尾崎放哉句集 (岩波文庫 緑178-1)

  • 岩波書店 (2007年7月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784003117811

感想・レビュー・書評

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  • 自由律すぎて面白い
    頭の中で思ったことそのまま言葉にしたみたいで、妙に哀愁があるけど悲壮感はなくてクスッとする

  • “咳をしても一人”
    誰もが一度は見聞きしたことがあるであろう自由律俳句の作者、尾崎放哉の句を集めた一冊。

    私は上記の句を、確か小学校高学年か中学生の頃に国語の授業で知ったのだが、それまでの人生で親しんできた五七五の定型俳句からあまりにもかけ離れていて腹が立ったことを覚えている。
    しかしそれから10年以上が経った現在は、とても面白く感じ、染み込むように読むことが出来た。

    読む前は「放哉の句は『死』や『淋しさ』を湛えたものが多い(らしい)」という印象を抱いていたが、この本で選ばれたものには、一言日記のような日常的な情景や、割とユーモラスなものもあって楽しかった。
    “そうめん煮すぎて団子にしても喰へる”
    “芋喰って生きて居るわれハ芋の化物”
    共に晩年近くに作られた歌だが、思わず笑ってしまった。ただ繰り返し読むと「毎日1人で質素な食事を取っている」という、静かでどうしようもない情景が浮かんでくるのがすごいところだと思った。

    編者である池内紀(いけうち おさむ)さんの巻末解説の最後。
    “文庫の一冊ができて、放哉がうんと身近になった。何よりもそれが嬉しい”
    2007年にこの本が作られ、それが版を重ねて2024年に手元にあること。私もとても嬉しく思う。

  •  中学時代に教科書で学んだ自由律俳句。その代表作「咳をしても一人」を詠んだ尾崎放哉の句集。定型俳句時代の作品と後年の自由律の作品で構成されており、好
    みの作品を見つけては、ハッとしたり、フフッとなったり、ニヤリとしたり。一言で言えば「なんかいい」。そう感じたのは、例えば以下のような作品たち。
     「心をまとめる鉛筆とがらす」
     「ねそべつて書いて居る手紙を鶏に覗かれる」
     「なんにもない机の引き出しをあけて見る」
     「お祭り赤ン坊寝てゐる」
     「掛取も来てくれぬ大晦日も独り」
     彼の非定型の俳句は、なにかがふっきれたような感があり、比較的現代文っぽい文体であるため、私のような初心者にとって、とっつきやすく、どのページから読
    んでも、肩が凝らない内容となっている。

  • X(旧Twitter)でまるでTwitterみたいとちょっとバズってたのに興味を持ち読了。
    まるでシーンが思い浮かぶような鮮やかな句や、思い浮かべて笑ってしまうようなものがあり、読んでいて楽しかった。
    旧字や今はあまり使われない表現などが所々にあり、当時の人と今読んだ自分とでは受け取り方も少し違うのかなと考えてみたり。

  • 日常や風景などが切り取られていて情景が浮かぶ。あるある〜、と同意しながら笑ってしまう句も多く、特に自由律は自由すぎて面白い。一句に情報を詰め込む能力の高さと着眼点に、あっぱれという気持ち。以下好きな句の感想を少し。


    ・女よ女よ年とるな←ひどい
    ・ハンケチがまだ落ちて居る戻り道であつた←わかる
    ・犬よちぎれる程尾をふつてくれる←かわいい
    ・笑ふ時の前歯がはえて来たは←かわいいほっこり
    ・ころりと横になる今日が終つて居る←わかりすぎる
    ・夫婦でくしゃめして笑つた←いい


    後半の入庵雑記は目上の人への近況報告のお手紙のようで、敬語なんだけど親しみのある表現がすてき。LINEやSNSでは単語や短文ばかりになって味気なくなりがち。気持ちのこもった、でもしつこくない、こんな文章が書けるようになりたい。

  • 「咳をしても一人」で有名な尾崎放哉の自由律俳句集。

    尾崎放哉の日々の出来事が自由律俳句で綴られる。
    で、それがどんなかと言えば、これはアレよ。
    Twitter。
    自由律だから余計にそんなふうに読めてしまう。

    そして、「咳をしても一人」で一人でいることの静寂を見せた尾崎放哉は、様々な俳句で一人であることを詠んでいて、
    いやどんだけぼっちやねん!と(笑)

    「こんなよい月を一人で見て寝る」
    「掛取も来てくれぬ大晦日も独り」
    「夜がらすに啼かれても一人」
    「何がたのしみに生きてると問はれて居る」
    「昼月風少しある一人なりけり」
    「一人の道が暮れて来た」

    そんな尾崎だからこそ

    「何か求むる心海へ放つ」
    「両手をいれものにして木の実をもらふ」
    「あけがたとろりとした時の夢であったよ」
    「あらしがすっかり青空にしてしまった」
    「お粥煮えてくる音の鍋ふた」
    「ひどい風だどこ迄も青空」
    「山風山を下りるとす」

