新美南吉童話集 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003115015

感想・レビュー・書評

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  • 『ごん狐』を始め『おじいさんのランプ』『最後の胡弓弾き』など14の作品を収録した新美南吉童話集。

    昨年2013年に生誕100年の節目を迎えた著者の作品を折角なので読み直してみました。落ち着きと温かみのある作風は時代を経ても全く色褪せず、その情景が鮮やかに目に浮かびます。一つ一つの作品は短いものの、優しさと切なさの余韻を残す美しい作品ばかり。
    とある書評で「心が洗濯されるよう」という感想を目にしたがまさにその通りだと思いました。

  • 「ごん狐」や「手袋を買いに」で有名な新美南吉さんの作品集。
    私は、やはり国語の教科書で読んだこの2つが印象深かったため動物ものの童話作家というイメージが強かったのですが、今回読んで一番心に残ったのは「おじいさんのランプ」。
    素朴な文体で描かれる、時代の移ろいに廃れていくものの哀愁と、おじいさんの哀しみにぐっときました。

  • 廃れていくものたちへの哀切。人の浅ましさ、暖かさ。そして、世の中の汚さをも許容する朗らかさ。
    おかしみと切実さをほどよく混ぜ合わせて、読者を楽しませながらも揺さぶってくる、優しい童話集でした。


    ・ごん狐
    本気で泣いてしまいました…。気持ちって、どうしてこんなにも伝わらないのでしょうか。ごんや兵十のような、取り返しのつかないことへの後悔って、大人になってからの方が共感できると思います。

    意外だったのが、兵十のおっ母の、死の間際に鰻を食べたがったこと自体、ごんの想像に過ぎないということ。兵十にはごんがどうして栗をくれたのか、その理由すら分からないかも。なんとかなしい…

    ・赤い蝋燭
    小川未明がよぎりますが、こちらは至ってほのぼのした超短編。勘違いからくる無用の大騒ぎが可愛らしい。

    ・最後の胡弓弾き
    木之助の、大切なものを失った寂しさを考えると切なくなります。もうだれも聞くことがないとしても、胡弓を買い戻したくなるほどに、彼は胡弓に生活を捧げていたんですね。

    ・屁
    他人に罪をなすりつける人間の狡猾さを、それも生きるためと肯定する。なかなかたどり着けない境地です。自分が理不尽な目にあう側だったとしても、そんな風に悪を受け入れられるか、自信がありません。

    ・おじいさんのランプ
    仕事を奪われそうになった巳之助の、区長さんの家に放火しようとするところ、本当に恐ろしかった…思い直してくれてよかった。最後の胡弓弾きに繋がる、なくなっていくものへの哀切限りない作品でした。

    ・狐
    子どもの頃って、妙な心配事に取り憑かれてしまうことありますよね。自分が狐に取り憑かれてたらどうするの、とお母さんを問いつめる文六ちゃんと、その話に真剣に答えるお母さん。「母ちゃんはびっこをひきひき…」には思わずほろりときてしまいました。

  • 「ごん狐」や「手袋を買いに」で有名な作家ですね。こちらに収録された14篇を読んで感じたのは、童話と言えど、単純な勧善懲悪ではなく、大人になる過程で感じること、体得することを、主人公の視線を通して容赦なく描いてくるな、というところで。(その事について、良い悪いを判断するのはあくまで読み手の心なんですが。なのである意味とても道徳の教科書みたい…)
    作品を書いてる時代の関係で、いわゆる時局的な表現もあり、これまた別の意味で考えさせられるものでした。

  • 童話集なので子供向けの話なのかと読んで見たら、案外そうでもないと感じる。

  • 「手袋を買いに」が好きだったけど親になって読むとまた違う種類の感動に涙する。純粋な子ぎつねの坊やも可愛いけれど、坊やが子ぎつねとわかりながら手袋を渡してあげた店屋の主人にも。「最後の胡弓弾き」という話は知らなかったのだが少年から大人へ、大人から老人へと生きる時間の深み、時代の移り変わり、無情さ…しみじみと読んだ。

