本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (246ページ) / ISBN・EAN: 9784003115619
みんなの感想まとめ
山に対する謙虚で真摯な姿勢が印象的な本書は、著者の藤木九三が山登りを通じて感じた思索や感情を綴っています。富裕層やエリート階級の登攀者たちの陶酔感が描かれる一方で、山そのものへの敬意が表現されており、...
感想・レビュー・書評
-
RCC創立者、滝谷の「藤木レリーフ」で有名な藤木九三の著書。ずっと「きゅうぞう」と読んでいたが、正しくは「くぞう」であったことを本書で知った。
大島良吉しかり、この時代にあって大学に行き、洋行し、案内人を雇って山に登る富裕層・エリート階級の人たちが綴る山の本はなぜか鼻持ちならない。限られた人たちがやる山登り、それを通じてみられる景色、それらから綴られる詩。陶酔しているなと感じてしまう。
全体的な所感はこんなものだが、加藤文太郎や好日山荘創立者の話や、藤木九三が翻訳編纂したクライミング教本から「懸垂」、「捨て縄」などの用語が生まれたことなど、心くすぶられるところもあった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルに惹かれて、藤木九三さんの本を初めて読んでみました。
読んですぐ感じたのは山に対して、謙虚で真摯であるということ。
クライミング系の本は色んな人が書いたメラメラした登攀記も面白く読ませてもらっていますが、山を通しての自分を表現したものばかりです。
山についてのみ考えている筆者の態度は美しく、この筆者の他の本はどんなもの何だろうと気になってしまいました。
山を感じるために自分の個性を出さないように努め、そうありたいと冀っている。
この本は敢えて個性を出すが、その心が、企てが、山を汚し、山を侵し、山を攀ずる人々の気持ちを損うような結果をもたらしはしないかを、ひたすらに慴れる。
冒頭でこのように綴る筆者の奥ゆかしさに感心せずにはいられませんでした。 -
つまらない…読み進めるのが苦痛。
昔のインテリおじさんのエッセイってほんと苦手。「俺って軽妙洒脱」って酔ってる臭みがふんぷんとしてて、読むに耐えない…
-
「ヨーロッパ・アルプスから神戸の山並みまで、関西の登山家・新聞記者藤木の悠々たる山談義。」(『岩波書店 出版お知らせ 1998 8』より)
不思議な題名の本ですが、けして江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』のような猟奇小説ではありません。著者の藤木九三は明治二十年生まれ、第一次R・C・Cの創設者で先鋭的な岩登りを提唱・実践したアルピニストであり、職業的にはジャーナリスト(朝日新聞の記者)でした。大正十五年にはヨーロッパに留学し、マッターホルンや、シュレックホルン、ワイスホルンなどに登った。その登攀記は『雪・岩・アルプス』という山行記にまとめられています(『忘れえぬ山Ⅰ』所収)。
この本は初版が昭和四年(1929年)ですが、1998年になってから岩波文庫に、ほぼ70年経って収録されました。書かれた当時は戦争の影が覆い来る時代ではありますが、まだまだ大正の良き時代を感じさせるようなとぼけた味が好ましい一冊です。カバー裏には、『ヨーロッパ・アルプスで出会ったガイドのエピソード、セガンチーニらアルプスの画家、好人物の山道具屋の主人、地形図を読む楽しみ、電車から眺める六甲の親しい山並み-関西の新聞記者・登山家藤木九三の悠々たる山談義。』と書かれています。
著者が「序」に「忌憚なくいう事を許されるならば、私は『屋上登攀者』に、自身と得意の幾分を感じている。くだらない事かも知れないが、書中に紀行や写真を挿入しなかったことも、著者の個性だとして諒解し、受け入れてくれる人があれば、非常に嬉しい」と記しているように、確かに著者は山岳紀行文を叙情性たっぷりに書くようなことはしていません。そして、詩、随筆、研究、等等、内容的には種種雑多な山に関する作品が集まってこの本を形づくっています。池内紀氏の解説によれば、「藤木九三は「垂直の散歩」を語って、みずからひとりよがりの感激にひたることを厳しく禁じた」のだそうです。そして、「抒情を覚えたときは、そのための文体である詩形をとった。」そのため、散文には山への思い入れたっぷりな登攀記はないが、合間に短い詩が挿入され、『屋上登攀者』もその詩の一編の題名でもあります。
しかし、この本の中の散文にもけして抒情がないとは思えません。低山徘徊趣味に対する反発で登攀記には叙情性を入れないが、エッセイにしても、小説のような掌編にしてもすべてに作者の山への思いがひしひしと感じ取られ、極めて叙情性の高い文章だと思えます。当時のいわゆる抒情性たっぷりな山行記を読んで比較してみなければわからないのかもしれませんが、これは時代の変化による感じ方の相違なのでしょうか?
この本は基本的には登攀をテーマにしたエッセイ集ですが、池内紀氏が解説中に書いているように、「エッセイのほか、詩、短編小説、単独登攀に関する考察、ザイル・テクニックとピッケルについての研究などを収めて」います。そして、それら雑多な形式の文学を「三篇の詩がはさまって四つのブロックにわけ、それぞれがゆるやかに主題を発展させる仕組みになって」いて、章立ては、次のようになっています。
山旅と峠
FÜHRERBUCH
取残された『美』
ザイル・テクニックと氷斧の変遷
『岳』から降りて来た男(詩)
好日山荘
岩場の幻想
『毛虫』
座席
屋上登攀者(詩)
単独登攀考想
マッターホルンの曲
ある日のウィムパー
二人の登攀者(詩)
童心
屑屋とスキー
山の危難に就いて
ガイドレス登攀の考察
この中の一編『取残された美』で語られるように、セガンチーニやホドラーの描くアルプスの情緒よりも、ウィーランド描く「怪奇な岩の尖鋭さ」を好む作者は、やはり根っからの先鋭的な登攀者だったのでしょうか。 -
2010/4/18購入
2010/10/23読了
この本が好きな人におすすめの本
藤木九三の作品
本棚登録 :
感想 :