    が光る。一瞬一瞬をじっくり味わっているのが判る。
    巻末の随筆を読むと、実際はそんなにぼっちではなかったようだ。ことさら寂しがり屋さんだったのかもしれない。
    あるいは、一人であること、寂しく静かであることが珍しく、その状況や気持ちを句にして詠んだのかもしれないな。

    投稿が「つぶやき」だった頃のTwitterを久しぶりに見た気がした。
    こんなだったなー。

  • 好きだなあ

    昼ふかぶか木魚ふいてやるはげている
    心をまとめる鉛筆とがらす
    犬をかかえたわが肌には毛が無い


    勝手にショモショモした顔の猫だと思っている
    白くて毛がケパついた猫

  • このうえもない孤独感。
    郷愁。
    他愛なく印象的なことごと。
    尾崎放哉。

  • 友の夏帽が新らしい海に行かうか(p.43)

    自らをののしり尽きずあふむけに寝る(p.46)

    ただ風ばかり吹く日の雑念(p.49)

    豆を煮つめる自分の一日だつた(p.71)

    淋しいからだから爪がのび出す(p.75)

    久し振りの雨の雨だれの音(p.86)

    言ふ事があまり多くてだまつて居る(p.110)

    豆腐半丁水に浮かせたきりの台所(p.118)

  • 染み入るような孤独と哀愁、そして共感。

  • 請求記号:A/918.68/O96
    選書コメント:
    明治~大正を生きた、わが国初の!?ついつたあ詩人、尾崎放哉、大学生、というか人間、悩んだり、笑ったり、絶望したり、死にかけたり、生き残ったり...何があっても、なくてもいい、とりあえず、この人のことばに当たって去って、みてもいい、本に目を落とした前に伸びて広がり突き抜ける。そんな空と道とにいっぺんに気づくのもいい。
    (図書館学生スタッフ)

  •  いろいろな意味で切なくなった。
     その詠まれた内容に。その境遇に。その句才に。
     散文の饒舌さからすると、俳句という表現方法は放哉に向いていたかどうか。
     自身もそれを薄々感じていたのではないか。
     そう思いながら「咳をしても一人」「入れものが無い両手で受ける」を詠むと一層切なくなってくる。

  • 咳をしても一人
    この他にも一人シリーズはあるがこれが一番哀愁と孤絶を感じる。
    直しを受けて更にクオリティが高まっているのは初めて知りました。

  • 【本の内容】
    「咳をしても一人」「入れものが無い両手で受ける」―放哉(1885‐1926)は、一見他愛のないような、しかし、一度知ると忘れ難い、印象深い自由律の秀句を遺した。

    旧制一高から東京帝大法科と将来を約束されたエリート街道を走った前半生、各地を転々とし小豆島で幕を閉じた孤独の後半生。

    彼の秀作の多くは晩年の僅か三年ほどの間に生まれた。

    [ 目次 ]
    自由律以前(明治三三年‐大正三年)
    自由律以後(大正四年‐大正一五年)
    句稿より(大正一四年‐一五年)
    入庵雑記

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 針の穴の青空に糸を通す

    日常の些細なことが、全然違った視点で見えてくる。
    そしてなんとも言えない哀愁が胸をつく。
    だけども頑張りすぎない精一杯を感じる。

    ふとしたさみしさを感じた時に開きたい一冊。

  • 推敲の過程が載っていてよい。

  •  ネットで検索して色々読むだけでは飽き足らず購入。余りに期待して読み始めただけに、意外と心に染みいる名句ってのは少ないのだなあと思った。
     最後に、師に尾崎放哉が添削してもらう前と後がいくつか載っていて、それが非常に面白かった。助詞の有無やちょっとした工夫でこんなにも味わいが変わるものなのかと驚嘆した。

  • 13.4.27読了。味のある短編集の章タイトルになりそうな、ちょっと力の抜けた句が多くて面白い。高校のころから読みたかったものがやっと読めた。

  • 叱ればすぐ泣く子だ。

  • 咳をしても一人

    という句で有名な尾崎放哉。
    ほんの何十文字なのに、インパクト大で、既視感を引き起こし、にやつかせる。
    エリート街道から足を踏み外し、最後は現代で言うところのニートのような生活になった放哉。独特な視点や、孤独が好きなのに寂しがりやなところが、面白い。

    言葉がまた新たな可能性を見せてくれました。

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著者プロフィール

1940年、兵庫県姫路市生まれ。
ドイツ文学者・エッセイスト。
主な著書に
『ゲーテさんこんばんは』(桑原武夫学芸賞)、
『海山のあいだ』(講談社エッセイ賞)、
『恩地孝四郎 一つの伝記』(読売文学賞)など。
訳書に
『カフカ小説全集』(全6巻、日本翻訳文化賞)、
『ファウスト』(毎日出版文化賞)など。

「2019年 『ことば事始め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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