欧米の旅 上 (岩波文庫 緑 165-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003116517

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  • 欧米の旅
    野上弥生子
    上中下3巻

    第二次世界大戦前の欧米旅行記

    昭和13年10月 上海から旅行スタートし、上巻では イタリアの美しさを描き、中巻では イギリスの人々の温かさを感じ、下巻では ナチスドイツに疑問を感じる構成。

    本編の前に 加賀乙彦 解説、序、跋(ばつ) から読む方が この本の歴史的価値を認識できる

    加賀乙彦 解説
    *旅行が行われたのは日中戦争の最中、本が刊行したのが太平洋戦争の最中
    *エジプト→ギリシア→イタリアの順番が著者のヨーロッパの見方を定めた〜イタリアは著者の心を惹きつけた

    序(昭和17年4月)
    *この旅行は 平和な世界を見た最後の機会だった
    *著者が見た国々の影像は 今後どんなに変貌しようと「かくあった」ことを知らせる点で役立つ


    跋(昭和18年5月)
    *日本人の輝かしい勝利は〜従来の国際的繋がりを引き裂き〜昨日の敵も盟邦に、親交のあった国も仇敵となった
    *今度の戦争は 政治的に 文化的に〜欧米のすべての国を根本から改変するに違いない


    ミケランジェロ「哀傷」に対する哀しみ
    何か新しい歴史が始まる時〜犠牲の役をつとめた息子〜聖母の顔に示された悲しみは 世界のすべての母親の悲しみ


    旅の順番とパリへの失望
    *エジプト→ギリシア→イタリア→フランスの順番〜世界最古の土地から訪ね、それから文化的に旅行
    *最初にあまりに立派な料理を食べた後に、少しづつ味の劣る皿が出てくることに似た失望
    *ギリシアではエジプトの、イタリアではギリシアの、パリではローマの影像がつきまとう


    中巻の最後の文章(第二次世界大戦を意識?)は名言
    「人類は生物としてまだ若いのだから、愚かなことを繰り返すのは仕方ない。今はただそれを未来の進化に役立てるのを忘れないこと」

  • 文学

  • 昭和13年秋から始まる約一年の欧州旅行記。とはいえ船旅なのもあってヨーロッパにはなかなか到着せず、230ページを過ぎてようやくイタリアに着く。それまでの上海やスリランカ、エジプトの旅行記もたっぷり読めて、実質世界一周旅行記だ。

    ヨーロッパの古典にもくわしい弥生子先生なので、各国で目にするものに対する反応が深くてのびのびしている。読んでいて自分も旅に出たくなるのだけれど、弥生子先生の教養と感受性がなければ同じレベルの楽しみは得られないわけで、きっと貧相であろう自分の感受性に今から残念な気持ちに。めげずに中巻、下巻と弥生子先生の旅を追体験させてもらおう。

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著者プロフィール

野上彌生子

小説家。本名ヤエ。大分県生れ。明治女学校卒。英文学者,能楽研究家である夫野上豊一郎〔1883-1950〕とともに夏目漱石に師事し,《ホトトギス》に写生文的な小品を発表。1911年創刊の《青鞜》にも作品を寄稿した。《海神丸》《大石良雄》から長編《真知子》と社会的視野をもつ作品に進み,戦前から戦後にかけて大作《迷路》を完成。ほかに《秀吉と利休》がある。1971年文化勲章。

「2022年 『秀吉と利休』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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