五足の靴 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 81
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003117712

作品紹介・あらすじ

明治40年盛夏。東京新詩社の雑誌『明星』に集う若き詩人たち-北原白秋、平野萬里、太田正雄(木下杢太郎)、吉井勇がいさんで旅に出た。与謝野寛との五人づれは長崎・平戸・島原・天草と南蛮文化を探訪し、阿蘇に登り柳川に遊ぶ。交代で匿名執筆した紀行文は新聞連載され、日本耽美派文学の出発点となった。

感想・レビュー・書評

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  • 100年も前の詩人 文筆家五人衆の、夏休みの旅行日記。だらだらと詩的にツラツラ書いている‥

  • 新書文庫

  • こんな風に、ふらりと徒然なるままに旅してみたい。
    島原の華やかさが強調して描かれていたのが印象的。

  • 初読。夏休みに天草の五足の靴に予約を入れたので購入したが、旅行は行き先変更。でも買ったからには読まねば。のんびりとした旅行の風情が味わえる。贅沢だなあ。やっぱり天草行っとけばよかった。ぜひ次の旅行は九州へ!

  • 【本の内容】
    明治40年盛夏。

    東京新詩社の雑誌『明星』に集う若き詩人たち-北原白秋、平野萬里、太田正雄(木下杢太郎)、吉井勇がいさんで旅に出た。

    与謝野寛との五人づれは長崎・平戸・島原・天草と南蛮文化を探訪し、阿蘇に登り柳川に遊ぶ。

    交代で匿名執筆した紀行文は新聞連載され、日本耽美派文学の出発点となった。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    旅先などで雨風にさらされた文学碑を読んでいると、何やら時間が巻き戻されたような不思議な感興におそわれる。

    何年か前に九州の天草方面に旅した折、「五足の靴」の碑を見た時もそうだった。

    東京の新詩社に集う詩人たち――北原白秋、平野萬里、太田正雄(木下杢太郎)、吉井勇と与謝野鉄幹の五人づれが平戸、島原、天草などを探訪、匿名で交代に執筆した紀行文が「五足」である。

    詩人の名だけでも耽美的、浪漫的な空気が漂う。

    キリシタンの里、夕日に映える海……かの地の歴史や風景からも旅のロマンをかきたてられる。

    彼らの旅から今年で百年。

    先月、岩波文庫で出た本書を初めて読んで驚いた。

    〈真直な水色の糸が蓮の葉に降ってささと鳴る〉などロマンチックな描写もあるが、意外にもがさつで伸びやかな表現が多く、愉快なのだ。

    冗談に興じ、美女に見惚れ、漁人町の異臭に閉口し、闇におろおろする。

    当時、鉄幹は35歳だったが、他の4人は20代前半の学生か学生あがり。

    それぞれの個性は豊かで、まだ裸の感受性が発露している。

    これは若き日の詩人たちの貴重な肖像である。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 読めば、そこに旅したくなる。明治40年といえば、1907年。今から約100年前である。柳川の造り酒屋だった北原白秋の家はまだあるのだろうか。島原大江村のパアテルさんの教会はまだあるのだろうか。この有名な五人の歌人や小説家、随筆家はその後、それぞれの道を歩いて行ったのはご承知の通り。しかれども、海に行けば誰彼ともなく飛び込み、山に行けばずんずんと歩きだす、今はただ未来は知らず、青年たちの明治の生き生きとした紀行文がここにある。

    私の旅レポートもこれくらい面白ければいいのだけど。

    (十二)大失敗
    五足の靴は驚いた。東京を出て、汽車に乗せられ、汽船に乗せられ、ただ僅かに領巾振山(ひれふるやま)で土の香を嗅いだのみで、今日まで日を暮らしたのであった。初めてお役に立って嬉しいが、嬉しすぎて少し腹の皮を擦りむいた、いい加減に蒙りたいという。しかし場合が許さぬ、パアテルさんは未だ遠い遠い。道を誤えて後戻りするやら何やらしてひどい嶮しい峠を越えると川がある、川の中に馬が遊んでいる。高浜の町は葡萄でおおわれている、家ごとに棚がある、棚なき家は屋根にはわす、それを見て南の海の島らしい感じがした。
    豆を豆殻より離さんと槌もて筵を打つ子がある。三生は橋に凭れて暮れゆく雲を見る、二生は富岡に倣って駐在所を訪うたが留守だ、昔の大庄屋の家へ出かけ天草の乱の考証中である。ここは面白い、泊ろうというH生の提議もパアテルさんには敵わん、H生は詩を作る。(46p)
    2014年2月11日読了

