夫婦善哉 正続 他十二篇 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 159
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003118528

作品紹介・あらすじ

代表作「夫婦善哉」に、二〇〇七年に発見された「続 夫婦善哉」をあわせて"正続"とし、その他、芥川賞候補作「俗臭」、作者が「或る意味で私の処女作」という「雨」、あるいは伝説の棋士坂田三吉を主人公にした「聴雨」など、織田作之助(一九一三‐四七)のおもに戦中期の代表的短篇を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 「夫婦善哉」「織田作之助」
    名前はきいたことがあっても読んだことがなかったので
    読んでみた。

    表題作をはじめ、どれもこれも
    貧乏で暗くて惨めで、
    だまされたり、つけ入られたり、
    どうしたって憧れたり、お手本にしたいようなことはなく、
    岐路に立った時おかしな選択をしてばかり、
    そんな人たちがたくさん出てきて、
    読むのが嫌になって投げ出してもおかしくないのに、
    不思議に引き込まれて、読了。

    うしろについている佐藤秀明さんの解説をよみ、
    一層鑑賞の度合いが深くなった。

    織田作之助は下町の貧乏な魚屋の息子で、
    織田はその商売を嫌い、一切手伝うことはなかったとのこと、
    中学受験にも受かり、そののち現在の京都大学にも合格した。
    (その生家界隈では大変に珍しいことで大騒ぎになったそう)

    本人は生まれ育った家庭のことを親しい友人にも一切話さなかった。
    しかし作品に選んだのは、その育った環境や
    父や母、姉など身の回りの人物であった。

    だから現実的と言うか、人間らしい人間が
    描かれているようだ。

    なかでも「放浪」が、やりきれなくて印象に残った。
    (好きな話という訳ではない、この不思議)

  • 働かず飲み食い遊んでばかりいる夫、柳吉。働き者でダメ亭主を支える気の強い妻、蝶子。
    そんな夫婦を描いた表題作「夫婦善哉」は何度もドラマ化され、織田作之助の代表作である。
    ダメ男を支える健気でかわいそうな妻。と思ったが、進むうちこれはダメ男にハマる女性の心理を描いたものだと気づく。
    「うちがいないとこの人は何もできひん。よしゃ、頑張ろ!」と発破を掛けてダメ夫を支え助けることに自尊と奮闘を見出している蝶子の姿は(小説としては面白いが)、もし実際だったら果たして幸せかどうか。
    ただ夫婦ってこういうものかも(小説は極端な例)。互いに依存して、されて、慣れ合って、喧嘩しながら生きていく。最後に蝶子と柳吉は揃ってぜんざいを食う。’お二人さんは仲がよろしおまんな‘と、ひやかされながら。ここはほのぼのする。夫婦いろいろあるけれども、ほんと、仲がよろしおまんな。


    他の収録作も暗い。景気が悪い話ばかり。でも、どこか明るい。大阪の風土と訛り言葉が暗さを中和させているのか。
    それも相俟ってと思うけれど、織田作之助の小説を読むと不思議な気分に陥る。
    入念に計画し備えておく。忍耐強く瑣事を処理し意思力で物事をコントロールしていく。こういった生の営みは在り得るし、そういう人は現にいる。それは立派なことだ。
    しかし、織田の小説は真っ当なことができない人たちで一杯だ。行き当たりばったりの生の歩みで無軌道で気まま。一途で素直だがスキがあり、脇が甘く、自己を曲げるということを知らない。バカだなあ思いつつも、しかし惹かれる。どこか愛おしい。

    立派であることは素晴らしいことだ。でも織田の小説を読むと、立派であることはなんてつまらないことだろうと思えてしまう。この不思議。

  • 正続の夫婦善哉だけを読んだ.
    こういうだめな男の系譜ってある時期まで綿々と続いてきたような気がするが,現代にもいるのかな.

  • NHKのドラマを観たかったのに、ずるずると見逃してしまったので
    それなら原作を読んでみようと思い、手に取った。

    「夫婦善哉」も「続 夫婦善哉」も終わり方がすごく良かった。
    仕事がうまくいかなかったり、病気になったり、喧嘩したり、
    人生は順風満帆な時よりも圧倒的に大変な事の方が多いわけで...。
    夫婦の話ではあるけれども、生きる逞しさを蝶子と柳吉から
    教えられたような気がした。

