山月記・李陵 他九篇 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
4.06
  • (137)
  • (78)
  • (116)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 901
レビュー : 118
  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003114513

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 山月記の衝撃は忘れない

  • 本書は色々なところのおすすめ本リストでしょっちゅう見掛ける。
    そんな訳で面白くない訳が無いだろうということで、読んだ。

    中島敦は短命で、作品数もそんなに多くない。
    ここに収録されている11篇でもかなりの割合になる筈。
    因みに歴史ものや体験記など、作品のジャンルは中々節操が無い。

    『李陵』などの中国の歴史を扱ったものは、私が歴史を知らないので何とも言えないところもあるが、硬い文章ながら難解ではなかった。
    『山月記』なんかは歴史というよりはお伽話で、
    南国体験の『環礁』シリーズは、何よりしれっと発揮されている観察眼に関心する。

    一番面白かったのは『悟浄出世』と『悟浄歎異』の「わが西遊記」シリーズ。天才孫悟空と俗物猪八戒の間で悶々とするニヒリスト沙悟浄が主人公という設定がもう楽しい。
    是非このシリーズは書き上げていただきたかった。

  • 短編集。「悟浄歎異」が面白い。西遊記に外枠を借りた作品で、沙悟浄(河童)目線で悟空と三蔵法師を分析する。
    高校時代、現代文の模試でこの作品の抜粋が出題された。それは悟浄が三蔵法師について分析している部分だったが、当時はまったく意味が分からなかった。しかし、30歳を過ぎた頃、偶然青空文庫で拝見し衝撃を受けた。
    悟空と三蔵法師の決定的な違い。そしてそれを語る沙悟浄(=中島敦)の人物像も透けて見える傑作である。

  • 主に中国古典・南洋滞在エッセイ・南洋以外の経験エッセイが収録された作品集。

    「李陵」を読み始めたもののなかなか頭に入ってこず、これは読破できるのだろうか…と心配になった私。しかし気付けばどっぷりはまり中国史への興味がうなぎのぼりに。
    処罰を受けた司馬遷の葛藤の描き方が素晴らしい。

    西遊記の沙悟浄が悟空について語る「悟浄款異」も面白い。この上なく生命力に満ち満ちた賛美は今後も出会える気がしないほど。筆が生き生きしてます。そして最後の1ページの悟浄のいじましさときたらもう。あの姿を差し引いても愛おしい気持ちが抑えられません…!
    「牛人」も中国古典版ホラーといった感じで不気味さ満点です。

    自身の経験を書いた随筆はちょっと病的だったり、世界観のゆるさが「李陵」などと比べると見劣りしてしまったりでそこそこ。
    どのキャラクターも哲学的な考察が多く、味わいながらじっくり楽しんだ中国創作ものが気に入った。
    この一冊で中国時代モノに開眼した私、水滸伝や三国志など四千年の歴史に挑む覚悟です。

  • 「山月記」が短いけど含蓄があって耳に痛い話でした。
    真理を探究し懊悩する「悟浄出世」も自分が知ってる西遊記とは全く視点の違う話で面白かった。

  • 有名な李陵や山月記、文字禍を始めとして名人伝、弟子、牛人、悟浄出世、斗南先生、環礁などを収録している。漢語系の文章が多いが、自身の短い人生の中の出来事由来の文章もあって多彩。
    特に飽きることなく読めた。個人的にはやはり山月記と西遊記2つがおもしろい。

  •  新潮文庫に載ってない分の作品が読みたかったので。

     中島敦の文章好きだなぁ。読みやすい。
     多くの作品で、「それを考えることが偉いなんて思ってないし、思いたくもないんだけど、無視できている人の神経がわからない」っていう、考える自分自身への葛藤みたいなのがあって、すごく共感しながら読んでた。

    「文字禍」「悟浄出世」「悟浄歎異」「狼疾記」が好き。
     悟浄の、旅の仲間達を尊敬しながら見てる様子、かわいかった。

  • 中学の教科書にあって、トラウマになった一冊。中国の古典の再発掘モノはやっぱり面白い。芥川の杜子春や鼻などと引けをとらない。
    また、漫画の"うしおととら"を思い出した。

  • 漢文詩的な書き方で、美しい言葉の響きと流れを持ち、心の中に分け入りながら、人間の機微に巧く触れてくる書き手だ。

    『人生は何事をも為さぬには余りにも長いが、何事かを為すには余りに短いなどと、口先だけの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己の凡てだったのだ』

  • 2010年2月5日第9回ブッククラブ『山月記』: (感想)おもしろい/矜持の高さが招いた悲劇/不条理/虎は死しても皮を遺す 後世に名を遺そうと詩作するが虎になる 中島敦は若くして亡くなったが読みつがれる作品を遺した/作者の内面吐露、告白/漢学の素養たっぷり/リズムがあって読みやすい/最後のあの詩はいいの? (後記)昨年は中島敦生誕100年で新聞や雑誌に特集記事。参加者皆再読。好評。高評。もっと中島敦を読んでみたいというリクエスト。
    2010年6月5日第10回ブッククラブ『李陵』 : (感想)山月記よりおもしろい/難しい/山月記の方がいい/司馬遷の述而不作(述べて作らず)心に残った (後記)ブッククラブの期間が空きすぎて話が作品からそれて感想が出なかった。図書部員がっかり。

著者プロフィール

中島敦

一九〇九年(明治四二)、東京・四谷に生まれる。三〇年、東京大学国文学科入学。三三年に卒業し、横浜高等女学校に国語科教師として就職。職の傍ら執筆活動に取り組み、「中央公論」の公募に応じた『虎狩』(一九三四)で作家としての地位を確立。四一年七月、パラオ南洋庁国語編修書記として赴任。持病の喘息と闘いつつ『山月記』『文字禍』『光と風と夢』等の傑作を書き上げる。四二年(昭和十七)、職を辞して作家生活に入ろうとしたが、喘息が重篤となり、同年十二月に夭折。

「2019年 『南洋通信 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山月記・李陵 他九篇 (岩波文庫)のその他の作品

中島敦の作品

ツイートする