  • 特に印象に残ったのは赤い蝋燭、屁、牛をつないだ椿の木。

    赤い蝋燭はいかにも童話的な、動物を主人公としてた、優しくも楽しげで温かい世界が描かれ、読んでいて温かい気持ちになる。

    屁という作品は児童向け童話にしては難しいのではないか。着眼点は非常に面白い。ある事件をきっかけに、主人公の周りの世界が変わって見えてしまう。世界とは不安定なもの、というのを実にユニークな視点から描いている。この短編の末尾もまた、短刀のように心にちくりと刺してくる。

    牛をつないだ、は後半での母のセリフに主人公がはっとなり改心する場面が好き。

    世界も人も変わっていく。その残酷さ、無情さ、しかしそれはそれで仕方ない。その中でも人のよき心というのは変わらないはず。そこにつながりを求めたい…というような作者の想いが、全体の物語の内に、流れているメッセージのような気がした。

  • 小学生の頃、新美南吉童話で知っていたのは教科書に載っていた「ごん狐」と「手袋を買いに」の2つでした。
    特に「ごん狐」は大好きで、寂しがりやで根は悪くは無いものの、ついつい村人にいたずらをしてしまう子狐が、可愛らしくてたまらなかったものでした。

    大人になってからは、新美南吉の「光」の描写の上手さに驚きました。
    こぎつねの可愛らしさがこれまたたまらない「手袋を買いに」ですが、雪の光、月の光、街の灯りなどの日本語描写が本当に綺麗です。

    今回、この『新美南吉童話集』で初めて読んだ短篇は幾つもありましたが、どれを読んでも心が洗われる思いでした。
    その初めて読んだ中でもとりわけ好きだなと思ったものは、「赤い蝋燭」と「おじいさんのランプ」でしょうか…。

    また「竜宮城のような」という形容詞は、2度出て来て印象的でした。1度目は「最後の胡弓弾き」、2度目は「おじいさんのランプ」です。

    最後に蛇足でありますが、
    チェコの童話作家でもあり挿絵画家でもあるヨゼフ・ラダも大好きでして、
    ヨゼフ・ラダも新美南吉も、どちらも明るくほのぼのとしたユーモアを根底には持ちつつ、牧歌的な風景を描くのが得意な童話作家かな…と、個人的には思っております。

  • 短編集といってもいいぐらいの読み応えです。14のお話はほのぼのとした哀愁にテーマが込められ、大人の胸にもズーンと響いてきます。
    子どもの頃、「ごん狐」の結末に涙が止まらなかったのを、そして「手袋を買いに」では「円いシャッポの看板のかかっている家を探すんだよ」の「シャッポ」の言葉の響きが大好きだったのをよく憶えています。
    今回一番感動したのは「おじいさんのランプ」。ランプに石をぶつけるところが泣けました。

  • ほんわかと、しかし、厳しい。切なく、暖かい物語がつまっていた。
    後、ちょうど日本の戦前の時代で戦争に行ってしまったなどの結末も多かった。

    ●ごん狐
    漁師兵十が仕掛けた罠のウナギをごん狐ごんが食べたから、兵十のおばあさんが死んだと思い込んだごん。それから兵十に自分が狩った食べ物を置いていくようになるが、、、、兵十にみつかり、、、

    ●最後の胡弓弾き
    最後の最後まで家々へ訪ね、胡弓を弾いて商売をしていたが、近代化に伴い、そのような文化がなくなってきた。
    最後には胡弓は入らないと思って古道具屋に売るが、やはり、思い出の品、取り返したところ、金を払わねばならなくなった。。。

    ●うた時計
    久しぶりに帰ってきたどら息子。
    が、次の日にはもう帰路へ付く。そこへ近所の子供がやってきて、いろいろと話をし始める。夫婦の大切なうた時計の思い出の大切な話。
    その話を聞いているうちに、うた時計を盗んで売ろうと思っていたが、近所の子供へかえしたとさ。

    などなど

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著者プロフィール

1913年愛知県生まれ。半田中学から東京外国語学校に入学。中学3年の頃より文学に興味を持ち始め、童謡、詩、童話の創作活動を始める。雑誌「赤い鳥」に投稿、鈴木三重吉の推薦を受ける。東京外国語学校卒業後に喀血し帰郷。その後女学校の教師をしながら執筆活動を続けるが、1943年結核により逝去。享年30歳。代表作に『おじいさんのランプ』『牛をつないだ椿の木』などがある。

「2017年 『がちょうのたんじょうび』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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