大手拓次詩集 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 原 子朗 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 89
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003113318

作品紹介・あらすじ

生と死の交錯する妖しい夢幻世界を表現した特異な詩人。その全貌が、厳選された232篇から浮び上る。厳密な校訂を行った決定版。

感想・レビュー・書評

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  • この方の文語詩が好きです。

  • 古典と象徴の狭間より萌え出でた官能。

  • 大手拓次は、薔薇の詩人だった。一面にわたって咲き誇る野薔薇の類いではなく、贅沢な庭園に設えられた極彩色の薔薇でもなく、さながら小さな白い部屋を飾る、一輪の薔薇であった。萩原朔太郎や北原白秋によって絢爛たる達成に至った日本近代詩の世界でも、やはり拓次は淡く蒼白い、静謐で閑雅な薔薇として咲いた。

    拓次は、孤独の詩人だった。彼は孤独を愛した。ランボーやマラルメがそうであったように、彼もまた深くボードレールに共鳴した詩人であり、耽美と頽廃のフランス的文学空間に陶酔しつつ、そこに一人佇む詩人であった。詩壇、文壇から遠く離れ、日本語とフランス語の狭間で揺らめきながら双方を呼び続け、呼び掛け続け、口語の真実を探してことばの海を彷徨い続けた流離流浪の人であった。

    愚直に孤独を愛した拓次を、しかし、孤独は愛さなかった。その点に於いても、彼は強烈に個人であり、独りだった。彼を包んだ孤独の懐には、常に寒々しい病の影が瀰漫していた。止め処なく沸き立つかに見える拓次の詩情がいつもどこかに哀しい横顔を感じさせるのは、望んだ孤独に侵され、染められ、蝕まれてゆく自己の、暗く鋭い嘆きの所為なのかもしれない。

    拓次は、そして、祝祭の詩人だった。不均衡な聴覚、弱々しい視覚、不調と無理を満載した身体、そんな彼を嘲笑うかのような蒼白い孤独の渦動。その中にあって、それでも、拓次は祝祭の詩人だった。文学と詩作への途方もない愛と期待に充ち満ちて芳醇に匂い立つ、一筋の眩い閃きであった。その閃光は、朔太郎を照らし、白秋を貫いて、近代詩の核へ、口語詩の中心へと放たれた無限の祝福であり、穿たれた希望である。現在も鳴動し、反応し続けることばへの、詩への、創作への無垢な奉仕である。

    この国で詩を読み、詩を書き、詩を愛する人間は、大手拓次という花弁の内側で蜜を吸う薔薇の住人である。彼無くして近代口語詩の繊細で優美な達成はあり得なかっただろう。我々は今も、そしてこれからも、拓次の祝福の中を生きる。艶かしく照り返す陶器の薔薇が、ひび割れ、崩れて、土へと還るその日まで。

  • 北原白秋や萩原朔太郎、三好達治や中原中也といったビッグネームの陰に隠れて、大手拓次は、日本近代詩史において、極めて控えめに存在しているという印象がある。実は、彼は、作品のみならず、人物においても「控えめ」であった。しかし、その「あおじろむ指のさき」でなぞられた詩的世界は、なかなかに艶めかしくて、「満開の薔薇」のように濃密である。寝苦しい夜、大手拓次を読むというのはいかがだろう。案外、彼の詩神(ミューズ)があなたを心地よい眠りに誘ってくれるかもしれない。(2011:菊池有希先生推薦)

  • 薔薇の詩人と呼ばれた大手拓次。
    フランス詩が自分の花嫁とする彼の詩は、確かに日本語との格闘の跡が見受けられる。
    言葉選びももちろんだが、彼が構築していた世界観は誰も立ち入ることのできない崇高さでそこに存在している。

  • 私の鴉好きの原点。しかし、あまり鴉系統の詩入ってない。岩波さんで全集作る話あったのにな……青空文庫で読めますしね、、、でもやっぱり紙が愛おしい

  • 群馬県民w
    フランス象徴詩に大きな影響を受けたってことで、いかにもな感じだった。主題も薔薇や香料、片思いなんぞが前面に出てきている。
    大学の先生に薦められて読んだが、・・・まあ、詩のことは良くわからない。

  • 北原白秋門下3羽鴉(萩原朔太郎・室生犀星・そして大手拓次)の一人。いまいち知名度はないが、とても綺麗で幻想溢れる、どこか少し妖しさのある月夜のような詩。言葉に香気のある詩の数々は絶品です。

  • 病の苦しみは生きていくことの苦しみである
    生きようとして必死にあがくから苦しい
    そのことに気づいて甘やかな死の魅力に目覚め
    取りつかれた病弱な幼子は
    しかし、それによって生きる力をも得ることとなった
    死のイメージ…タナトスの存在を思うとき
    彼ははっきりと愛欲を感じたのだ
    しかしそのことは、彼にさらなる現世の苦しみをもたらす
    なんとなれば
    妄想の中の恋人を絶対化するあまり、彼は他者に対して
    きわめてラジカルな
    批評的な態度をとらざるをえないだろうから
    個人的には、象徴詩人としての大手拓次を
    僕はあまり評価しないのだけど
    しかしこの「大手拓次詩集」はむしろ
    ひとりの詩人が、恋に生きようとして敗れ
    妄想の薔薇園に去っていくまでの
    きわめて赤裸々な、精神史として、非常に面白く読めるものである

  • [ 内容 ]
    生と死の交錯する妖しい夢幻世界を表現した特異な詩人。
    その全貌が、厳選された232篇から浮び上る。
    厳密な校訂を行った決定版。

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