- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003118429
作品紹介・あらすじ
現世では死者となって社会から身を隠し純愛を貫く物語「墓地展望亭」「湖畔」、人間心理の深奥に迫る名作「ハムレット」、巧みな語りにサスペンスが湛えられた掌篇「骨仏」など、"小説の魔術師"久生十蘭(1902‐57)の、彫琢につぐ彫琢によって磨きぬかれた掌篇、短篇あるいは中篇を精選。「生霊」「雲の小径」「虹の橋」「妖婦アリス芸談」を併収。
感想・レビュー・書評
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1930年代から最晩年までの作品から選び出された8編。
改稿を繰り返し、彫琢を重ねたという名品揃い。
物語が面白いだけでなく、文章そのものが美しくて、
鳥肌や眩暈を催した。
故・中井英夫が終生、師と仰ぎ続けたという話にも頷ける。
以下、特に感銘を受けた作品について。
■「雲の小径」
飛行機での移動中、
奇妙に感傷的な気分に陥った男の心の揺らぎ、
その長くて短い旅。
泉鏡花と内田百閒を掛け合わせて
戦後風の味付けを施したかのような逸品。
■「湖畔」
不貞を働いた妻を手打ちにした華族の男が、
経緯を綴った手記を幼子に宛ててしたため、家を去る。
そこで明かされる真実とは。
リアリティの薄さなぞ、どうでもよくなる、
無茶苦茶だが愛おしい物語。
人は誰かを心底愛したら、
他の人間にはいかようにも冷酷になり、
それ以外の物事には徹底して無頓着になり得るのかもしれない。
■「虹の橋」
どこでどんな風に誕生したか、という、
本人には何の責任もないことから自由を制限されながら、
懸命に生きようとしたものの、
身に覚えのない罪を背負わされた女が、
たった一つのささやかな希望に縋る――。
胸が痛む悲惨な話で、読むのが辛かった……が、
きっといつか読み返す気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前ちくま文庫の久生十蘭集で読んだ作品も幾つかありましたがやはり面白いです。
無駄を省いた文章の中にも人間の可笑しさや哀しさ、それに恐ろしさが入っていてぐいぐいと引き込まれます。
表題作の二作は何度読んでも人の愛情の深さと人の非情さや恐ろしさをそれぞれ感じさせられる作品でした。 -
河出文庫から出てたシリーズと収録作が被っているので迷ったのだけど、未読の作品もいくつかあるので結局購入。河出は難読漢字にふりがながなくて読み辛かったりするけど、岩波はその点親切で読み易い。そしてセレクトの趣味も岩波のほうが自分の好みには合うみたいでこれもとても面白かった。
代表作ともいえる中編群は流石というかとくに良かった。一種ローマの休日的な、王女様との恋物語「墓地展望亭」はロマンチックかつハラハラドキドキできたし、偏屈で面倒くさい男と若い妻の「湖畔」は、どんでん返しを楽しみつつも純愛要素もあり、ピランデッラの戯曲を種本にしたという「ハムレット」も、とてもスリリングだった。「妖婦アリス芸談」は実在の人名や事件がそのまま(あるいはパロディ的に)出てきて、犯罪実話告白小説みたいな雰囲気。解説にもあったけれど、誰かと入れ替わる(なりすます)話が多かったかも。
※収録作品
「骨仏」「生霊」「雲の小径」「墓地展望亭」「湖畔」「ハムレット」「虹の橋」「妖婦アリス芸談」 -
図書館で。
面白くない訳じゃないんだけれどもなんか尻切れトンボという印象の作品が結構あったかも。もっとこう、盛り上がるオチとかを期待してしまった。
骨仏
短編。でもこれが一番作品としての完成度が高く感じた。短いけれども台詞や描写で登場人物の因果関係がはっきりそうとしれる感じが良いな、と。
生霊
これは狐に騙されたんだろうか。お盆に生霊が帰ってくる。自分の記憶では無い記憶がよみがえる。よく考えるとちょっと怖いけれどもなんか明るい感じのお話。
雲の小径
夢のような、でも本当のような。雲の小径から落ちたら彼は助からなかったのかな。
墓地展望亭
