- Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003112311
作品紹介・あらすじ
兵士でありながら病ゆえに兵士を拒否された人間がフィリピンの原野に投げ出され、全くの孤独と不安の中で自然と自己を凝視しつつ到達した地点は…。戦争を描きながら戦争小説を超えた文学として高く評価されている『野火』。他に、王座を狙うマキァベリスト・ハムレットの試練と没落を描く『ハムレット日記』を併載。
感想・レビュー・書評
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「野火」
フィリピン戦線レイテ島で病と飢えに苛まれつつ島を彷徨う一人の兵士の話。
何もかもが生々しくて、病んでる時にはお勧めできない。でも戦争の残酷さを知るにはこれぐらいでも生ぬるいんだろうな、と思う。
「ハムレット日記」
個人的には「野火」よりもこっちの方が面白かった。私はシェイクスピアの原作を読まないままこちらを読んだので、何もかもが新鮮。
シェイクスピアは劇作家なだけあって、一つ一つのシーン(例えばオフィーリアが身投げをする場面だったり、ハムレットとレアティーズが決闘する場面だったり)が激烈で、目の前で景色が鮮やかに立ち広がっていく感じがした。
原作も読もう!と思わされた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大岡昇平の冷徹な目で、愚かな戦争の犠牲者達の悲惨な実態が描かれている。きけわだつみのこえもそうだけれど、どう考えても無謀で愚かな戦争に実際に投下された個々の人間達の知性が哀しい。
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フィリピンのレイテ島で、日本兵として赴任した主人公は病気のためにもはや兵士ではないと宣言されるところから始まる。食糧難の軍部としては、働かざる者への食事は与えたくないのである。そんな環境であるので、病院でも食料は無いに等しい。そんな過酷な環境に放り出された主人公がたどる道は、自らの思想をたどる道ともなっている。同じ日本人通しで起こる諍いを通じて、戦争の悲惨さが伝わってくる。
これが、『野火』という小説。『ハムレット日記』では、政治劇としてのハムレットが描かれる。シェークスピアのハムレットはいまだに読んだことがない。
いつか読むつもり。 -
膨れ上がる遺体。
想像よりよほど崇高だった。(「野火」) -
「野火」が強烈な内容。原作よりも、塚本晋也監督映画「野火」は反戦を強調しているように感じた。
「ハムレット日記」について、ハムレットを先に読んでから読めば良かった気がする。 -
『野火』は内容的にえぐいのかと警戒していたが(いや、えぐいんだけど)、思いのほか精神論に重点をおいていた印象だった。
視線を感じるというのは、やはりタブーに対する理性の働きや良心の呵責にも似た恥の概念なのか。善悪の判断と、生への執着――「考える」ことをやめたときに人間であることも終了してしまうのであれば、極限状態で自己を見つめ続けた主人公の精神は相当に強靭なものだが、しかし人食に向かった者、神を見出した者、どちらも己が心の解放を求めた結果の逃避と言えるかもしれない。「人肉を食わなかった」ことに、読み手でさえ「よかった」「それは正しい」と一言で片づけられない形になっている。
『ハムレット日記』は、『ハムレット』を読んだのがかなり前ということもあり、細かい差異に気づかないまま読了したが、面白さを再確認させてもらったので、また原典のほうに手をのばそう。 -
『野火』の誉れ高いが、『ハムレット日記』が「ハムレット」を知らない人間としてはありがたかった。こういう翻案がもっとあればいいのに。
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あまりこの時代の小説を読まないせいかもしれませんが、
戦争を経験した人の書いた戦争に関する小説って、こういうの多い気がする。ショッキングというかなんというか。
人を食べる、みたいな話、ちょいちょい見る気が。
人間性突き詰めてくと、そういうとこに行き着くってことなんでしょうか。
でも実際、読んでてショッキングって感じでもないんだよな。嫌悪感感じるわけじゃないし、なんていうんだろう。
ただどことなーく気持ち悪いような、ふわふわした感じ。
登場人物の感情が割と平坦だからかな。
この作品に限らず、そういう感じ多いですよね。
ハムレットの方は大本を読んでないので、卒業までには読みたいな。
そっち読まないとたぶん本当にはわかんないんだろうし。 -
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