夫婦善哉 正続 他十二篇 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2013年7月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784003118528

みんなの感想まとめ

庶民の生活や人間模様を描いた短篇集は、大阪の市井に息づく人々の生き生きとした姿を鮮やかに映し出しています。特に『夫婦善哉』や『黒い顔』では、商売や娯楽に満ちた街の活気が感じられ、登場人物たちの苦悩や選...

感想・レビュー・書評

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  • 大阪の市井に着目した作品が多く納められた短篇集。
    特に『夫婦善哉』と『湯の街』『黒い顔』が面白かった。
    庶民の生き生きした姿と熱気が読み手にも伝わってきた。『夫婦善哉』では職を変えて、多岐に渡る商売を行っていて呆気にとられた。
    お互い似た者同士だからこそ、色々あっても長続きするのだろうなと思った。
    『黒い顔』では昔の大阪の活気溢れる商いの街を知ることができた。活動小屋などの娯楽施設が多くあり、何年住んでも飽きない街だろうなと思った。

  • 『十銭芸者』を空想し、その十銭芸者を、「たまたま懐の景気が良い時」に、まねいて、まずしい饗宴をするルンペンたちの姿を、織田の、孤独な、やるせない、時には、じぶんで知りながら、無茶な事をしたくなる心が、しのばれたからである。

    宇野浩二「哀傷と孤独の文学」

  • 「夫婦善哉」「織田作之助」
    名前はきいたことがあっても読んだことがなかったので
    読んでみた。

    表題作をはじめ、どれもこれも
    貧乏で暗くて惨めで、
    だまされたり、つけ入られたり、
    どうしたって憧れたり、お手本にしたいようなことはなく、
    岐路に立った時おかしな選択をしてばかり、
    そんな人たちがたくさん出てきて、
    読むのが嫌になって投げ出してもおかしくないのに、
    不思議に引き込まれて、読了。

    うしろについている佐藤秀明さんの解説をよみ、
    一層鑑賞の度合いが深くなった。

    織田作之助は下町の貧乏な魚屋の息子で、
    織田はその商売を嫌い、一切手伝うことはなかったとのこと、
    中学受験にも受かり、そののち現在の京都大学にも合格した。
    (その生家界隈では大変に珍しいことで大騒ぎになったそう)

    本人は生まれ育った家庭のことを親しい友人にも一切話さなかった。
    しかし作品に選んだのは、その育った環境や
    父や母、姉など身の回りの人物であった。

    だから現実的と言うか、人間らしい人間が
    描かれているようだ。

    なかでも「放浪」が、やりきれなくて印象に残った。
    (好きな話という訳ではない、この不思議)

  • 登録数1000達成!
    20年かかった。毎年50冊くらいは読んでるんだな。

    さて、教えている学生が「オダサクがめちゃくちゃ好き」と言っていた。若いのに渋いなと思っていたが、僕は読んだことがない。そこで読んでみた。

    すると、「夫婦善哉」もそうだけど、今から80年前ほど前のものにもかかわらず、その軽快な文体は現在でも違和感なく読める。関西弁の軽やかさが、ますますそうさせてくれるような気がした。

    僕が印象に残ったのは、登場人物の「しぶとさ」。商売に失敗し、他人に裏切られ、家族に死なれ・・・と色々あっても、生き延びていく人々の姿が印象的だった。物語のラストは「色々あっても、それでも生きていく」という感じで閉じられているものが多いように感じた。

  • 佐藤氏の解説の「その文章に嘲笑はあったか。嫌悪はあるか。蔑みはあるのか。______ない。「市民」としての......」と続く云々の箇所でその通りだと思った。シリアスな話なのに思わずくすっと笑えたり、逆に笑いたくなるほど哀れでも真に迫ってるから一概に愚か者として扱えない登場人物に心寄せたくなったりする。
    作之助の作品は、「郷愁」と「青春」がぐるぐる廻って綿あめみたいに膨らんでいって作られていると思っている。

  • 織田作之助の作品に出てくる男たちは、誰もが所謂ダメンズで、片や女性はとてもしっかりしている。ただ、男のダメなところも愛嬌があって、自分もあんなふうに脱力感満載で生きられたら楽かもな、とふと思うこともある。そんな男たちを甲斐甲斐しく世話する女性たちは、器量良しではないようだが、心根が美しく、素敵な女性たちだ。
    怠惰な男性と甲斐甲斐しい女性の対比で男女の機微のようなものを浮かび上がらせている。男女間によくあるドロドロしたところがあまりない、読後は爽やかな感じもする短編集。ダメンズ好きな女性は是非。