  • 火のうしほ世をも人をも焼かむとす恋にさも似る君が家の酒
     吉井 勇

     1907年(明治40年)7月下旬、「五足の靴が五個の人間を運んで東京を出た」。行き先は、九州。平戸、長崎、揺れる船で島原へ、さらに阿蘇の噴火口や、北に戻って三池炭鉱などをめぐる旅である。
     健脚の5人の名は、雑誌「明星」を創刊した与謝野寛と、そのもとに集った20代の詩人たち、北原白秋、平野萬里、木下杢太郎、吉井勇。
     その浪漫精神香る道中は、新聞に紀行文というかたちで連載された。交代で匿名執筆されたため、誰がどの文章を書いたのかは特定しにくいが、五感を駆使した描写はいずれも臨場感がある。島原名産のスイカにかぶりつく場面などは、思わずのどが鳴ってしまうほどだ。

     さて、明治末期の若い彼らの関心は、九州に浸透した南蛮文化にあった。たとえば天草では外国人宣教師と面会したほか、各地の風物も異国語のように聞きとる聴覚描写に特徴がある。「五足の靴」が、草鞋【わらじ】ではなくあくまで西欧の「靴」であることも、その志向の現れなのだろう。
     掲出歌は、福岡県柳川にあった北原白秋の生家での作。造り酒屋であり、「潮【うしお】」という銘酒が有名だった。下戸の平野萬里も、その酒は気に入ったと書き記している。歌の作者名は新聞発表時にはなかったが、のちに「明星」に掲載され、吉井勇の作と特定できた。
     紀行文「五足の靴」は、現在文庫本になっている。140ページのハンディなこの本を手に、ゆかりの地を旅してみたい。

    (2012年7月29日掲載)

  • 「五足の靴が五個の人間を運んで東京を出た。五個の人間は皆ふわふわとして落ち着かぬ仲間だ。」
    この書き出しが秀逸な本書は、今から百年以上前の夏に「眩しい光と風の中」旅に出た五人の青年の旅行記である。ただ一つ通常と違うのは、この旅行者でありリレーエッセイの筆者「五人づれ」が、三十代の与謝野鉄幹、二十代前半の学生だった太田正雄(木下杢太郎)、北原白秋、平野万里、吉井勇という、現在も近代文学史に名を残す錚々たる面々であるということ。
    しかしそれ以外は、多感な青年たちが細かく瑞々しく爽やかに記した明治の旅行記であることは変わりない。ある時は船に酔い、ある時は山道に迷い、ある時は海に喜び皆で着物を脱ぎ飛び込み砂と戯れる。
    明治の青年の瑞々しい旅行記としても、百年前の九州の描写を読む風土記としても読め、実に爽やかな読後だった。
    尚、解説「踏みこそ鳴らせ、大靴を」を読むと、この旅の背景やその後の顛末がわかる。そしてわかるからこそ、この旅が二度と来ない美しい青春の一頁として記録された喜びを知り、また切なさを知るだろう。
    かけがえのない若さ溢れる人生のひととき。もう自分は若くはないだろうけど、今からでも気の置けない仲間と旅に出たくなる、そんな本書だと思った。

  • 明治40年、5人の男による九州紀行。男達は何れも雑誌明星に集った赫々たる詩人達、与謝野寛 、平野萬里、北原白秋、吉井勇、太田正雄 。当時の九州などの風俗描写、文中散りばめられた詩文が楽しい。

  • 明治40年の盛夏、『明星』の詩人達による匿名で執筆された紀行文。五足の靴が九州を歩き回る。

    一番最初の前口上(?)に引かれて面白そうだと思い、読んでみたものの、執筆した人によって面白い章といまいち入り込めない章があって、少々難儀した。
    入り込めない章は、明らかに同じ人物が書いただろうと思われるのだが、匿名なので誰なのかはわからないままである(・・・一体誰だったんだ?)。

    私は九州生まれ九州育ちなので(北原白秋の生家も行ったことがあります)、書かれている場所も少しはわかるかなぁと期待していた。しかし、地名は結構わかっても、現代とこの時代の九州はかなりかけ離れていたらしく、読んで驚くことばかりであった。
    土地の人たちもなんだか田舎っぽくて、朗らかやら呆れるやら。みんな、気が利くのか利かないのかよくわからないところが面白い(笑)。

    それと、作中でも驚かれていたように、そんな時代でこの靴の持ち主たちが悠々と九州を歩き回れたその財源が、私も不思議でたまらない。彼らみんな、相当なお坊ちゃんなのだろうか・・・? それともこの時代の文士はそんなに収入がいいのか? 

    最後がなんだか下世話な話題になってしまったが、本文は『日本耽美派文学の出発点となった』と紹介されているくらいの綺麗な文章です(^^;)。

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