銀座復興 他三篇 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003111031

作品紹介・あらすじ

「復興しないったってさせてみせらあ。日本人じゃあねえか。」焼け野原の銀座にたったひとつ灯った、トタン小屋の飲み屋のランプ-作家と実業家、二足の草鞋を生涯貫いた水上滝太郎(1887‐1940)が、関東大震災後の銀座の人びとを描いて力強い『銀座復興』。他に、『九月一日』『果樹』『遺産』を収録。

感想・レビュー・書評

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  • じーんとした。

    「砂漠」を目の前にして、「そこで自分はどう生きるのか」という命題は、時代や場所が変わっても全く不変なもので、本著においては、「ひとつの灯り」が点る居酒屋から、波状的に人々が「活動」へと向かっていく、人々が変わっていくそのダイナミズムが描かれている。勿論その過程には様々な懐疑や動揺、不信があって、一筋縄ではいくわけもない。人はそれほどには強くはない。しかしだから故に「変わっていく」こと、それに伴う微細な変化が見えた時に、我々は心を打たれるのだろう。またそうした内面の変化が、天候の動きと結びついている箇所が多く見られ、人の「自然」をさらに浮き彫りにしている。

  • 「九月一日」の人間臭さが好き。

  • 水上滝太郎『銀座復興 他三篇』岩波文庫、読了。「復興の魁は料理にあり 滋養第一の料理ははち巻にある」。関東大震災後の焼け野原の銀座にたったトタン小屋の飲み屋。焦土東京の下町から品川の海が見えたという。ランプの下へ集う人々の自由なつながりと復興への鎚の音を生き生きと描く表題作。

    水上自身その日、由比ヶ浜の別荘地で地震津波に遭遇したが、その記憶が元になる「九月一日」では、避暑地の若者たちのその日のこころを抑制のとれた筆で浮き彫りにする。宮崎駿夫さん『風立ちぬ』の冒頭を想起。ひょとして影響を与えているのではないかと。

    「果樹」では新婚生活に入った若夫婦を瑞々しく「果樹」は水上の傑作と呼ばれるが、著者の人格主義に、まさにまさにと膝を打つ。町内会的な閉塞的絆の暴力性を描く「遺産」は、正義感あふれない描写が印象的だ。中立とは無縁だが、社交とは常に相対的なのだ。

    「勤め人として人のために仕事をし、文学者として自由に創造する、この理想を追求した人物は滝太郎いがいにいない。人格に裏打ちされた書き手であり、そのよさは、二足の草鞋にあったと思えてならない。一つは大いなる義務、一つは純粋な憧憬」(解説坂上弘)。

    三田文学のひとつの翠点でなあ。この作品は。

  • 地震に打ち勝つ自信。
    びくりとも揺れない心。

  • 震災とそこからの復興は繰り返される日本の宿命。

    うまい酒とうまい料理で元気を出して、それぞれの仕事をがんばる。そうすりゃ、天子様もお喜びだ。

    上記のような具合に、人々は関東大震災後の復興に尽力するが、その姿は読者に元気と勇気を与えてくれる。

  • 関東大震災からの復興の話と思って読んでみた。確かに関東大震災に関係する話であったが、そんなことよりも滑らかな文章が素敵であった。中でも「果樹」が良かった。

  • 銀座復興(1931/昭和6年)
    九月一日(1923/大正12年)
    果樹(1925/大正14年)
    遺産(1929/昭和4年)

    解説 震災と水上文学(坂上弘)

  • 震災後の銀座の荒涼とした様子や、復興にかける市井の人々の奮闘ぶりがよく伝わってくる。会話が生き生きしているせいだと思います。

  • 岩波文庫:緑 080/I
    資料ID 2012200188

  • 関東大震災によって焼け野原となった銀座を舞台に、人々の復興に向けた様々な思いを描いた表題作を含む四編を収めた短編集。文語体の面影を残す叙述が昭和初期の時代を感じさせるが、現代においても違和感なく寧ろ心地よく読み手に響くところに著者の力量がうかがえる。震災という大きな事件におかれた市井の人々の様子を淡々と描写してみせることによって、その非日常性が効果的に表現されている。

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