風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (岩波文庫)

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  • 岩波書店
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レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003118238

作品紹介・あらすじ

安吾、安吾、安吾-安吾とはいったい誰か。坂口炳五はいかにして安吾になったのか。"求道者・安吾"、"落伍者・安吾"、そして何よりも"作家・安吾"。冷徹に現実を見つめる"鬼の目"、そして"いたわりの視線"。安吾にとって、自伝的作品を書くことは、自分の思想や生き方と自分の過去との全面的対決であった。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。10年ぶり。舞台が下北沢から代田橋だったことを忘れていた。

  • 成るべくしてかれは物を書く者に成ったんだなぁ、と。

  • 安吾は語る,私とは。

    自伝的作品ということで,その背景も知りながら読んだ方がよかったのかな。無頼派,あまり詳しいことは知らない。ここに描かれているのが,安吾の姿なのだろうか。真面目で,適当に世の中を生きていくのは難しい。だからいい人の振りをしてみたり,そんな自分を客観的に眺めたり。自伝的に物語りつつ,創作しているというところが,自分さえ外側から眺められるほどの真面目さを感じさせた。

  • 坂口安吾の中にはまるで湖があるみたい
    深く透明に澄んでいて怪物が住んでいる

    溺れてしまうかもしれない
    捕らわれてしまうかもしれない
    でも、悲しみを知っている人に
    遣る瀬無く惹かれてしまうものが
    あるのです

  • 20160403 日本経済新聞 リーダーの本棚 松本 大氏

    「私は海をだきしめていたい」

  •  分厚い本だが、一番共感できて、それでいて普通に面白かったのは「勉強記」だった。「いずこへ」とか、いろいろ褒められている短編はあるのだが、女の肉欲ばかり書いていて、おまえがどれほどゲスい考えをしていたのか教えてほしいなと思ったが、これは青年になれなかった少年の読むものであろうから、書かれていなくていいのだと思った。
     「天才になりそこなった男の話」もかなり良い。というか名作だ。東洋大学時代の、男や教授達への観察眼が、安吾は抜群だ。女に対しては、尊敬や罪悪感やらいろいろありすぎて、逆につまらない。おっさんの武勇伝以上のものに読めてしまう人は、文学的感性をよほど持っているのであって、私には無理である。
     「青い絨毯」における、芥川家でいろいろ作業をしつつ見つめた葛巻の姿も貴重だ。こういう人だとは知らなかったから。令嬢に恋していて、睡眠薬をがぶがぶ飲んでいて、<名家の少年>を描き出すえげつなさ。令嬢に好かれたいというのを書くのが好い。葛巻による編集の厳しさも、それによる。そして、芥川の<死の家>と言ってしまう、容赦ない言い方もよかった。青い絨毯とは、芥川全集の最初の版の表紙に用いた青布の残りなのだ。葛巻に、あの布を燃やしなさいと言おうとして言えなかったところで終わるのだが、その意味の深さはよくわかる。
     それから、安吾の、母への向き合い方だ。憎み、恐れ、嫌だった母の愛に気づく。気の狂った母という、男子として実に受け取り方に困難が生じるもの。芥川もそうなのだが、一生、それはすべての女性に対しても、あらわれるものである。気の狂った母を重ねられた女達は、狂うしかない。母に殺されていく女達のことを書いてあるのが、この、いずこへとか、女性に関する私小説群である。
     だが、やっぱり大学時代の話がとてもいい。
     どこにもいけない男達を書いている。敗者というか。いや、そんな敗北とかいう言葉にすら値しない男の何かを書いている。「天才になりそこなった男の話」の最後の部分を引用しておわる。



    「じっさいに君、病気は気の持ちようだよ。また僕達の人生もそうだよ、君」
     並々ならぬ感動をこめて先生私に斯う語ると、これは冬の真夜中のことだったが、やにわに立ち上がって窓の方へ歩いていった。
    「外は良い月だよ。あの名月を見てくれたまえ、君」
     そう言いながら雨戸を開けた。と、月がない。まっくらだ。左右をさぐり、先生とうとう縁の下の方まで探した。やっぱり月はない。
    「ああ、今日は月が出ていないね。又、この次、月を見てくれたまえ」
     先生こう悲しげに呟いて静かにもどってきた。

  • 読めば読むほど坂口安吾っていう人が好きになっていく。
    書いている作品とはまったく別な部分で、駄目だったり、情けなかったりするんだけど、こういう人は本当に女性に好かれたろうな、と思います。こういう人を好きな女性って必ず一定数いますよね。
    こういう人のエッセイだとか、随筆って本当に面白いです。すごくその人を好きになる。

  • 20代前半の潔癖な諦観、その追憶として。
    淡々とした語り口だけどほのかな郷愁と凪いだ気分を求めて何度も折に触れては読み返しています。

  • 泥にまみれて


    散る

  • 私の魂を私自身が握っていないことだけが分った。これが本当の落伍者だ。自分が、自分の魂を握り得ぬこと、これほどの虚しさ馬鹿さ惨めさがある筈はない。 214p

    人間の慾は常に無い物ねだりである。そして、勝利も同じことだ。真実の勝利は、現実に所有しないものに向かって祈求されているだけのことだ。そして、勝利の有り得ざる理をさとり、敗北自体に充足をもとめる境地にも、やっぱり勝利はない筈である。 252p

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著者プロフィール

新潟市生まれ。1919(大正8)年県立新潟中学校に入学。1922年、東京の私立豊山中学校に編入。1926年東洋大学大学部印度哲学倫理学科に入学。アテネ・フランセに通い、ヴォルテールなどを愛読。1930(昭和5)年同校卒業後、同人誌「言葉」を創刊。1931年に「青い馬」に発表した短編「風博士」が牧野信一に激賞され、新進作家として認められる。歴史小説や推理小説も執筆し、文芸や時代風俗から古代歴史まで広範に材を採る随筆など、多彩な活動をした。

「2018年 『狂人遺書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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