鱧の皮―他五篇 (岩波文庫 緑 113-1)

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レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003111314

感想・レビュー・書評

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  • 「ごりがん」
    ごりがんとは、上方の言葉で
    「わが意をごり押しする」といったほどの意味とか
    そんなごりがんな性格の過ぎるあまり
    人には他力本願であれと押し付ける、少し困った坊さんがいた
    ところが、嫁とりの問題をめぐって息子が家を出て行ってしまい
    めっきり弱気になってしまう
    しかしそれでも彼は、道化のようにごりがんを演じ続ける
    そんな話

    「鱧の皮」
    料理屋を切り盛りする女将さんのもとに、家出した亭主からの手紙が届く
    帰ってほしければ店の屋号を俺の名前に変えろだの
    また博打で負けたから送金して頂戴だの
    勝手なことばかり書いてあるが
    惚れた弱みがあるので、亭主の好きな鱧の皮だけは
    親に内緒でこっそり送ってやることにする
    上方の、甘ったれた男のわがままを書いたものとしては
    谷崎潤一郎や織田作之助の先駆だろう

    「父の婚禮」
    母が死んだので、父は新しい嫁を迎えることにした
    その相手というのが、以前家でつかってた下女のお時さん
    まだぜんぜん若い女だが
    年齢不詳の父と、どのぐらい歳の差があるのかよくわからない
    ちょっと前まで、これをいじめて泣かせたりなどした12歳の息子は
    ある寂しさにおそわれて泣いてみたりする

    「兵隊の宿」
    人間は自分の考えによって自分の運命を選択できる
    それが、普遍的の自由というものだ
    …というのが、近代において見出された真理というか願望というか
    まあ理想主義なんですけど
    いずれにせよ、人間はカネを稼ぎ
    あさましくとも食ってかないと死んでしまうわけだ
    だからそのために己の意志を曲げて
    ひざまづくことも、時には余儀なくされる
    その現実に絶望するたび人間は、発狂したり死んでしまったり
    明治時代の文学では、そういうことがしばしば繰り返されてきた
    しかし大正時代…
    もう少し遡って、田山花袋の「蒲団」あたりから
    文学の中の人物たちも、妥協を覚え始めた
    これはそういう流れのうちにある
    日本文学史の、忘れられた重要作品ではないだろうか

    「太政官」
    蘭や万年青の新しい品種を工夫してみたところ
    明治時代の土地バブルに乗って爆売れ
    あっという間に大金持ちとなった百姓が
    学校を建ててやり、村政にも隠然たる勢力を持つようになった
    人は彼を半ば尊敬、半ば嘲る気持ちで、「太政官」と渾名する
    しかし太政官は、やがて彼の学校で学問を得た若者たちに
    村政からスポイルされてしまう

    「石川五右衛門の生立」
    少年時代の石川五右衛門を
    自分のものと他人のものの区別を理解できない子供として書いており
    ひょっとすると
    共産主義への批判と受け止められないこともない

  •  
    ── 上司 小剣《鱧の皮・ごりがん・他四篇 19521105 岩波文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4003111311
     
    …… ごりがんとは先づ、駄々ツ兒六分に、變人二分に、高慢二分と、
    それだけをよく調合して出來上つたかみがたの方言である。
    http://www.aozora.gr.jp/cards/000248/card51227.html
     
     桂 春団治 1 落語 18780804 大阪 19341006 56 /旧姓=皮田
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20160109
     なにわの春団治・列伝 ~ やたけた・ごりがん・すかたん ~
     
    …… 吉田 肇のあだ名“ゴリ”の原義は、川に生息する淡水魚か、も
    しくは“ゴリラ”の略称か。どちらがふさわしいか分らない。
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19560101
     然かざりき/ブラバン/ひばり/ゴリのケンケン
     
    ── 植木 等・主演《日本一のゴリガン男 19660316 東宝》「日本一
    の男シリーズ」第4作目で、個人で会社と 契約し(後に“フリーランス”
    と呼称されるようになる就業形態の原型である(Wikipedia)。
     
    (20160201)
     

  • 大阪旅2012、ジュンク堂大阪本店にて購入。
    この短編集には、生きた大阪弁がありまして、わたしの胸をときめかせます。

    「鱧の皮」
    風景が見えるようだ。道頓堀のあの川沿いにあるお店なんだね(金龍ラーメンをなぜか思い出す)。法善寺横丁へぜんざいを食べに行くんだね。当時、あのへんには寄席があったのか。それにしても、お文、東京へ出奔した夫へ鱧の皮なんぞ送ることないよ。でも好きだから…そっと包を撫でたときに、お文の気持ちがにじみ出るようで切ない。

  • お文が鱧の皮を買ったのはカマボコ店「さの半」。鱧の皮をカマボコ屋で売っているのは、ハモは上等のカマボコの材料で「うちの商品はハモを使っています」のPRを兼ねている。

  • 話を読んでいて食べ歩きがしたくなった。

    お文と源太郎の会話が和む。

  • 明治末期から大正初期の京阪神の、
    市井の生活感が伝わってくるような短編集。
    表題にもなっている「鱧の皮」、うな丼、釜で炊いた米、
    小学校のやかんで作るマツタケの土瓶蒸などなど、
    話の端々に出てくる食べ物の美味そうな描写も
    さすが上方、と、いった感。

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