漱石文明論集 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 三好 行雄 
  • 岩波書店
3.89
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本棚登録 : 412
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003111109

感想・レビュー・書評

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  • 「現代日本の開化」という講演から始まるのだけれど、もう、かっこ良すぎる。
    言っていることが突飛なわけではなく、分かりやすくて衝撃がどーんと来る。

    ぱらぱらと気軽に楽しめる本ではなくて、一つ一つじっくり読み味わうべき本。
    借りて、もうドキドキしっぱなし。
    返すことが惜しいとさえ感じたので、自分用を買おうと考える。

    これを読んで、夏目漱石は千円札にされることを嫌がってそうに思えた(笑)どうなんだろうか。

    「愚見数則」という中学生向けの文章が、また良かった。
    理想論といってしまえば、それまでだけど。
    自分の生き方、やり方、また相手との関係性を考え直す気持ちにさせられた。
    リズムがよく、すいすい入ってくるのに胸が痛む(笑)

  •  夏目漱石は森鴎外と同様に、西洋文明を丸々コピーすることには反対していた知識人であった。今や、西洋的考えを否定することはできなくなってしまった。それほど、日本の中に多くの西洋物が存在する。厳密に言えば、日本は、純日本的なものと中国・朝鮮などの東洋諸国の文化が日本式になったいわばハーフの文化が存在していた中に、明治になって外科手術的に西洋文明を上書きしてしまったと言える。

     今まではそうやって外のものを自分たちの良いように上手く吸収して日本になじませる(言わば、守・破・離のような)形式で、中国や朝鮮などの文化を自分たちのものとしてきた。しかし、西洋文明は今、十分に消化されているのか?そもそも、西洋的な考えは東洋とは相容れない部分が多い。例えば、排中律や二項対立。これらは仏教的な考えには存在することが難しい概念である。排中律でどうやって生=死を証明しろ、というのか。

     西洋がダメで、東洋が素晴らしい、という議論をしたいのではない。それでは、Binarismにおける第1項と第2項との立場が入れ替わっただけでしかない(「美が望まれるべきで、醜は避けられるべき」が、「醜が望まれるべきで、美は避けられるべき」に変わったところで、根本的なBinarismの構造は変わらない。Parallaxでしかない)。

     今は、そこの所を再考するべきなのかもしれない。西洋がどうだ、とか東洋がどうではなく、日本にとって、どう西洋・東洋を吸収すればいいのか?を考えるべきなのではないか。
     だから巷に出ている、勝間和代のような西洋に傾きすぎた人間は、ちょっと危険だと思う。そして、自分の親が子どもだった頃やもっと前の頃(「古き良き日本」とでも呼べばいいのか?)の考え(伝統?)を日常的に触れるのが難しいのはさらに怖い、ように思う。

     抽象的であまり現実味がないが、こんなことを考えさせるような本だった。

  • 漱石が近代人として評価されていることの真の意味を知った。学習院での講演「私の個人主義」では、小説だけでは見えにくい漱石の思想の遍歴が披露される。明治期、様々な外来思想が輸入され社会が大きく変わる時代のなかで、戸惑いのなかに生きる漱石が啓示のように感じたであろう自己本位の思想。先進的な社会であろうとも後進的な社会であろうとも、外部の環境に影響されない自己本位の思想。自己が価値判断の基準となること、そのためには自分勝手という意味ではない真性の個人主義が必要となること。そんな漱石にとっての切実な悩みと回答が学生の前で力説されている。
    絶対的な身分社会の江戸期には生じない思想であろうし、西洋思想が正しいとされた文明開化期の思想でもない。社会漱石の語る近代性は、きっと大正デモクラシーの下地になっている。

  • タダでも読めるんだけど、編集の付加価値を頼りに購入。100年以上も前にこんなこと書いた人がいるんだなあ。「西洋」を体感し、苦悩した経験があるが故の説得力。幕末以前が舞台の青年立志小説にはないリアリティが満載。各自、頑張りましょう。
     
    ・理想は見識より出づ、見識は学問より生ず。学問をして人間が上等にならぬ位なら、初めから無学でゐる方がよし
    ・真面目に考へよ。誠実に語れ。摯実に行へ。汝の現今に播く種はやがて汝の収むべき未来となつて現はるべし
    ・二と二が四となるとは今世論理の法則である。昔はそうも相場がきまっておらなかった。きまらぬ所に面白味があった。物は何でも先の見えぬ所が御慰みだ
    ・昔は上の方には束縛が無くて、上の下に対する束縛がある。これは能くない、親が子に対する理想はあるが子が親に対する理想はなかった。妻が夫に臣が君に対する理想はなかったのです
    ・私のような詰まらないものでも、自分で自分が道をつけつつ進み得たという自覚があれば、あなた方から見てその道が如何に下らないにせよ、それは貴方がたの批評と観察で、私には寸毫の損害がないのです。私自身はそれで満足するつもりであります

  • 明治文学上もっとも西洋化、近代化された作家の一人である夏目漱石。
    本社に収録されている中では著名な「私の個人主義」のほか、「断片」も非常に印象に残った。
    人間「夏目漱石」とは、どのような人柄であったのだろう。
    科学的かつ思想的そして明晰であることが本書を読むとよくわかる。
    漱石の場合、小説だけでなく随筆や本書のような講演を読んでみるのも大変参考になる。

  • 「断片」の項などは現在の日本の状況に酷似した内容を憂いている。総じて漱石が同時代人でありながら日本や世界の状況を客観視し、その軽躁を冷徹に時に達観しつつ舐め回すように書き付けていることの貴重さを実感する。いまさらながらにやはり漱石は「偉大」であるという感懐。

  • 中でも特に「私の個人主義」は自分の今後のあり方を見直さざるを得なくさせられた。所収の講演録はどれもユーモアと自信の経験と思索に裏打ちされた説得力のあるものだと思う。

  • 今春高校生になる娘への課題で出たので読んでみた。

    「私の個人主義」は、これから様々なことを学び
    リーダーシップをとっていく人たちにとって
    大切なことが解りやすく書かれているので
    高校生にぜひ読んでもらいたい。

  • 現代日本の開化

  • 105 目白 計10冊 計1050円

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著者プロフィール

明治、大正時代の小説家、英文学者。1867年、江戸(東京都)に生まれる。愛媛県松山で教師をしたのち、イギリスに留学。帰国後、執筆活動を始める。『吾輩は猫である』『三四郎』『こころ』など作品多数。

「2017年 『坊っちゃん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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