    どれも似たような空気感の話だったけど
    「放浪」「黒い顔」「聴雨」も好き。

  • この歳になって、純文学にガッツリ嵌りました。
    ええ、某文豪ゲームのお蔭なのですが、こんなに読み倒して居るのは学生以来なんじゃないか…。
    昨秋ガラケーからスマホに替えて以来、青空文庫でどこでもこうした文学を読めるなんて、何て素晴らしい時代なのだろうとか噛みしめていたのですが、この『夫婦善哉』の続編は青空文庫に無かったんですね、残念。
    なので、コレクションも兼ねて久しぶりに紙の本を買いました。
    織田作『夫婦善哉』初読は十代の頃だったと思うのですが、只管蝶子さんが可哀想でならず、何が良いのかさっぱりわからなかったなと記憶していますが、この歳になって改めて読むと、しみじみと、染み入る様にくるものがありまして。織田作の作品には、多く「困った人たち」が登場してくるのですが、誰もかれもなぜか愛おしくなります。『天衣無縫』しかり。『六白金星』しかり。織田作自身と、その経験が下敷きになっているのだろうと思うだけでも、ファンとして作品に触れる事で幸せな気持ちになれます。
    ありがとう青空文庫(笑)

    この短編集には他に『蛍』も入っていて更に嬉しいです。寺田屋事件の話だと気付くのにだいぶかかりました。

  • <閲覧スタッフより>
    大手前大学 交流文化研究所主催 文芸講演会
    村上春樹と『阪神間文化』の周辺-私がめぐりあった作家たち-
    講師:ノンフィクション作家 小玉武 先生

    文芸講演会記念 特集展示本
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    所在記号:文庫||913.6||オタ
    資料番号:10220971
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  • 商売うまくいきまくりでびっくり。
    旦那はよくも飽きられないものだ。

  • 昨年は織田作之助生誕100年の節目の年。「夫婦善哉」は多くの出版社から出ているけど、続編「続 夫婦善哉」が収録されているのは文庫ではこの岩波版だけだと思う。この続編、2007年に未発表の遺稿から発見されたもの。正編が出てから67年、織田作之助の没後60年を経て、柳吉と蝶子の物語を再び読むことができるわけ。
    相変わらず柳吉はダメぼんぼんで、そのたびに蝶子は振り回されるのもお決まりなのだけど、それでもやはり年を重ねて少しづつ変化しふたりの歯車はうまく回り出す。舞台を別府に移しているものの、正編と同じく情緒溢れる描写が読んで心地いい。
    昨年製作された森山未來と尾野真千子のドラマ版はこの続編も取り込んだもので、今後「夫婦善哉」という時には正・続あわせて扱われるんだろう。だから、「夫婦善哉」読んだことのない人も、かつて読んだ人も、どちらも楽しめる文庫になっている。

  • 有名な表題作は、いかにも大阪的な小説で、軽快なテンポが小気味よい。柳吉はどうしようもない人物であるし、内容じたいも、起伏があるとはいえ、そこまでたいしたことが書かれているわけでもないであろう。しかし憎めないキャラクターであり、なんとも愛すべき空間が展開されている。とくに人物造形は秀逸で、むしろ、その生きかたに憧れすら抱いてしまう。ほかの収録作も同様で、いずれも大阪臭がぷんぷんするのだが、それがたまらなくよい。「俗臭」とか「木の都」とかはとくによかった。オダサクは有名なわりには太宰があまりにも凄すぎるせいでその陰に隠れてしまいがちであるが、本作を読めばなかなかどうして、埋もれさせておくにはあまりにも惜しい存在だ。昨年は生誕100年ということで、ドラマ化されるなど再評価の動きもあった。『夫婦善哉』の軽快なリズムはまさしく「夫婦漫才」そのもの。漫才がたびたびブームが起きてリヴァイヴァルするように、本作もいつまでも語り継がれる存在であってほしい。

  • ◆学生時代はよさがわからなかった織田作之助。NHKのドラマがきっかけで、ふと読み返す気になりました。
    ◆あいもかわらず、ダメで過ちを繰り返す男と「生理に脆い」女の愚かで哀しく報われない・浮かび上がらない日々が記され、重ねられていく。なのになぜ、読後が暖かいのか。ただ生きている中の生にどうして肯定感を感じるのか。学生時代は気づけなかった。不思議な作家です。
    ◆「赤ん坊の泣き声が好き」ということに言及した小説が3篇。「赤ん坊の泣き声」=「生」を貴卑清濁に関わらず許し、愛する作家なのだと思い当たり、心が震えました。
    ◆成功しなくても報われなくても生き続けることが尊く思える。なんか、たまらないな。
    ◆一番気に入ったのはセンチメンタルな「木の都」。
    【2013/11/26】

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