ゼーロン・淡雪 他十一篇 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1990年11月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (319ページ) / ISBN・EAN: 9784003112816

みんなの感想まとめ

多様な視点から描かれる短編群は、私小説からフィクション、エッセイまで幅広いジャンルを網羅しており、特に私小説のリアルな描写が印象的です。作中の「ゼーロン」は、愛すべき駄馬を通じて語り手の滑稽さや愛情を...

感想・レビュー・書評

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  • 昨年、美術館で牧野邦夫という画家の展覧会を見て面白かったのですが、プロフィールに作家の牧野信一は従兄、とあって、そういえば牧野信一読んだことなかったなと思い読んでみました。

    こちらは短編集で、「吊籠と月光と」から「夜見の巻」まではおそらく私小説、「繰舟で往く家」「鬼涙村」「淡雪」はフィクション、最後の3編はエッセイという構成。個人的には私小説のほうが完全なフィクションよりも面白かった。フィクションの中では私小説っぽい「鬼涙村(きなだむら)」が良かったかも。

    タイトルにもなっている「ゼーロン」は馬の名前で「夜見の巻」にも登場。人のいうことを全然聞かない駄馬で飼い主にも面倒がられているのに、なぜか主人公はこの馬に愛着を持っていると周囲から思われており、ゼーロンを乗りこなせるのは彼だけと思われている。語り手自身がこの馬をドン・キホーテのロシナンテに例えており、つまり語り手自身はドン・キホーテ、愛すべき滑稽なキャラクター。

    私小説とは基本的にダメ人間の手記なのだけど、ダメな人間がぐだぐだしているうちに現実感が崩壊していって、最終的に祝祭的な幻想カタルシスにいたるところが好きでした。


    ※収録
    吊籠と月光と/ゼーロン/酒盗人/鬼の門/泉岳寺附近/天狗洞食客記/夜見の巻(「わが昆虫採集記」の一節)/繰舟で往く家/鬼涙村(きなだむら)/淡雪/文学とは何ぞや/気狂い師匠/文学的自叙伝

  •  大学のゼミでとりあげた作家。
     むしろゼミでの課題にならなかったら、一生読まなかったであろう本のうちの一冊。(だから大学は面白いと思う)

     古き良き日本の田舎の日常に、作者の愛したギリシャ神話の時代の「世界」が、お酒に漬けた果実のようにじわじわとしみとおっている世界観というか雰囲気が非常に心地よい。
     読み返してみて、「最近、この手の雰囲気もってる本をどこかで読んだな……?」と考えて、思い当たったのが「テルマエ・ロマエ」だったのはともかくとして(笑)(もちろんこの話はギャグではないけれど……)
     初期作品の「幻想」と「現実」の混じり具合が絶妙であるだけに、現実の配分の増える後期作品の読後感がほろ苦いのも、また一興というべきかもしれない。
     

  • 不思議な作品群だった。
    表紙にも書かれてるけど、ヨーロッパの知識とユーモア。
    でも作品からは日本の古きよき情景が浮かんでくる。
    和のイメージの中に突然降って来る西欧。
    アンバランスとコントラスト。
    あの時代を感じさせながら、この知識とセンスは素晴らしいの一言。
    驚きと笑いが入り混じった無二の作家だと思う。
    個人的に好きなのは「天狗洞食客記」。
    これが氏の作品を語るなら一番しっくりくるような気がする。
    表題作の「ゼーロン」も面白かった。
    「ゼーロン」から「夜見の巻」を読むとゼーロン(馬の名前)への愛憎の変遷が窺えて興味深い。
    短編が苦手な自分が楽しく読めた。

  • 苦い味わいのファンタジーで滑稽さと哀しみもたっぷり

  • センター国語のアレ。幻想的。

  • ダメと世界音痴のコンボ短編集。狂騒的世界、主人公の痛いような緊張状態、突然終わる構成などなど、作者の不安定さ、足掻きがよく表れている。自分がふがいないときなにか叫びだしたいような気持ちになるものだが、そういう気分によく合う本だった。

    牧野は自己の荒馬から振り落とされてしまったように思われた。このように書き続けていくことでバランスを取り、生きていけていたら良かったのだけれど。

    「泉岳寺付近」「天狗洞食客記」が、ほどほどに落ち着いたトーンでダメさが描かれていてよかった。

  • 1056夜

  • スリップスロップ!

    文章は上手いわけではないけども、この世界観?は秀逸!
    ギリシャの世界に迷いこんだような気持ちになります。
    珍しい話。

    あれからこれへ!これからあれへ!
    転がそう転がそう!セント・ゲイネスの樽のように!

    今日は白パン、明日は黒パン!


    こんなん。独特でちょっと覚えた^^

  • ゼーロンが読みたくて読みたくてもうほんとに

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著者プロフィール

1896(明治29)年〜1936(昭和11)年、小説家。幼少時よりオルガンや英会話を学ぶ。文学への関心を抱くようになり、1914(大正3)年に早稲田大学高等予科に入学する。1919(大正8)年に早稲田大学を卒業後、時事通信社に入社し、雑誌の編集記者となり、同窓の下村千秋らと同人誌『十三人』を創刊。短編「爪」が島崎藤村に認められたことが文壇への足がかりとなる。藤村の紹介で翌1920(大正9)年には『新小説』に「凸面鏡」を発表した。1923(大正13)年に作品集『父を売る子』を刊行する。父母を題材とする私小説的な作風だったが、昭和に入ると、ギリシャや中世のイメージを導入した明るい幻想的な作風に転じ、「ギリシャ牧野」と称されるようになる。「ゼーロン」(1931年)や「酒盗人」(1932年)などを発表しながら、雑誌『文科』を主宰する。その後、「夜見の巻」「天狗の洞食客記」(ともに1933年)、「鬼涙村」(1934年)、「淡雪」(1935年)などを残し、1936年3月24日縊死自殺。享年39歳。

「2022年 『嘆きの孔雀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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