尾崎放哉句集 (岩波文庫 緑 178-1)

制作 : 池内 紀 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003117811

作品紹介・あらすじ

「咳をしても一人」「入れものが無い両手で受ける」-放哉(1885‐1926)は、一見他愛のないような、しかし、一度知ると忘れ難い、印象深い自由律の秀句を遺した。旧制一高から東京帝大法科と将来を約束されたエリート街道を走った前半生、各地を転々とし小豆島で幕を閉じた孤独の後半生。彼の秀作の多くは晩年の僅か三年ほどの間に生まれた。

感想・レビュー・書評

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  • “咳をしても一人”
    誰もが一度は見聞きしたことがあるであろう自由律俳句の作者、尾崎放哉の句を集めた一冊。

    私は上記の句を、確か小学校高学年か中学生の頃に国語の授業で知ったのだが、それまでの人生で親しんできた五七五の定型俳句からあまりにもかけ離れていて腹が立ったことを覚えている。
    しかしそれから10年以上が経った現在は、とても面白く感じ、染み込むように読むことが出来た。

    読む前は「放哉の句は『死』や『淋しさ』を湛えたものが多い(らしい)」という印象を抱いていたが、この本で選ばれたものには、一言日記のような日常的な情景や、割とユーモラスなものもあって楽しかった。
    “そうめん煮すぎて団子にしても喰へる”
    “芋喰って生きて居るわれハ芋の化物”
    共に晩年近くに作られた歌だが、思わず笑ってしまった。ただ繰り返し読むと「毎日1人で質素な食事を取っている」という、静かでどうしようもない情景が浮かんでくるのがすごいところだと思った。

    編者である池内紀(いけうち おさむ)さんの巻末解説の最後。
    “文庫の一冊ができて、放哉がうんと身近になった。何よりもそれが嬉しい”
    2007年にこの本が作られ、それが版を重ねて2024年に手元にあること。私もとても嬉しく思う。

  •  中学時代に教科書で学んだ自由律俳句。その代表作「咳をしても一人」を詠んだ尾崎放哉の句集。定型俳句時代の作品と後年の自由律の作品で構成されており、好
    みの作品を見つけては、ハッとしたり、フフッとなったり、ニヤリとしたり。一言で言えば「なんかいい」。そう感じたのは、例えば以下のような作品たち。
     「心をまとめる鉛筆とがらす」
     「ねそべつて書いて居る手紙を鶏に覗かれる」
     「なんにもない机の引き出しをあけて見る」
     「お祭り赤ン坊寝てゐる」
     「掛取も来てくれぬ大晦日も独り」
     彼の非定型の俳句は、なにかがふっきれたような感があり、比較的現代文っぽい文体であるため、私のような初心者にとって、とっつきやすく、どのページから読
    んでも、肩が凝らない内容となっている。

  • 好きだなあ

    昼ふかぶか木魚ふいてやるはげている
    心をまとめる鉛筆とがらす
    犬をかかえたわが肌には毛が無い


    勝手にショモショモした顔の猫だと思っている
    白くて毛がケパついた猫

  • このうえもない孤独感。
    郷愁。
    他愛なく印象的なことごと。
    尾崎放哉。

  • 友の夏帽が新らしい海に行かうか(p.43)

    自らをののしり尽きずあふむけに寝る(p.46)

    ただ風ばかり吹く日の雑念(p.49)

    豆を煮つめる自分の一日だつた(p.71)

    淋しいからだから爪がのび出す(p.75)

    久し振りの雨の雨だれの音(p.86)

    言ふ事があまり多くてだまつて居る(p.110)

    豆腐半丁水に浮かせたきりの台所(p.118)

  • 染み入るような孤独と哀愁、そして共感。

  • 請求記号:A/918.68/O96
    選書コメント:
    明治~大正を生きた、わが国初の!?ついつたあ詩人、尾崎放哉、大学生、というか人間、悩んだり、笑ったり、絶望したり、死にかけたり、生き残ったり...何があっても、なくてもいい、とりあえず、この人のことばに当たって去って、みてもいい、本に目を落とした前に伸びて広がり突き抜ける。そんな空と道とにいっぺんに気づくのもいい。
    (図書館学生スタッフ)

  •  いろいろな意味で切なくなった。
     その詠まれた内容に。その境遇に。その句才に。
     散文の饒舌さからすると、俳句という表現方法は放哉に向いていたかどうか。
     自身もそれを薄々感じていたのではないか。
     そう思いながら「咳をしても一人」「入れものが無い両手で受ける」を詠むと一層切なくなってくる。

  • 咳をしても一人
    この他にも一人シリーズはあるがこれが一番哀愁と孤絶を感じる。
    直しを受けて更にクオリティが高まっているのは初めて知りました。

  • 【本の内容】
    「咳をしても一人」「入れものが無い両手で受ける」―放哉(1885‐1926)は、一見他愛のないような、しかし、一度知ると忘れ難い、印象深い自由律の秀句を遺した。

    旧制一高から東京帝大法科と将来を約束されたエリート街道を走った前半生、各地を転々とし小豆島で幕を閉じた孤独の後半生。

    彼の秀作の多くは晩年の僅か三年ほどの間に生まれた。

    [ 目次 ]
    自由律以前(明治三三年‐大正三年)
    自由律以後(大正四年‐大正一五年)
    句稿より(大正一四年‐一五年)
    入庵雑記

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