新編 春の海―宮城道雄随筆集 (岩波文庫)

著者 : 宮城道雄
制作 : 千葉 潤之介 
  • 岩波書店 (2002年11月15日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003116814

作品紹介

箏曲「春の海」「水の変態」をはじめ数々の美しい作品をのこした宮城道雄。その鋭い感覚に支えられた豊かな才能は、随筆にもあらわされた。作家らとの多彩な交流をはじめ、四季の情景、芸の話、失敗談、紀行、家族のことなどをやさしく語った43篇に、林芙美子との対談を加える。

新編 春の海―宮城道雄随筆集 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • お正月にお馴染みの曲春の海の作曲者、宮城検校のエッセイ

  • 音に生きる
    春になるとやってくる小鳥が毎年同じものとわかる。

    音楽の世界的大勢と日本音楽の将来
    ドビュッシーのセロとピアノの奏鳴曲の中の一楽章をきくと、セロの使い方には確かに支那の蛇皮線(じゃみせん)の趣がある。ラヴェルの弦楽四重奏の中には、全く弓を使わずに、ピチカットだけで行っているところがあるが、それなんかはちょっと琉球の音楽を聴く感じである。

    箏と私
    私たちは、ただこの道を往く他はない。迷ったりする余地はない。ただ驀然(まっしぐら)にこの道を進んで往こう。その一年が私を今日あらしめてくれたとも言えるのである。
    もし何かの都合で一日中箏を弾くことが出来なかったりすると淋しくて堪らない。
    また、弟子の弾いている箏の音を聴いただけで、どの人がどんなことを考えているかがよく分かる。

    耳の生活
    その耳が、時々風邪をひいて欧氏管が腫れると悪くなる。
    しかし幸いなことに耳が遠くなると楽器の調子などがかえって微細に聞こえる。
    私はひと(の声)には耳が遠くなるが自分には近くなるような気がする。

    四季の趣
    私は冬になると寒いので、無精をして寝床の中で勉強する。それは灯光もいらず、あおむけになって、おなかの上で点字を探り探り本を読んだり、点字の道具を動かして書いたりする。寒い夜中などは、落ち着いた気持になる。

    歓迎会

    アメリカからヘレン・ケラー女史が来朝された
    ケラー女史の今までのいろいろの苦心談や、女史の非常に美しい愛の言葉は、聴いている人々に心迫る感を与えているように思われた。そうして、一言聞くごとに、私たちは涙が流れるのを止めることが出来なかった。その日集まった人々は非常に府買う感銘を受けて、知らず知らずのうちに、何かある深い教訓を受けたのである。
    ケラー女史の講演が終わってから、私の演奏が始まると、耳の聞こえぬはずのケラー女史が私の音楽を聞かれた。その音が空気の波動か何かで女史に伝わるのか、女史がしきりに音楽に合わせてタクトのようなことをやられたそうである。
    私は耳以外の感覚で音楽を理解されることを意外に思ったのである。
    ケラー女史があらためて三十分間講演された。
    岩橋氏は盲人であるのに、英語で云われた事をその場で日本語に通訳され、その日本語もケラー女史の云われた気持や感情がよく出ているように思われた。おそらく、その晩に集まられた朝野の名士も、その通訳ぶりに対して、岩橋氏を盲人とは気がつかない人が大分あったのではないかと思う。
    「どうも目が明いているのが馬鹿馬鹿しい」とか、「こうして行きているのがいやになった」とか、「私も盲目に生まれて来ればよかった」と云うようなものが聞こえた。私たちもケラー女史のような人がおられるために、自分たちまで鼻が高くなったような気がした。

    新田丸の印象
    私は一度寝て眼がさめるとそれからどうしても寝つけないので、それで家にいるときいつでも魔法瓶に酒を入れて枕元においておくのである。それで今晩もなんだか我儘のようであったが百閒氏にその話をすると、それでは頼んでやろうと言ってボーイさんに頼んでくれた。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4820558900
    ── 宮城 道雄《雨の念仏 ~ 障害とともに生きる 200102‥ 日本図書センター》
    http://booklog.jp/entry?keyword=%E5%AE%AE%E5%9F%8E%E9%81%93%E9%9B%84&service_id=1&index=All
     
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/400311681X
    ── 千葉 潤之介・編《新編 春の海 ~ 宮城 道雄随筆集 20021115 岩波文庫》
     
    http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1319027
    ── 宮城 道雄・曲&箏/吉田 晴風・尺八《春の海 193012‥ ビクター》
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%B5%DC%BE%EB+%C6%BB%CD%BA
     

  • お正月に耳にする「春の海」の作曲者である、近代箏曲の父・宮城道雄の随筆集があると知り、購入した

    曲の印象が強く、ご本人のことは盲目であったことと悲劇的な最期であったことしか知らなかった
    停電の話にはなるほどと思い、胡弓をいきなり弾いたりする話にはやはり天才だと感じた
    内田百けんとの繋がりがあったことも初めて知った
    興味のある人には、宮城道雄記念館(神楽坂)もおすすめ

  • たぶん宮城道雄なんて、僕と同じ年代で知ってる人はもはや、それこそお箏とか三味線をやってるような人だけだろうな。僕も大学に入るまで知らなかったし。
    でも彼が作曲した音楽は、日本人なら誰しも絶対聴いたことがあるはずだ。
    お正月、神社に行けば、テレビをつければ、どこからともなく流れてくる、『春の海』。

    大正、昭和を通じ、邦楽と西洋音楽との融合を目指した「楽聖」宮城道雄。
    その随筆には、彼の人間性がみずみずしくあらわれている。

    彼は盲人であったゆえに、描写に視覚表現がほとんどない。触覚や嗅覚などよりも、聴覚で彼のとりまく日常を描いているさまは作曲家ならではだ。しかしそれでも不思議なことに、彼の書く文章(口述筆記で綴られたらしいが)には「色」がある。光を持つ我々晴眼者にも、彼の「視ている」世界が容易に浮き上がってくる。それはやはり、宮城のすぐれた感受性でこそなせる業なのであろう。

    東海道線の列車から転落するという悲劇的な最期を遂げ、「伝説」と化した宮城道雄の、心優しく、朗らかで、ひょうきんな人間性が伺える文章たちが、いたずらにまつり上げられた彼に、親近感を抱かせてくれる。

    現代に、彼のような純粋で、新鮮で、素敵な感受性を持った音楽家はいるだろうか。
    ドメスティックな流行に終わり、非将来的で、どこか停滞した印象を受ける今の日本の音楽を……音楽文化自体が軽視されがちなこの時代を、彼はどう思うだろう。

    「音楽の世界的大勢と日本音楽の将来」は音楽に携わる人みんなに勧めたい。
    「白いカーネーション」で久々に泣きかけたのはナイショの話。ふふん。

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