- Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003114711
感想・レビュー・書評
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小島政二郎はもともと気弱だった
いつも人に合わせる、気苦労の絶えない男だった
小説家としては芥川龍之介に心酔し、文章の美しさにこだわっていたが
世間からまったく注目されず、自身の創作も行き詰まっていた
しかし、芥川の家で知り合ったライバル・菊池寛から軽く扱われ
精神的に追い込まれた彼は
佐藤春夫の文章をヒントに、自らの殻を破ることに成功
また鈴木三重吉との確執を経て、その義理の妹と結婚したことで
徐々に自我の目覚めを得た
そして、睡眠薬を飲みすぎた菊池の狂乱を目の当たりにしたとき
小説家として、ひとつの悟りを得た
文章を飾っても仕方ない
自己の思想に基づいて世の中を語らなければ読み手の心を揺さぶれず
そのためには、自己を肯定しなければならない
それに気づいた小島は、出世作となる「一枚看板」を書くのだけど
そういう考え方が後年
小島にまつわるさまざまな悪評の流布した原因にもなったと思う
芥川龍之介も「一枚看板」は絶賛したが
やはり後年、逆に小島は芥川に否定的な評伝を出している
しかし「龍門の四天王」と呼ばれた人物の立身伝であり
教養小説であるこの作品は
大正時代の文壇を、ある一面から非常にいきいきと書いており
興味深いものだ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芥川龍之介の2年先輩でありながら作家としては随分後輩な作者が小説とは何かを友人である芥川、菊池等との付き合いを通じて成長する姿が判ります。また芥川は偉大な作家である事を改めて感じました。
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著者の自伝的小説であり大正文壇史でもある。
芥川龍之介と知り合いその読書量、知識
すべてに惹かれ、菊池寛には最初反発を
覚えるものの自身の中で再評価し交友を深める。
どんどん力を伸ばしていく周囲と比較して
自身の力量の無さにほとほとがっかり
していた著者が長い時間をかけて
自身の考え方を変えて成功していく。
代作について読みたかったので手に取りましたが
芥川、菊池との交友や文壇史的内容がとても面白かったです!
菊池、芥川、著者の三人の旅行中に菊池が薬を
飲み過ぎるくだりは同じ内容をどこかで読んだことある…
と
がんばって記憶をたどると、なんのことはない
北村薫『六の宮の姫君』で主人公の私がこの本を
円紫さんからお借りして該当部分を読んでました。
20年ほど前に「私」を通して読んでたんですね(´艸`*) -
2015年4月22日読了。
素晴らしかった。自らへの問いかけと、書くことへの執着。本当に素晴らしい。 -
芥川・菊池寛らとの交友に恵まれながらも、小説について著者が苦悩・模索している姿が描かれている。著者の苦悩・喜び・決意などの感情がストレートに描かれているのが印象的。
大正時代の雰囲気、芥川らとの交友についても分かり面白い。 -
文豪のことを知ることが出来てよかった。
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著者と芥川、菊地寛との関係が面白い。
また、鈴木三重吉に関しては目から鱗であった。 -
岩波文庫にも萌えはあるんだお。
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小島の私小説(・・・だよね?)
芥川とか菊池とか・・!個人的には、小島の奥さんが非常に愛らしいと思います・・・!(笑)