ゼンダ城の虜とか巌窟王みたいな中世感あふれる舞台背景。でも王女様との恋のロマンスがえらいお手軽な感じ。男性なら一夜の恋もアリかもだけど未婚の女性(しかも高貴な身の上)がソレっていいのかしらん。どちらかと言うと逃げ出す方が盛り上がりそうなんだけど男性側だけ盛り上がって再開後はお手盛りチャンチャンってのもな~ なんか勿体ない感じ。
湖畔
なんかしみじみ怖い。こういう男がモラハラって言うのかなぁ?何が良くて奥さんこんなのと結婚したんだろ、というレベルの身勝手で精神的に幼稚で見栄張りな中々にサイテー男。まあ、本人たちが幸せなら良いんだろうけどこんな女居ないだろうな、ウン。
ハムレット
狂気なのか正気なのか。墓から起こされたハムレットが幸福かどうかは確かに疑問。これもろくでもない女性ばかりだな。
虹の橋
名前を取り違えられてしまう女性のお話だったハズ。う~ん、彼女が何をしたわけでもないのに中々ツライ話。これでいいのかな、となんとなく歯がゆいラスト。
妖婦アリス芸談
なんかこういう人居るよなぁ。どこそこの何さん?知ってるよ、俺があった時にはまだヒヨっ子で箸にも棒にも掛からなかった、とかプープー言う人。そんな感じ。それにしてもこの作者は無実の女性が刑務所に入るってシチュエーションに何か思い入れでもあったのだろうか? -
3.7
-
日影丈吉とともに引っかかった作家。
凄い好き。
冒頭から、どんなふうに展開して落ちが付くのだろうと様々な想像を膨らませて読むのだが、そうくるか、と仰天するばかり。
『墓地展望亭』は、ものすごいファンタジーめいたラブ・ストーリーで、読み始めると止まらない面白さがある。
『ハムレット』に出てくる女性たちの邪悪さといったらない。
美しさは、邪悪さと共存するんじゃないかと言えるほどにあつかましく、恐ろしい。
とにかくどの話も最後まで飽きずに読み通せる。 -
作者の持つ世界が、広がっているようにも、一定の規則の下に従ってとんとんと置かれているようにも感じられる。短篇選では多種多様な語りぶりに心服したものだけれど、こちらは、あくまで個人の感想であるが、宙空に置かれた作者の視座のようなものが見えてしまう気がする。まあ、作者は表現に表現を重ね、読者を煙に巻くのが得意だったということなので、おそらくはこれも一種の錯覚のようなものなのだろう。数年後読み返して評価を一変させることになるのを期待するとともに、購入は無理でも、どうにかして全集を拝みたいような気持ちがある。
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八つの短編を収めた文庫本。
毎作、この作家さんは文体が異なり、同じ作家なのかと驚嘆します。
本巻は比較的似た語り口のものが集まっています。
特に印象に残ったのは、まずは骨仏、生霊。夏目漱石のように、どちらかといえば不親切な語り口なのにいきなり読者に状況を理解させてしまう凄さ。
それと、墓地展望亭。ローマの休日ばりの目眩く展開。 -
【新刊ピックアップ】著者久生十蘭(ひさお・じゅうらん)の、博識と技巧に裏打ちされた作品群は、ジュウラニアンなる信奉者を未だに生みつづけています。1952年「鈴木主水」で直木賞を受賞。1955年には、「ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン」紙主催の第二回世界短篇小説コンクールで第一席となりました。その時の作品「母子像」は、同じ岩波文庫の『久生十蘭短篇選』(b/913.6/H76h)に収録されています。本書と併せて、その文章にたっぷりと浸ってみてください。
【Newly arrived】Author’s extensive knowledge and extraordinary skill reflect on his beautiful works. Devoted readers of him are called Juranians. One of his piece “Boshi-zo” (b/913.6/H76h) gained him first place in New York Herald Tribune short story contest in 1955. Please read through it as well.
著者プロフィール
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