- Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003110911
感想・レビュー・書評
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氏の代表作である、「武蔵野」、「胡蝶」が読みたくて購入しました。
戦時下に出版されており、歴史的仮名遣いがそのままなのはもちろんの事、漢字も旧字体(または繁体字)のため読むのに大変難儀しました。
また、収録されている小説は1篇を除き歴史小説、または時代小説となっており、作中の時代考証を把握している必要がある事、加えて、特に武蔵野などは作中の人物が作中の言葉で会話していることもあり、なかなか読み進めることができませんでした。
山田美妙というどことなく雅な名前や、「武蔵野」、「胡蝶」、そして「いちご姫」など、美しいタイトルから、私小説、それも恋愛小説を書く人だと勝手に思い込んでいたのですがとんでもない、戦を題材とした、厳しい作品だらけなので驚きました。
私は特に歴史が苦手なので1回読んでも理解できず、同じ話を2回、3回読んで、グーグル先生の力も借りて、ようやく読破できた感じです。
ただ、理解できると思いの外シンプルなストーリー構成をしており、どの話も悲哀に満ちた話だと感じました。
山田美妙といえばの言文一致体ですが、「です。」が使われている箇所はほんの数カ所だったのも意外な感じでした。
むしろシロテンを多用しているイメージを持っています。
収録されている小説は以下の6篇。
武蔵野、胡蝶だけではなく、他の作品も名作です。
・武蔵野 …
美妙の代表作。特に会話文が難しく、当初読みづらかったですが、構成は単純でかつ無情な話でした。
南北朝時代の武士とその家族の話ですが、その時代に詳しい必要はないと思います。
・胡蝶 …
こちらも代表作。女性のヌードの挿絵で問題になったことで有名で、本書でも件の挿絵は赤裸々に掲載されています。
冷静に読み解くと結構突飛な話で、短い割に場面転換も激しく、武蔵野とは別の意味で読み難さを感じました。
・里見勝元 …
調べてみと里見勝元も里見民部も実在の人物であり、ある程度史実に基づいているようです。
いろいろ調べてみてようやく理解できましたが、本書だけで読んでも中々分からなかったです。
・二郎経高 …
本作も史実に基づく小説です。
佐々木経高の生涯を書いた小説にしては端折っている部分が多く、本作だけで長編にしてほしかった気がします。
本書収録作品の中では一番おもしろかったです。また、読むのに一番苦労した作品でもあります。
・嗚呼広丙号 …
日清戦争後、清國から編入された巡洋艦・広丙の生涯の話。
本作だけ、広丙の元乗組員から美妙がインタビューした話という形をとっています。
・戸隠山紀行 …
タイトルの通り、美妙の戸隠山紀行文です。
本作はおまけ、あるいは美妙という作者自体を知る作品と思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示