原民喜全詩集 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2015年7月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784003110829

みんなの感想まとめ

日常の美しさや自然の描写を通じて、深い感情を呼び起こす詩が魅力です。特に「原爆小景」では、被爆体験を淡々とした言葉で表現し、切なさや怒りを強く訴えかけてきます。著者の生涯や他の作家との関係性も詩の背景...

感想・レビュー・書評

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  • 原民喜さんの詩集ですね。
    原民喜さん(1905~1951、広島県生まれ)小説家、詩人。
     生前に詩集は出されてはいません。原民喜さんの妻が亡くなって、後を追うように四十五歳で自死されましたので、四ヶ月後に『原民喜詩集』は刊行されました。この本には、他に『かげろふ断章』ほか拾遺詩集を収録されています。

           『はつ夏』

     ゆきずりにみる人の身ぶりのいちから、
     そのひとの昔がみえてくる。
     垣間みた あやめの花が 
     をさない日の幻となる。 
     胸をふたぐといふのではない、 
     いつのまにかつみかさなつたものが 
     おのれのうちにくるめいてゐる。
     藤の花の咲く空、
     とびかふ燕。

           『夏』

         みなぎれる空に
         小鳥飛ぶ
         さえざえと昼は明るく
         鳥のみ動きて影はなし

           『川の断章』

             1

          川に似て
          音もない
          川のほとり
          川のほとりの

             2

          空の色
          寂び異なるか
          水を映して
          水に映り

             3

          思ひは凍けて
          川のひとすぢとなる
          
             4

          遠かれば
          川は潜むか
          流るるか
          悠久として

             5

         現世(うつしょ)の川に
         つながるるもの
         現世の川に
         ながれゆくもの

           『昨日の雨』
        
        青くさはらはかぎりもない
        空にきく雲雀の声は
        やがて淋しい

        うらうらと燃えいでる
        昨日の雨よりもえいでる
        陽炎が濃ゆく燃えいでる

           『月夜』

           (1)

         川の向こうは川か
         向こうには何があるのか
         空に月は高いし
         水も岸も今は遥かだ

            (2)

         月の夜の水の面は
         呼吸するたびに変わる
         たとへば霧となり
         闇となり光となる

     生涯を詩人として過ごされたようですが、あまりにも短い人生にため息が出ます。原爆を謳った詩もカタカナで掲載されています。
     感受性の高い孤高の詩人の調べに、感慨はひとしおですね(=^ェ^=)

  • 広島旅行で原民喜の名前を知った。原爆の詩は資料館で見ていたのだが、改めてじっくり読みたい、かつ他にどんな詩を書いたのかという興味も湧き手に取った。

    構成がよい。最初は「ある時刻」。自然を、日常をあるがままに描く。何気ない、何事もないことの美しさを感じる才能がある人なのだろう。これらを読み進め、彼の代名詞ともいえる「原爆小景」は中ほどから。コレガ人間ナノデス、真夏ノ河原ノミヅガ、水ヲ下サなど、カタカナが淡々としかし激しく切なさと怒りを訴えてくる。

    彼の生涯と若松英輔の解説がまたよい。人と話をするのが苦手、妻との馴れ初め、そして先立たれた絶望。これらを知った上で改めて読むと味わいが深くなる。さらに彼の最後の家、および詩を選んだ場所は私がよく出かけるエリアにあると知り、妙な親近感を抱いた。よい詩集に出会えた。

  • 2018年12月25日、読み始め。
    原民喜という詩人を知ったのは、最近の聖教新聞のコラムに載っていたため。そのコラムでは、原爆小景のことが書かれていた。そんなことで、今回、この詩集を手にした次第。

    2019年1月5日、25頁まで読んだ。

    興味深かったのは、著者と遠藤周作との関係。
    176頁に書かれているが、著者が43歳の頃、つまり亡くなる2年位前に、著者は遠藤周作と知り合いになったようだ。
    遠藤周作が20代の頃で、歳の差があった。それでも、週に1回は、遠藤が著者の家を訪れて、酒を飲んだようだ。「お父さん」、「ムスコ」と呼びあうほどの親交であったとのこと。著者が亡くなる時に、遠藤に宛てた遺書があるようだが、その時に、「悲歌」と題した詩を書いたようである。

    ●2020年8月6日、追記。

    今日は、広島の原爆忌75年。
    今、被爆者の平均年齢は83歳を超えるそうだ。
    その体験の継承は重要で、活動されている方々には感謝している。
    さて、原民喜(1905~1951年)だが、広島での被爆者であるとのこと。


    ●2021年6月13日、追記。

    鉄道自殺で亡くなったとのこと。
    その辺りを、ウィキペディアで引用すると、

    1951年3月13日、久我山の鈴木重雄の家を訪ね酒をくみかわしたのち、午後11時31分に国鉄中央線の吉祥寺駅 - 西荻窪駅間の線路に身を横たえ鉄道自殺する。原は大量の酒を飲んでいたらしく、視官は原の轢死体からアルコールの匂いがしたと証言している。しかし、事前に遺品などの整理は周到に行われており、衝動自殺ではないことが窺われる。下宿の机には親族や佐々木基一、遠藤周作、丸岡明、鈴木重雄、庄司総一、山本健吉、藤島宇内、佐藤春夫、梶山季之などにあてた17通の遺書があった。葬儀は埴谷雄高の提案で無宗教でおこなわれた。遺稿に「心願の国」「永遠のみどり」。

    ●2022年9月26日、追記。

    ウィキペディアより、以下、引用。

    原 民喜(はら たみき、1905年(明治38年)11月15日 - 1951年(昭和26年)3月13日)は、日本の詩人、小説家。広島で被爆した体験を、詩「原爆小景」や小説「夏の花」等の作品に残した。

    45歳にて、亡くなっている。

  • 自身の目に写る景色を描写する内容は好きだけれど、少し感傷的な感じがあるところに同調できず、距離ができてしまう。

    詩は、相手の言葉を理解するだけでなく、飲み込んで自分の景色を観るものだと思いました。

  • まだ私にはむつかしい、また手に取る日まで

  • とても静かな詩集。だけれどもいったん飲み込んだことばがあとから、体の内側からぐいぐいと、何かを訴えて来る、そんなことばの一群。原爆小景というカタカナ書きの連詩が圧巻だ。お正月に読む本ではない?いやお正月に読んでよかった。

  • 18/08/21。

  • 俳句的な短詩。
    『夏の花』同様、「ただそこにある」がある。
    ●濠端の柳にはや緑さしぐみ/雨靄につつまれて頬笑む空の下//水ははつきりと たたずまひ/私のなかに悲歌をもとめる//すべての別離がさりげなく とりかはされ/すべての悲痛がさりげなく ぬぐはれ/祝福がまだ ほのぼのと向に見えてゐるやうに//私は歩み去らう 今こそ消え去つて行きたいのだ/透明のなかに 永遠のかなたに

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著者プロフィール

広島市生れ。慶応義塾大学英文科卒。中学の頃より詩作を、大学予科の頃より短編小説の創作をはじめ、1935(昭和10)年、作品集『焔』を自費出版する。疎開先の広島で原爆被災。以後、被爆後の広島の凄惨な状況に向き合いつつ数々の佳品を発表。1947年に刊行した『夏の花』は多くの読者に深い感銘を与え、水上滝太郎賞に輝いた。1951年、『心願の国』を遺し、自殺した。

「2026年 『混声合唱のための 星の疼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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