- Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003118535
作品紹介・あらすじ
人間はからだを責めて働かな嘘や-不屈の精神で孫娘を育てあげる男の明治から昭和にわたる波瀾の生涯を描いた「わが町」。自意識過剰で不器用な青年の成長の日々を点綴した自伝的小説「青春の逆説」。織田作之助(一九一三‐四七)の代表的長篇二篇。
感想・レビュー・書評
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青春の逆説
1人の人間の青春を全部見届けたような気になれる小説だった。
タイトルの通り、一筋縄ではいかない己の自尊心や逆説的な感情を巧みに愉快に書いてあるのが面白かった。文章も読みやすく気に入った。ただ、物語を第三者の目線で語っていき、全登場人物の心情を逐一述べて行く構成は筆者が多くを語り過ぎている印象があった。
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わが町は傑作。何度も繰り返し読みたくなる。
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不器用ながら規律規範から逆行して生きようとした青年を描いた『青春の逆説』。ほのぼのとした下町の情景を巧みに描きつつ、そこに住まう人々の暖かい交流を描いた『わが町』。
短編小説を得意とするオダサクには珍しい、中編~長編の小説だ。
じっさい作者はこの2作品に心血を注いでいたようで、『青春の逆説』が当局から発禁処分をうけた後は道頓堀~心斎橋界隈を放浪していたとかw
オダサクの作風の一番好きなところは、浪華節を利かした愉快な関西弁。その情緒深い、ユーモアあふれる会話文に、いったいどのくらいの東京人が魅せられたことだろう?関西弁がとってもステキ。
あと、作者の故郷への愛にほのぼのする。道頓堀・二ツ井戸・心斎橋・・・下町の盛り場の夜店、極彩色の行燈、どて焼き・豆板屋・こんぺいとう・しっぽまであんの入ったたい焼き・・・一文読めば一文に驚く(BY正岡子規)とはこのことだと思った。
そしてオダサクの作品には、『放浪への哀愁』がしみじみと寂しく感じられる。これがデカダンスなんだな。