冥途・旅順入城式 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 692
レビュー : 72
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003112717

作品紹介・あらすじ

いまかいまかと怯えながら、来るべきものがいつまでも現われないために、気配のみが極度に濃密に尖鋭化してゆく-。生の不安と無気味な幻想におおわれた夢幻の世界を描きだした珠玉の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 今回も百閒先生に異界へ連れて行っていただきました。
    個人的には「冥途」の作品群のほうが好みです。
    主人公がなぜか身体が牛で頭だけ人間の化け物になってしまった「件」にただようおかしみが印象的。
    件になったのはいいとしても、自分には予言することがないということに悩む主人公を、気の毒に思いつつもにやっとした笑いもこぼれてしまいます。

    「旅順入城式」はねとっとした恐さがちょっと苦手でした…。
    それに、主人公が何かを追いかけていくストーリーがいくつかあるのですが、それも苦手かも。
    これ以上追いかけない方がいい、と内心では思っているのに追いかけてしまう抗えなさと、その先に待ち受けているであろう、何かわからないけれども恐ろしいものの気配に鳥肌が立ってしまいました。

  • 冥途:1921年(大正10年)。
    じわりと滲み出る不穏な気配。風景がひび割れて、そこから得体の知れないものが漏れ出して、足元からひたひた浸されてゆく感じ。何となくマグリットの絵を連想した。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「何となくマグリットの絵を連想した。」
      悪夢ですね。
      「何となくマグリットの絵を連想した。」
      悪夢ですね。
      2014/03/17
    • 佐藤史緒さん
      個人的には、マグリット好きなんですけどね(^ ^;)
      でもまぁ悪夢ですね(笑)
      個人的には、マグリット好きなんですけどね(^ ^;)
      でもまぁ悪夢ですね(笑)
      2014/03/18
  • わかるようなわからないような不思議文学世界。
    『冥途』のほうは終始夢の中のお話で、『旅順入場式』のほうはこちらと地続きな話、かな?
    個人的には「山高帽子」がどうしようもなく怖かった。狂っているのは私なのか、周囲なのか、世界そのものなのか。
    百閒先生は、不安の描写がとてつもなくうまい。何も起こってないけれど何かおこるような、自分のせいではないはずなのに、自分のせいで災厄が起こるような。身近なものや親しい人ですら曖昧な存在にゆらぐし、あちら側への入口になる。
    ホラー?ではない。私はむしろこの漠然とした不安を描写してくれた百閒先生に感謝したい。
    夢中になって読めるタイプの作品ではないのに、妙にクセになって手が伸びる感じ。

  • 幻想小説と言えばこの人、的な存在。
    夏目漱石の門弟で、芥川龍之介とも親交が深かったらしい。
    この作品は、漱石の『夢十夜』と似たテイストだそうだけど、まだ未読なのでいずれ読まないと。

    わたしの好きな幻想小説というジャンルで検索かけると、必ずと言っていいほど出てくるこの作品。
    さすが。大好物でした。
    短編小説なので、余計な伏線などはなく、イキナリ始まってイキナリ終わる。
    日常と非日常の境目が曖昧で、不思議が不思議なまま終わる。
    読者が置いてきぼりにされ、否応なしに余韻にひたらされる。
    雨がしとしと降るような静かな真夜中、この本を読むと背中がゾクゾクしそう。
    近代文学最高。

  • 人気のない薄暗い道。
    夢の中で見た、古い町並み。
    どこかで、私を呼ぶ声がする。
    ああ…。

  • 内田百閒は私の知る中で一番夢を書くのがうまいかた。夢十夜とかすきなひとはきっとすき。良質の悪夢。

  • 暫定的ですが私の結論としては、百間は理解不可能、説明不可能ということです。

    神秘という他ありません。

  • 百閒のように現実と非現実を感覚的に行き来することって、かつて特殊なことではなかったと思う。
    古典をさかのぼればさかのぼるほど現代の感覚とは大きく異なる世界観があって、たとえば夢が現実世界とリンクして解釈されていたり、自然現象により吉兆が判断されたり。

    もし百閒を読む者がその文章に名状しがたい怖さを感じるのなら、それは作品の本質がアンチモダンであることに耐えられない心情のためなんだと思う。
    近代知が徹底的に排除してきたものを、我々の身体は意識下で拒否反応を示しているに違いない。
    だから逆説的に百閒は現代にとって魅力的なんだと思う。

  • 妖しげで不気味な雰囲気を携える幻想短編集。
    終始一貫した独特な世界観の作品の数々に、異世界に迷い込んだ気分になります。救いのない話から、どこかユーモラスな雰囲気のある話まで。
    印象的なのは『件』。気付いたら件になっていて村人達から期待の眼差しで預言を待たれるという設定は実際とんでもない話ですが、主人公の開き直りにも近い姿勢が逆に清々しく感じてこの作品群のなかでは一番気楽に読み進められます。

    夏目漱石の『夢十夜』と類似していると聞きますが、本作の方が断然禍々しさを感じます。そこが堪らないのですが。

  • 大好きな幻想小説。久しぶりに再読した。ふとした日常の中に入り込む悪夢。そしてなに一つ解決しない。けれど、所々百閒先生らしいユーモアが混じる。それが物語の中から悲惨さを無くし、恐ろしい悪夢ながらも、なぜかスッキリとした読みごこちになる。そして、日本語の描写が美しい。

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