雪 (岩波文庫 緑 124-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003112427

感想・レビュー・書評

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  • タイトル通り、雪の結晶について書かれたものですが、分かりやすい文章と内容で、科学書の中では親しみやすい方ではないでしょうか。
    「…雪の結晶は天から送られた手紙である…」
    の名文を残した中谷宇吉郎本人に興味を持った私でしたが、読み進むうちに、その興味は、一気に雪の結晶へとシフト。
    著者と一緒に研究作業を進めているような感覚に落ち入りました。
    雪(自然科学)を研究する楽しさ。ひとつのことを深く考え、辿っていく面白さを純粋に味わえる一冊です。
    雪嫌いの方も、是非ご一読を。
    雪への見方が変わりますよ。(T)

  • 実際は学問的な難しいところもありながらも,うつくしく,誰でもわかるように説明する能力はすばらしいものである.この本は実際の研究のほんの一部であるだろう.さらに,あたかも簡単なように書いてあるが,さまざまな工夫や困難のもとになしえた結果であることは少し考えれば想像できる.ともかく,研究をこのような形で発表できる高い技術に感激する.

  • 本作はまず、雪国における雪害にどう対処すべきかという生活に根ざした話で始まる。自分は雪国出身ではないが、おそらくこれは切実な話なのだろう。その後、雪そのものへと論点は絞られていく。より、科学的純度を増していく。
    大人になると、雪の日がいくらか煩わしくなる。冒頭が大人の視線だとすれば、利害を脱して、雪そのものをただ見ている子供の眼差しへと読み進めるにつれて移行していく。そのプロセスに胸が熱くなった。

  • 文章が美しい本。

    とりあえず本論に入る前の第1章「雪と人生」。主張のひとつは「雪の降らぬ地に生活しているものに向かって、雪の災害を説き知らせることは至難のこと」というもの(初めに引用する『北越雪譜』という本の主旨らしい)。
    そしてもうひとつは、「日本において雪の研究をもっと真剣にしなければならぬ」ということで、こちらがメイン。
    但し力ずくで説き伏せるのではなく、むしろ雪(国)に対する人々の生きざま・苦しみざまを丁寧に描写することで、いいたいことを自然に繰り返す構成は、説得力に満ち、心地よくさえある。
    もっとも、主張への共感を求めるためにしたたかにそうしたというよりは、そもそも著者中谷自身が研究のモチベーションの底に社会性を抱きかつ保っているのだろうと敬意を抱くのだが。

    雪の結晶の形状にもさまざまな姿があるとの話。涙ぐましいほどの努力が含まれていそうな内容で、ミクロな話なのに読んでいて手に汗握る。

    それにしても、読んでいて心地よさを覚える。

    研究の目的に「雪の本質を知りたい」ということと「雪とは天から送られた手紙であり、その暗号を読み解きたい」ということを併記しているロマンティックなところが好きた。
    また、「とにかく、よく観る」という手法を徹底的に重視したり、「研究とは丁度"ねじ"の運行」と言って、その迂回を繰り返す方法論を示していたりするのも印象的。

    「おっ」と思うのは、中谷の、研究(成果)への"謙虚さ"。「分かったみたいな書き方だけど、分からないこと(謎)はまだ多い」「ここに示した類型化も不十分("不定形"も案外多い」と言い切る謙虚な姿勢は、中谷の業績への自信の裏返しかもしれない。

    ただ私にはそれが「読者へのきめ細やかな配慮」の現れであるように感じられてならない。文中でも度々、"読者への"メッセージを発しているし、述べる内容(レベルと量)の"調節"もしばしばうかがえる。それでいて、研究や観測の面白さ(及びそれを伝えるエピソード)は存分に伝えてくれる。"知識の本"ではない"知恵の本"との解説も見事。学生にうちに、こんな"ロマンティシズム"と"人間味"に満ちた研究の本を、読んでおきたかったものである。

  • 《教員オススメ本》
    通常の配架場所: 1階文庫本コーナー
    請求記号: 451.66//N44

    【選書理由・おすすめコメント】
    ファーブル『昆虫記』、ファラデー『ロウソクの科学』と並ぶ科学読物が、この中谷宇吉郎『雪』である。著者の天然雪の観察に始まる雪に関する研究を紹介した内容となっているが、興味を惹くのは研究そのものよりも、これを例に紹介される科学研究の「方法論」。テーマ選びから問題設定、実験、データのまとめ方、考察まで、一流の研究者がいかにして研究を進めるかを丁寧に見せてくれている。研究職に興味がある学生に推薦したい。
    (理学部化学科 宇和田貴之先生)

  • 「雪の結晶は、天から送られた手紙」。
    そんなロマンチックさと、時にはユーモアを交えた雪の研究が著された一冊。

    半分近くの都道府県が雪の降る日本。
    雪下しが、生産に使うはずの労力を散らせてしまっているという問題意識に始まり、雪の本質を顕微鏡で捉えるドラマをつぶさに語っており、その、探究の姿勢に、はっとさせられます。

    中谷宇吉郎の森羅万象帖 展
    http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_002432.html(2013年9月2日(月)~2013年11月23日(土))
    と合わせて読むと、なお、その人柄に引き込まれます。
    「霜もアルコールを含ませるとくだを巻く」のユーモアはたまらないものがあります。

  • 世界有数の雪国地帯をもつ日本で先駆的研究をおこなった中谷氏が、専門的知識がない日本人にわかりやすいように、「雪とは何か」を表した本。
    素人にもわかりやすいように心を砕いているのが伝わって、ところどころ中谷のユーモアにくすっとなる。
    センスオブワンダーをくすぐられる一冊でした。

  • 語り口が寺田寅彦先生に酷似していてのめり込む.雪のみならず研究への真摯な姿勢が参考になる.

  • するする読めて、文章巧いんだろうなあ、と思った。 自然科学の研究、学問の進め方進み方、情熱や感動について。

  • ワークショップ「境界に遊ぶ」:ゲストのおすすめ本

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著者プロフィール

1900–1962
石川県生まれ。
東京大学理学部を卒業し、理化学研究所で寺田寅彦の助手として勤務。
後に北海道大学教授を務め、雪と氷の研究で新境地を開く。
物理学者でありながら随筆家としても活躍。師と仰いだ寺田寅彦の想い出を綴った「寺田先生の追憶」をはじめ「日本人のこころ」「私の生まれた家」など作品は多数。

「2021年 『どんぐり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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