新美南吉童話集 (岩波文庫)

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レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003115015

感想・レビュー・書評

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  • 2019/10/3 読了

  • 良くも悪くも、透き通る強さをもった童話ーー物語たち。それだけに、新美南吉がもしもう少し長く生きたなら、もっといろいろなものを見たならどんなものを書いたろうかと思ってしまう。かれの書くうつくしさが、戦争の美化から切り離されることもあったろうか。其処此処に通う清い情緒の血が、もっと濃く通うこともあったろうか。

  • とてもに美しい物語の数々。日本の原風景なんていう安っぽい言葉で表すのは気が引けますが、かつての人びとの暮らしや擬人化した動物たちの生活が豊かに描かれています。そしてその中に、本当に繊細な心の動きが表現されていて、これもまたチープな言い回しですが、なにか忘れていた気持ちがよみがえる気がします。

    例えていうならば、よく晴れた日に干した布団のようなふかふかの、そういう物語であり、またそれを読む側もそういう心持ちにさせられます。

    新奇な技巧上の試みがあったり、社会に対する鋭い批判の眼差しがあったりするわけでは決してありません。文学の価値が、そういったものだけで決まるわけではない、ということがよくわかります。

    気持ちよく本を閉じることができる、そういう名作が詰まっています。

  • ・ごん狐
    ・手袋を買いに
    ・赤い蝋燭
    ・最後の胡弓弾き
    ・久助君の話
    ・屁
    ・うた時計
    ・ごんごろ鐘
    ・おじいさんのランプ
    ・牛をつないだ椿の木
    ・百姓の足、坊さんの足
    ・和太郎さんと牛
    ・花のき村と盗人たち
    ・狐

  • 「ごん狐」や「手袋を買いに」で有名な新美南吉さんの作品集。
    私は、やはり国語の教科書で読んだこの2つが印象深かったため動物ものの童話作家というイメージが強かったのですが、今回読んで一番心に残ったのは「おじいさんのランプ」。
    素朴な文体で描かれる、時代の移ろいに廃れていくものの哀愁と、おじいさんの哀しみにぐっときました。

  • 廃れていくものたちへの哀切。人の浅ましさ、暖かさ。そして、世の中の汚さをも許容する朗らかさ。
    おかしみと切実さをほどよく混ぜ合わせて、読者を楽しませながらも揺さぶってくる、優しい童話集でした。


    ・ごん狐
    本気で泣いてしまいました…。気持ちって、どうしてこんなにも伝わらないのでしょうか。ごんや兵十のような、取り返しのつかないことへの後悔って、大人になってからの方が共感できると思います。

    意外だったのが、兵十のおっ母の、死の間際に鰻を食べたがったこと自体、ごんの想像に過ぎないということ。兵十にはごんがどうして栗をくれたのか、その理由すら分からないかも。なんとかなしい…

    ・赤い蝋燭
    小川未明がよぎりますが、こちらは至ってほのぼのした超短編。勘違いからくる無用の大騒ぎが可愛らしい。

    ・最後の胡弓弾き
    木之助の、大切なものを失った寂しさを考えると切なくなります。もうだれも聞くことがないとしても、胡弓を買い戻したくなるほどに、彼は胡弓に生活を捧げていたんですね。

    ・屁
    他人に罪をなすりつける人間の狡猾さを、それも生きるためと肯定する。なかなかたどり着けない境地です。自分が理不尽な目にあう側だったとしても、そんな風に悪を受け入れられるか、自信がありません。

    ・おじいさんのランプ
    仕事を奪われそうになった巳之助の、区長さんの家に放火しようとするところ、本当に恐ろしかった…思い直してくれてよかった。最後の胡弓弾きに繋がる、なくなっていくものへの哀切限りない作品でした。

    ・狐
    子どもの頃って、妙な心配事に取り憑かれてしまうことありますよね。自分が狐に取り憑かれてたらどうするの、とお母さんを問いつめる文六ちゃんと、その話に真剣に答えるお母さん。「母ちゃんはびっこをひきひき…」には思わずほろりときてしまいました。

  • 「ごん狐」や「手袋を買いに」で有名な作家ですね。こちらに収録された14篇を読んで感じたのは、童話と言えど、単純な勧善懲悪ではなく、大人になる過程で感じること、体得することを、主人公の視線を通して容赦なく描いてくるな、というところで。(その事について、良い悪いを判断するのはあくまで読み手の心なんですが。なのである意味とても道徳の教科書みたい…)
    作品を書いてる時代の関係で、いわゆる時局的な表現もあり、これまた別の意味で考えさせられるものでした。

  • 童話集なので子供向けの話なのかと読んで見たら、案外そうでもないと感じる。

  • 「手袋を買いに」が好きだったけど親になって読むとまた違う種類の感動に涙する。純粋な子ぎつねの坊やも可愛いけれど、坊やが子ぎつねとわかりながら手袋を渡してあげた店屋の主人にも。「最後の胡弓弾き」という話は知らなかったのだが少年から大人へ、大人から老人へと生きる時間の深み、時代の移り変わり、無情さ…しみじみと読んだ。

  • 特に印象に残ったのは赤い蝋燭、屁、牛をつないだ椿の木。

    赤い蝋燭はいかにも童話的な、動物を主人公としてた、優しくも楽しげで温かい世界が描かれ、読んでいて温かい気持ちになる。

    屁という作品は児童向け童話にしては難しいのではないか。着眼点は非常に面白い。ある事件をきっかけに、主人公の周りの世界が変わって見えてしまう。世界とは不安定なもの、というのを実にユニークな視点から描いている。この短編の末尾もまた、短刀のように心にちくりと刺してくる。

    牛をつないだ、は後半での母のセリフに主人公がはっとなり改心する場面が好き。

    世界も人も変わっていく。その残酷さ、無情さ、しかしそれはそれで仕方ない。その中でも人のよき心というのは変わらないはず。そこにつながりを求めたい…というような作者の想いが、全体の物語の内に、流れているメッセージのような気がした。

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著者プロフィール

1913年愛知県半田市に生まれる。『赤い鳥』に「ごん狐」など多くの童話、童謡を発表した。東京外国語学校を卒業後、小学校や女学校などで教鞭をとる。18歳のころ『赤い鳥』に童話を投稿して掲載され、その後「ごん狐」など多くの童話、童謡を発表した。1943年、29歳で早逝した。

「2019年 『2ひきのかえる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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