日本児童文学名作集 (下) (岩波文庫)

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  • 岩波書店 (1994年3月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784003114322

感想・レビュー・書評

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  • 児童文学とはいえ、格調高く深読みすればするほどはまっていく。当時の地域や時代なども伺えて民俗学的にもおもしろい。
    芥川龍之介『蜘蛛の糸』、菊池寛『三人兄弟』、小島政二郎『笛』、有島武郎『一房の葡萄』、江口渙『木の葉の小判』、秋田雨雀『三人の百姓』、室生犀星『寂しき魚』、島崎藤村『幸福』、佐藤春夫『蝗の大旅行』、宇野浩二『でたらめ経』、豊島与志雄『手品師』、浜田広介『ある島のきつね』、宮沢賢治『水仙月の四日』『オツベルと象』、千葉省三『鷹の巣とり』、内田百閒『影法師』、坪田譲治『魔法』、水上滝太郎『大人の眼と子供の眼』、壷井栄『がきのめし』、椋鳩十『月の輪グマ』、新美南吉『牛をつないだ椿の木』

  • 大正〜昭和期の文豪・作家による児童文学アンソロジー。芥川龍之介の蜘蛛の糸は、やっぱり読みやすかった。芥川龍之介は句読点の打ち方が常識的なので読みやすい。人柄はアレだけど……

  •  大正・昭和期の日本の児童文学選集。「赤い鳥」に掲載された芥川竜之介「蜘蛛の糸」(1918)から新美南吉「牛をつないだ椿の木」(1943)までの21編を収める。「赤い鳥」には、お伽噺から脱し、鈴木三重吉の審美眼によって選ばれた数々の童話が掲載された。とても流行したようで、この選集にも8編が収録されている。とはいえ、宮沢賢治を選ばないのは今から見るとちょっと偏ってると思うし、トムやハックを野卑なものとして排斥するなんて、三重吉と私は絶対気が合わないな…。
    芥川竜之介「蜘蛛の糸」(1918)「赤い鳥」掲載時の鈴木三重吉が手を入れたバージョンを収録。青空文庫が元の版なのかな、読み比べてみたが、改行や語尾(でした、です)などに手を入れているようだ。久しぶりに読んだが気持ちいいくらい切れ味がある。
    菊池寛「三人兄弟」(1919)。こちらも「赤い鳥」。菊池寛っぽい。3兄弟の中では二郎次がいちばん気の毒か。
    小島政二郎「笛」(1919)。「赤い鳥」。
    有島武郎「一房の葡萄」(1920)。「赤い鳥」。この話がいちばん好き。主人公の僕の気持ちがすごく良くわかる。いじめられるところとか身につまされるし、翌日、学校に行きたくない気持ちもすごくわかって胸が痛い。良い先生で本当に良かったし、僕自身もがんばって乗り越えて本当に良かった。
    江口渙「木の葉の小判」(1920)。「赤い鳥」。
    秋田雨雀「三人の百姓」(1920)。すごく良い。褒美なんかより育てた子供の愛おしいこと。
    室生犀星「寂しき魚」(1920)。「赤い鳥」。井伏鱒二「山椒魚」の世界観。
    島崎藤村「幸福」(1921)。寓話。
    佐藤春夫「蝗の大旅行」(1921)。
    宇野浩二「でたらめ経」(1925)。
    豊島与志雄「手品師」(1923)。「赤い鳥」。異国の香りがする面白くて怖い話。
    浜田広介「ある島のきつね」(1924)。
    宮沢賢治「水仙月の四日」(1924)。寒さの表現の美しくも厳しいこと。3番目に好き。幕切れも鮮やか。
    宮沢賢治「オッベルと象」(1926)。タイトルは知っていたが初めて読んだ。こんな話だったのかと衝撃。これは大正プロレタリアートの匂い。
    千葉省三「鷹の巣とり」(1928)。現代にも通じそうなやんちゃな男の子たちの冒険物語。甘えの三ちゃんがいいね。
    内田百閒「影法師」(1929)。
    坪田譲治「魔法」(1935)。「赤い鳥」。お兄ちゃんと弟のスケッチ。良くわかる。
    水上滝太郎「大人の眼と子供の眼」(1923→1936)。
    壺井栄「がきのめし」(1941)。これは4番目に好き。少女たちの体験がリアリティを持って描かれる。
    椋鳩十「月の輪グマ」(1942)。熊は恐ろしいので、絶対に母熊を怒らせてはいけない。少し危うい。椋鳩十が動物たちに対するスタンスをもう少し他の本で読む必要がある。
    新美南吉「牛をつないだ椿の木」(1943)。2番目に好き。新美南吉は瞳がとても綺麗なひとだったのではないだろうか。主人公の海蔵さんを嫌いになれる人がいるとはとても思えない。もちろん、道徳の香りもするけれども、でも本当に心が洗われ、自分自身を反省する。

  • 読みたかった作家が何人もいた。長いお話だと容易に手が出せないけれど、本作は児童文学を集めた名作集ということもあり、とても読みやすかった。色々な作家への入り口を作ってもらえてうれしい。
    作品のはじめに各作者の紹介文が入ってるのも個人的にはありがたい。このへんは岩波書店さまさま。
     菊池寛、有島武郎、室生犀星、島崎藤村、宇野浩二、内田百閒、椋鳩十、こんなふうに並べて書いてみて、改めてこの一冊を読めたことの収穫が大きかったのをひしひしと感じる。
     一作、とても好きだったものを挙げるとしたら、椋鳩十の「月の輪グマ」。作中の子グマがとても可愛らしく、また読み終わった後に通りすがる切なさが心地よい。

  • 新書文庫

  • 「寂しき魚」、「大人の眼と子供の眼」、「牛をつないだ椿の木」が良かった。

  •  図書館から借りました

     短編集。
     芥川龍之介の「蜘蛛の糸」、宮沢賢治の「オツベルと象」が入っている。
     室生犀星、有島武郎、島崎藤村、等々そうそうたるメンバー。
     ある島のきつね、が可愛い。
     きつねはお寺のまんじゅうを盗み食いしていると、耳と目の不自由なおばあさんが来てしまう。
     夫の供養に経を上げて欲しいと言われて、狐はおばあさんが気の毒で、お坊さんも夜まで帰ってこないし、と、「こんこんこんっ」とお経みたいなものを唱えてやる。
     想像すると、可愛い。

  • 有名作品がたくさん掲載されていて、一部しか読んだことなかったのとかタイトルしか知らんかったのとかきちんと読むことができた。
    坪田譲治ってもっと暗いイメージやったんやけどかわいかった。
    室生犀星もっと読みたい。
    内田百閒は挿絵も含めてよかった。

  • 書かれた当時の社会と作品を同時にみることで、深い味わいがうまれることもあるんだと気付く一冊だった。一番最後の新美南吉の作品が胸に響いた。さきに下巻に手を出してしまったけれど、上巻も読みたい。

  • 大正〜昭和期の児童文学作品。

    幻想的・詩的なもの、子ども達の生活を活き活きと描いたものなど、読んでいて惹きつけられる。

    正直であれ、優しくあれ、という願いが込められた作品は、どの時代にも共通して見られる。
    上巻で取り上げられた作品群よりも、人の心の暗い面を描くものが多くなっている印象。

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著者プロフィール

昭和8年6月6日生まれ
句集に『春亂』『花表』『龍集』『晝夜』『俳句物語』『魁星』『不断』『夜夜』等
「犀」代表
現代俳句協会名誉会員

「2023年 『だんだん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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