- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003116814
作品紹介・あらすじ
箏曲「春の海」「水の変態」をはじめ数々の美しい作品をのこした宮城道雄。その鋭い感覚に支えられた豊かな才能は、随筆にもあらわされた。作家らとの多彩な交流をはじめ、四季の情景、芸の話、失敗談、紀行、家族のことなどをやさしく語った43篇に、林芙美子との対談を加える。
感想・レビュー・書評
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正月番組に必ず流れる「春の海」の箏曲家宮城道雄の随筆集。
「春の海」は瀬戸内海の島々の綺麗な感じを描いたらしく、そういわれると長閑な景色が浮かんでくる。宮城は視覚障害者であり、体験が主に聴覚によるはずであるので、景色の捉え方は違うかもしれない。
宮城は有名な音楽家だけど、茶目っ気があり明るい人柄で、読んでいて安心感があり、心地良い。
内田百閒が箏の弟子になっていおり、よくエピソードに出てきて、仲の良さが微笑ましい。内田百閒が宴会中に珍しく歌っているのを宮城が録音したところ、その録音を何度も聴きたがったり、長いステッキで夜中に宮城宅の2階の雨戸を叩く悪戯をしたり、やることが子どもだ。この本も宮城道雄が口述したものを内田百閒が編集したものである。
日経の読書欄で松浦弥太郎が紹介しており、Amazonで高値が付いていたが、町の本屋で見つけて買う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宮城道雄というとどうしても寝台急行銀河から落ちての悲劇的最後とか盲人で琴(筝)の作曲家というイメージが濃く、いまいち積極的に近づく気なれなかった。それが内田百閒の随筆を読むうち親友ともいえる道雄の姿を見てだいぶイメージアップ。今回たまたま書店でこの本を見つけて読んでみたもの。戦争前後の話がほとんどだが少年時代の思い出も描かれている。その時代のさまざまを知るためにも読んでよかった。あまり戦時の話はないけど書いていないのかな?他の随筆作品もちょっと読んでみたい。あと、前の住居が比較的中町に近く、区立図書館へ行くときに記念館(旧居)前を通っていた。その時はあまり興味もなくスルーしていたのだが、今度コロナ禍が落ち着いたら行ってみたいと思う。
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http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4820558900
── 宮城 道雄《雨の念仏 ~ 障害とともに生きる 200102‥ 日本図書センター》
http://booklog.jp/entry?keyword=%E5%AE%AE%E5%9F%8E%E9%81%93%E9%9B%84&service_id=1&index=All
http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/400311681X
── 千葉 潤之介・編《新編 春の海 ~ 宮城 道雄随筆集 20021115 岩波文庫》
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1319027
── 宮城 道雄・曲&箏/吉田 晴風・尺八《春の海 193012‥ ビクター》
http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%B5%DC%BE%EB+%C6%BB%CD%BA
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たぶん宮城道雄なんて、僕と同じ年代で知ってる人はもはや、それこそお箏とか三味線をやってるような人だけだろうな。僕も大学に入るまで知らなかったし。
でも彼が作曲した音楽は、日本人なら誰しも絶対聴いたことがあるはずだ。
お正月、神社に行けば、テレビをつければ、どこからともなく流れてくる、『春の海』。
大正、昭和を通じ、邦楽と西洋音楽との融合を目指した「楽聖」宮城道雄。
その随筆には、彼の人間性がみずみずしくあらわれている。
彼は盲人であったゆえに、描写に視覚表現がほとんどない。触覚や嗅覚などよりも、聴覚で彼のとりまく日常を描いているさまは作曲家ならではだ。しかしそれでも不思議なことに、彼の書く文章(口述筆記で綴られたらしいが)には「色」がある。光を持つ我々晴眼者にも、彼の「視ている」世界が容易に浮き上がってくる。それはやはり、宮城のすぐれた感受性でこそなせる業なのであろう。
東海道線の列車から転落するという悲劇的な最期を遂げ、「伝説」と化した宮城道雄の、心優しく、朗らかで、ひょうきんな人間性が伺える文章たちが、いたずらにまつり上げられた彼に、親近感を抱かせてくれる。
現代に、彼のような純粋で、新鮮で、素敵な感受性を持った音楽家はいるだろうか。
ドメスティックな流行に終わり、非将来的で、どこか停滞した印象を受ける今の日本の音楽を……音楽文化自体が軽視されがちなこの時代を、彼はどう思うだろう。
「音楽の世界的大勢と日本音楽の将来」は音楽に携わる人みんなに勧めたい。
「白いカーネーション」で久々に泣きかけたのはナイショの話。ふふん。