  • 働かず飲み食い遊んでばかりいる夫、柳吉。働き者でダメ亭主を支える気の強い妻、蝶子。
    そんな夫婦を描いた表題作「夫婦善哉」は何度もドラマ化され、織田作之助の代表作である。
    ダメ男を支える健気でかわいそうな妻。と思ったが、進むうちこれはダメ男にハマる女性の心理を描いたものだと気づく。
    「うちがいないとこの人は何もできひん。よしゃ、頑張ろ!」と発破を掛けてダメ夫を支え助けることに自尊と奮闘を見出している蝶子の姿は(小説としては面白いが)、もし実際だったら果たして幸せかどうか。
    ただ夫婦ってこういうものかも(小説は極端な例)。互いに依存して、されて、慣れ合って、喧嘩しながら生きていく。最後に蝶子と柳吉は揃ってぜんざいを食う。’お二人さんは仲がよろしおまんな‘と、ひやかされながら。ここはほのぼのする。夫婦いろいろあるけれども、ほんと、仲がよろしおまんな。


    他の収録作も暗い。景気が悪い話ばかり。でも、どこか明るい。大阪の風土と訛り言葉が暗さを中和させているのか。
    それも相俟ってと思うけれど、織田作之助の小説を読むと不思議な気分に陥る。
    入念に計画し備えておく。忍耐強く瑣事を処理し意思力で物事をコントロールしていく。こういった生の営みは在り得るし、そういう人は現にいる。それは立派なことだ。
    しかし、織田の小説は真っ当なことができない人たちで一杯だ。行き当たりばったりの生の歩みで無軌道で気まま。一途で素直だがスキがあり、脇が甘く、自己を曲げるということを知らない。バカだなあ思いつつも、しかし惹かれる。どこか愛おしい。

    立派であることは素晴らしいことだ。でも織田の小説を読むと、立派であることはなんてつまらないことだろうと思えてしまう。この不思議。

  • 正続の夫婦善哉だけを読んだ.
    こういうだめな男の系譜ってある時期まで綿々と続いてきたような気がするが,現代にもいるのかな.

  • NHKのドラマを観たかったのに、ずるずると見逃してしまったので
    それなら原作を読んでみようと思い、手に取った。

    「夫婦善哉」も「続 夫婦善哉」も終わり方がすごく良かった。
    仕事がうまくいかなかったり、病気になったり、喧嘩したり、
    人生は順風満帆な時よりも圧倒的に大変な事の方が多いわけで...。
    夫婦の話ではあるけれども、生きる逞しさを蝶子と柳吉から
    教えられたような気がした。

    どれも似たような空気感の話だったけど
    「放浪」「黒い顔」「聴雨」も好き。

  • ちょいちょい折檻する蝶子とクズすぎる柳吉の夫婦関係が面白く、生活の描写がおかしかった。

  • 大阪をテーマにした小説家、織田作之助の短編集。収録作品は昭和10年代に書かれたもの。

    余白の多い文体、というのが第一印象。
    「蝶子はむくむく女めいて、顔立ちも小ぢんまり整い、材木屋はさすがに炯眼だった。(「夫婦善哉」p7)」
    「会場は新大阪ホテルだときけば、それも呆れ果てた豪華さで進平らしいいやらしさだったが、しかし進平の身分としては随分無理をして工面したことであろうと、むしろ哀れだった。(「子守唄」p264)」

    一文の中で場面が変わったり、主述が対応していなかったり、接続の意味が曖昧だったり。普通そういう文は読みにくいはずだが、スッと読み下せる。
    むしろ一文を分けたり、主述が繋がるよう補ってみると、途端にリズムが失われてつまらなくなる。文脈から読者の中に自然と補完される情報を巧みに省略してある。簡素な筆致でリアリティを感じさせる水墨画のようだ。

    耳で聴く、語り物に近い文体ともいえる。特に、台詞と地の文が一体になっている点。「」やダッシュも使われているが、句読点だけで、地の文のように読んでいたら実は登場人物の述懐だったという所もある。
    これを成立させる要素の一つとして、大阪弁を初めとした方言がある。この著者は大阪をよく描いた人で、大阪弁がよく出てくるけれども、よく見ると地の文(=語り手)は一貫していわゆる共通語。大阪弁が出てきた時点でそれは語り手ではなく登場人物の言葉であるというマーキングのように機能している。

    解説によれば、織田作之助は、身内に起きた出来事をモデルにしつつも、作者とは別の人物を主人公にして、当事者としての感情を抑制し、距離を置いた語り手を設定しているという。
    確かに、なまなましい人生の愛憎が描かれているのに、読んでいて涙が出るとか、直接的に感情が同調することがない。泣きわめいている姿が可笑しかったり、淡々と生きている姿が哀しかったりする。

