舞台とした作品です。
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緑101-2