明治のおもかげ (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003116210

作品紹介・あらすじ

縁日の遊び、雪の屋根船、幇間宗匠、湯治場の昔…。江戸のかげのまだ濃い明治の東京を、淡々と何げなく語る。明治から昭和にかけて『団々珍聞』を振り出しに半世紀を新聞記者として活躍した著者は、雑俳の宗匠としても名を成していた。粋人らしい機知と感性、ジャーナリストの観察眼が融合した1冊。

感想・レビュー・書評

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  •   明治元年に生まれ、明治と昭和初期を生き抜いた、新聞記者にして雑俳の宗匠、鶯亭金升が、自らの思い出をもとに明治という時代を描写する。長くても数ページの、短い文章によって描かれる明治の風景は、戯作者同士の悪ふざけあり、縁日のとんでもない見世物あり、悲喜交々の生活あり、落語の頭にありそうな地口や小咄もあり。
     今は全く見られない、明治ならではの粋な点描……と書きたいところだが、意外と現代でも、多少の道具立てを変えればありそうな出来事も多い。もともと金升が自らの日記をもとに書き下ろしたということもあり、質の高いブログを読んでいるような趣がある。戯作者たちが仲間を巻き込んでどたばたするおふざけも、今のネットにあふれる「ネタを実際にやってみる」面々に相通ずるところがないでもない。もっとも、ここに出てくる戯作者や、変わり者たちは、自らの悪ふざけを「ネタですから」と言い訳するような無粋なまねはもちろんせず、やったことの後始末をしてひどい目にあったり、相手の機嫌を損ねて平身低頭であやまったりするので、「悪ふざけ」として許容されるのだけれど。
     明治は激動の時代で、歴史として見るとあまり安らぎのないようなうねりばかりに感じられるけれど、そんな中でも、ここに描かれるようなやさしい風景は、確かに存在したのだろう。安らぎや幸せというものは、大きな時代の流れで決まるとは、必ずしもないのだなと、この本を読むと感じるのである。

  • 数行で終わる短い話や、数頁に渡る少し長めの話がずらっと並んでいて、ぞっとする話もあれば不思議な話も、くすっと笑ってしまう話もあって。想像で思い浮かべるしかないけれど、明治という時代の雰囲気が伝わってきて懐かしいような、淋しいような感じがした。

  • 落語を読んでいるような味わいです。
    面白いものは今でも面白いのですね。

    落語の枕部分のみ、ハイライト部分のみ、サゲの部分のみでまとまっていたりするので、これらをつなぎ合わせればひとつの落語ができそうです。
    ネタ帳見ちゃったような気分です。

  • 明治初めの粋人というか、道楽者の姿が目の前に甦る一冊。ともかくすごーーーく面白いので、騙されたと思って読んでみてください!

  • 明治元年生まれの作者。明治の逸話で構成されているこの本は、明治の油ぎった様相、時代からこぼれおちた没落の悲哀があいまじっています。「勝ち組」「負け組」の二分化の様相になんだか今の世相を思い出しました。

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