    一番印象に残った箇所。
    「放浪」二の、文吉の出奔から自死に至るまでを描いた箇所(p131)。4ページのあいだ改行も「」もなく、むかし言われた言葉、いま自分や他人が発した言葉、目にし耳にする出来事が、短文で交錯していく。出来事としては行き当たりばったり遊んでいるように見えながら、時々挿入される持ち金の残高がカウントダウンのよう。あからさまに捨て鉢な言葉は書かれていないのに、死に追い込まれていく心理が何故か伝わってしまう。

  •  1938(昭和13)年から1946(昭和21)年、織田作之助前期の作品を収めた短編集。
     やはり面白い。多くの作品ではちょっと知能遅れのような主人公たちを、ウェットでもドライでもなく描き出し、さながら夢の中のように宙ぶらりんの質感で辿ってゆく物語は、不思議と味わいがあって魅力的。
     大阪弁を取り入れたという文章は、しばしば意外な表現も見られ面白いが、ときとして文法的に変な箇所もあると思った。
    『夫婦善哉』は続編があるというのを知らなかったが、書いたまま未発表でしまってあったのを2007年に発見されたらしい。正編とともに面白かった。ギャンブル等でたちまち金をすってしまう夫に体罰を加える女房という、しかし殺伐としていない凸凹コンビを描いてユーモアがある。
     良い作品集と思う。

  • 「夫婦善哉」も良いですが、「聴雨」「勝負師」も好みです。「放浪」「湯の町」もなかなか。

  • 純文学面白かった。

  • 表題作を含め十四の短編集
    一つひとつの作品の中で登場人物が生き生きと動いてると感じました。
    時に前向きに、時に反発し、時に流されながらも生気に溢れ懸命に生きてる人達が羨ましくも思いました。
    落ちにしんみりし、ほっこりさせてもらいました。こんな感覚はなかなか味わえません。

  • 続 夫婦善哉

  • ○目次
    夫婦善哉/続 夫婦善哉/雪の夜/放浪/湯の町/雨/俗臭/子守唄/黒い顔/聴雨/勝負師/姉妹/木の都/蛍

    ○感想
    織田作之助の、自身が育った「大阪」の庶民を描いた「大阪」の小説と、読んでいて感じました。登場人物の多くは本当にどうしようもない人達が多いのですが、彼ら彼女らがその「大阪」人としての奥底の意地というか心性が、最後に気張った行動をとるのかなと感じました。
    なお、本書中に、自分自身が関西に住んでいたころに通ったことのある自由軒カレー等実在のお店も登場したりと、関西に住んでいる、または住んだことのある人には実感できることが多いかもしれません。

  • 時間あったら読もうと思っていたけど、意外と読めず「夫婦善哉」と「続……」のみ。自由軒が出てきてちょっと笑った。いわゆるダメ男で、そもそも妻がいるのに駆け落ちていうどこまでもダメな男なのに、その男が結局ほっとけなくてしょうがない。少し病的なところもあったりするのかも。「続……」は最近見つかったものらしく、続きではあるけれど場所が移った番外編的なものにも見える。この後、どうなったのかも少し気になるけど、蝶子がやはり苦労するんだろうなあ。

  • 読書会の課題図書として読みました

  • この歳になって、純文学にガッツリ嵌りました。
    ええ、某文豪ゲームのお蔭なのですが、こんなに読み倒して居るのは学生以来なんじゃないか…。
    昨秋ガラケーからスマホに替えて以来、青空文庫でどこでもこうした文学を読めるなんて、何て素晴らしい時代なのだろうとか噛みしめていたのですが、この『夫婦善哉』の続編は青空文庫に無かったんですね、残念。
    なので、コレクションも兼ねて久しぶりに紙の本を買いました。
    織田作『夫婦善哉』初読は十代の頃だったと思うのですが、只管蝶子さんが可哀想でならず、何が良いのかさっぱりわからなかったなと記憶していますが、この歳になって改めて読むと、しみじみと、染み入る様にくるものがありまして。織田作の作品には、多く「困った人たち」が登場してくるのですが、誰もかれもなぜか愛おしくなります。『天衣無縫』しかり。『六白金星』しかり。織田作自身と、その経験が下敷きになっているのだろうと思うだけでも、ファンとして作品に触れる事で幸せな気持ちになれます。
    ありがとう青空文庫(笑)

    この短編集には他に『蛍』も入っていて更に嬉しいです。寺田屋事件の話だと気付くのにだいぶかかりました。

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著者プロフィール

一九一三(大正二)年、大阪生まれ。小説家。主な作品に小説「夫婦善哉」「世相」「土曜夫人」、評論「可能性の文学」などのほか、『織田作之助全集』がある。一九四七(昭和二二)年没。

「2021年 『王将・坂田三吉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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