欧米の旅 上 (岩波文庫 緑165-1)

  • 岩波書店 (2001年8月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (500ページ) / ISBN・EAN: 9784003116517

みんなの感想まとめ

旅の魅力と歴史的背景を織り交ぜた旅行記は、著者の豊かな感受性と教養が光る作品です。昭和13年から始まるこの旅行は、当時の欧米の美しさや人々の温かさを描写しつつ、ナチスドイツへの疑問も浮き彫りにします。...

感想・レビュー・書評

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  • 欧米の旅
    野上弥生子
    上中下3巻

    第二次世界大戦前の欧米旅行記

    昭和13年10月 上海から旅行スタートし、上巻では イタリアの美しさを描き、中巻では イギリスの人々の温かさを感じ、下巻では ナチスドイツに疑問を感じる構成。

    本編の前に 加賀乙彦 解説、序、跋(ばつ) から読む方が この本の歴史的価値を認識できる

    加賀乙彦 解説
    *旅行が行われたのは日中戦争の最中、本が刊行したのが太平洋戦争の最中
    *エジプト→ギリシア→イタリアの順番が著者のヨーロッパの見方を定めた〜イタリアは著者の心を惹きつけた

    序(昭和17年4月)
    *この旅行は 平和な世界を見た最後の機会だった
    *著者が見た国々の影像は 今後どんなに変貌しようと「かくあった」ことを知らせる点で役立つ


    跋(昭和18年5月)
    *日本人の輝かしい勝利は〜従来の国際的繋がりを引き裂き〜昨日の敵も盟邦に、親交のあった国も仇敵となった
    *今度の戦争は 政治的に 文化的に〜欧米のすべての国を根本から改変するに違いない


    ミケランジェロ「哀傷」に対する哀しみ
    何か新しい歴史が始まる時〜犠牲の役をつとめた息子〜聖母の顔に示された悲しみは 世界のすべての母親の悲しみ


    旅の順番とパリへの失望
    *エジプト→ギリシア→イタリア→フランスの順番〜世界最古の土地から訪ね、それから文化的に旅行
    *最初にあまりに立派な料理を食べた後に、少しづつ味の劣る皿が出てくることに似た失望
    *ギリシアではエジプトの、イタリアではギリシアの、パリではローマの影像がつきまとう


    中巻の最後の文章(第二次世界大戦を意識?)は名言
    「人類は生物としてまだ若いのだから、愚かなことを繰り返すのは仕方ない。今はただそれを未来の進化に役立てるのを忘れないこと」

  • 文学

  • 昭和13年秋から始まる約一年の欧州旅行記。とはいえ船旅なのもあってヨーロッパにはなかなか到着せず、230ページを過ぎてようやくイタリアに着く。それまでの上海やスリランカ、エジプトの旅行記もたっぷり読めて、実質世界一周旅行記だ。

    ヨーロッパの古典にもくわしい弥生子先生なので、各国で目にするものに対する反応が深くてのびのびしている。読んでいて自分も旅に出たくなるのだけれど、弥生子先生の教養と感受性がなければ同じレベルの楽しみは得られないわけで、きっと貧相であろう自分の感受性に今から残念な気持ちに。めげずに中巻、下巻と弥生子先生の旅を追体験させてもらおう。

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著者プロフィール

野上 弥生子(のがみ・やえこ):1885年、大分県生まれ。明治女学校卒。夏目漱石の紹介で「縁」を「ホトトギス」に発表して以来、明治・大正・昭和という三時代を通じ80年余りの作家活動をおこなう。写実主義に根差す作風で女性たちが直面する生きづらさを見つめ、家父長制の物語に抗うとともに、戦争に向かう時代のなかでも体制におもねることなく反戦思想を訴え続けた。1957年『迷路』で読売文学賞、64年『秀吉と利休』で女流文学賞、86年『森』で日本文学大賞、71年には文化勲章などさまざまな賞を受賞。他の著書に『欧米の旅』『山姥』『海神丸』などがある。文芸雑誌「青鞜」を発行していた青鞜社のメンバーでもあった。1985年逝去。

「2025年 『真知子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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