江戸川乱歩作品集 III パノラマ島奇談・偉大なる夢 他 (岩波文庫 緑)

  • 岩波書店 (2018年3月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784003118160

感想・レビュー・書評

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  • パノラマ島奇談は、要するに想像上の理想郷を作るという話。基本的に風景描写とかを文字で想像するのが得意な人は面白いんだろうけど、どうやら僕は苦手な分野。読むのが大変だった。海底二万里を読んだ時を思い出した。

    偉大なる夢は、ミステリーや恋愛の要素は面白いんだけど、時代背景が終戦前なので、今の価値観とは異なる部分もあり、純粋に楽しめなかったのが残念。

  • 「パノラマ島奇談」を読みたくて図書館で借りましたが、再読の「芋虫」など他の作品も深い世界観があってとてもおもしろかったです。
    乱歩が戦時の国策協力の側面を持った「偉大なる夢」という作品を書いていたことも初めて知りました。

  • 濃いなぁと思いながら読んだ作品。引き気味で読んだ。笑

  •  江戸川乱歩作品がパブリック・ドメインになったということもあってか、岩波文庫で近年次々に江戸川乱歩を出しているようだ。『怪人二十面相』まで出している。岩波が乱歩を出すとは、と驚いている人もいるらしい。
     少年向けということで『怪人二十面相』を私は避けてまだ読んでおらず、大人向けの短編集は幾つか読んだ記憶がある。さまざまな出版社から文庫版の江戸川乱歩集が出ているが、この際だから岩波文庫で揃えて読んでおこうと考えた。
     本巻は「夢」をテーマに選ばれた作品が収められており、初出は1925(大正14)年から1960(昭和35)年まで。
     有名な作品「パノラマ島奇談」(1926《大正15》年-1927《昭和2》年)は昔読んだもの。大金を費やして現実の景色を人工的な芸術として加工しようという企図は、谷崎潤一郎の「金色の死」(1914《大正3》年。中公文庫『お艶殺し』に所収)と類似している。谷崎は私の大好きな作家だが、大正時代にはこのような、観念を直接的に小説化したような、私はあまり好まない作品も幾らか書いているのだ。
     江戸川乱歩も、こうした「観念の性急な肉化」に走る傾向があるようだ。本作に表されているような芸術観は、私にはつまらないものだが、長めの作品ということもあってちゃんとプロットが展開しオチがつくところは良い。それで少し救われているように思った。
    「芋虫」(1929《昭和4》年)こそは最高に衝撃的な作品で、このグロテスクさの極みに示現する性欲というテーマは、やはり谷崎潤一郎と感性的な・美意識的な共通点を垣間見せる。もっとも、谷崎には怪奇性への志向は無いが、乱歩は大衆小説の作家として明らかにむき出しにする。
     本作の欠点は、衝撃力の高い主題がそれ自体としてプロットを展開させるわけでもなく、何となくあっけないような結末に至ってしまうところだと思った。
     こんにちでは、このように身体障害者を弄ぶような小説は新作として出版できないだろう。
    「偉大なる夢」(1943《昭和18》年-1944《昭和19》年)は戦時中に雑誌に発表され、戦後に改稿されなかったものとして注目される作品。日本軍への賛歌、敵国アメリカへの憎しみが統制どおりに示されているのは、やはりそうでしかあり得なかったか、と思われる。本作中にはわざわざルーズベルト大統領が登場し、ホワイトハウスで「日本は敵として恐るべき国だ」とわなわなと汗ばむ場面も描かれる。そして「日本のお国の勝利のために祈る」女性の姿が美しいと絶賛される。
    「芋虫」などは単行本から検閲で削除されたりしていた折りで、やはりこの時代に雑誌に連載する小説はこのようなものでしかあり得なかったのであろう。何か痛々しい気もするが、露骨な戦時の日本礼賛は相当気持ちが悪いことも確かだ。乱歩の「観念の性急な肉化」の傾向が、ここでは体制迎合になびきすぎて居心地悪く感じる。
     本作はあっと驚く結末に導かれるが、その少し前に、東京が空襲に遭う場面がある。この小説の連載の最終回は「日の出」昭和19年12月号となっている。ウィキペディアで調べると東京大空襲は昭和19年11月24日から昭和20年8月15日までの106回と記録されており、執筆にはまだ無かったのではないかという気がしたが、よくわからない。推測で書いた割にはずいぶん具体的なので、やはり第1回の空襲を目撃してから書かれた章なのかもしれない。
     次に収録されている「防空壕」(1955《昭和30》年)でも、東京大空襲が描写されており、「偉大なる夢」でのそれとの対比がすこぶる興味深い。アンソロジーとして実に効果的な編集である。こちらでは、自身の生死が危ぶまれる状況下において、アメリカの爆撃機B29のすがたや爆弾の閃光を「美しい」と慨嘆する男性の審美眼が描かれていて、やはりこの作家の耽美癖を彷彿とさせている。

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著者プロフィール

1981年、広島県生まれ。京都産業大学現代社会学部講師。専攻はスポーツ社会学。共著に『〈際〉からの探究』(文眞堂)、『スポーツの「あたりまえ」を疑え!』(晃洋書房)、論文に「エンデュランススポーツの体験に関する一考察」(「スポーツ社会学研究」第21巻第1号)など。

「2020年 『スポーツクラブの社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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